【小学校のプール水流出、95万円払え】賠償請求はあり? 教職員114人に聞いた 9割が「おかしい・理不尽」と回答
2023年5月、川崎市内の小学校で教員がプールの水を誤って流し続けてしまう出来事がありました。その後、川崎市は担当した教員と校長に多額の損害賠償を請求し、話題になっています。そこで、全国の小~高校年齢の児童生徒が通う一条校に勤務する教職員114人に、「プール水道代の賠償請求」について聞いたところ、9割以上の人が「おかしい・理不尽である」と答えました。
特定非営利活動法人School Voice Project(東京都港区)が2023年9月~10月に実施した調査です。
調査によると、全体の92%が「おかしい・理不尽である」(おかしい・理不尽である:71%、どちらかというとおかしい・理不尽である:21%)と回答。一方、「仕方ない・妥当である」と答えた人は4%(仕方ない・妥当である:3%、どちらかというと仕方ない・妥当である:1%)にとどまり、「わからない」と答えた人は4%でした。
なお、それぞれの回答について、以下のようなコメントが寄せられました。
「おかしい・理不尽である」を選択した人
▽ヒューマンエラーが起こらないようにシステムを構築するのが自治体の役割なのに、その責任を放棄して個人の職員に責任を転嫁している
▽どこかが賠償せねばならないのかもしれないが、額も大きく、チェック体制の課題もあるため、一教員に負わせるべきではないと思う
「どちらかというとおかしい・理不尽である」を選択した人
▽気の緩みであるという批判はその通りだと思う。一方で、ある程度の頻度で起こるヒューマンエラーでもあるのに、現場・委員会が対策を怠ってきたことも確か。一貫してプール管理を担う人員が必要だと思う
▽税金で運営されている学校の性質を考えると、このような事態になっての手続きは法律、決まりに則って行われており、やむを得ないと思う。が、毎年同じミスが全国で起きているのに、施設自体に工夫をして再発防止をしていないところがおかしい
「仕方ない・妥当である」を選択した人
▽「プールの水を“誤って”流し続けた」ので、過失がある人が責任を持ち支払うべき。過失に対して税金を補填できない
「わからない」を選択した人
▽この先生の勤務状況が分からないからです。毎日遅くまで働いておられたり、ご家庭が厳しい状況であったり、その日クラスでもめ事があったりいろんな状況が考えられるので、起きた事象だけでは判断できません
また、「今後どのような策が採られるべきだと考えますか」と聞いたところ、最も多かったのは「教員以外のプール管理者責任を置く」で28%となり、次いで「公営や民間の屋内プールの活用を進める」・「水泳の授業の廃止や民間委託を進める」(いずれも22%)、「人為的ミスが起こらない自動装置を導入する」(17%)と続き、「教員が管理する前提で、ミスを防ぐ体制構築や研修を行う」と回答したのは全体の5%でした。
最後に、「現在勤務している学校や自治体における、プール管理の体制やシステム」について任意で答えてもらったところ、「体育主任を中心に校内分掌の体育部で運営する」、「体育部のプール担当が主となってやっています。大体若手の男性教員が多いです」など、「主に体育科の教員が管理している」に回答が集中。課題としては、主に体育科教員への負担が大きいことや、管理の操作が覚えにくいこと、設備の老朽化による管理のしづらさなどが挙がりました。
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報道によると、この問題は川崎市多摩区の市立稲田小で5月17日に起きました。30歳代の男性教諭がスイッチを操作してプールに注水を始めたところ警報音が鳴り、電源ブレーカーを落としました。その後スイッチを操作して水を止めたつもりでしたが電源喪失でスイッチは機能せず、22日に別の職員が気づくまで6日間にわたって注水が続き、損害は約190万円に上りました。市は、過失のあった教諭と管理責任のある校長には相応の賠償を求めることが適切と判断し、損害額の5割にあたる約95万円を2人に請求した。校長側から賠償金約95万円の支払いがあったと報じられています。