愛護センター犬舎で耐えていた野犬 里親募集に名乗りでる人はなし 預かりボランティアは悟った 「この子は我が家で暮らす運命だったんだ」
2022年初夏。岡山県動物愛護センターの犬舎の中で、1匹のオスのワンコがにじっとたたずんでいました。名前はジーニー。推定約1~2歳ほどで、野犬でした。
センターに収容される野犬の中には、あまりの恐怖から吠えて威嚇したり、慌てふためく犬も少なくありませんが、ジーニーは視線こそ人間に合わせようとしないものの、その境遇を受け入れるかのように、ただただ犬舎の中で、「その日」を待っているかのようにも見えました。
■引き出し後もスタッフの前でジッと耐えていた
一時は、「特別譲渡」として岡山県動物愛護センターから里親募集がかけられましたが、残念なことにジーニーには希望者は現れませんでした。岡山県動物愛護センターの収容期限には限りがあり、これを超えると殺処分対象になってしまいます。
地元・岡山を拠点に行き場を失った犬の保護活動を行う団体、NPO法人しあわせの種たち(以下、しあわせの種たち)では、その期限ギリギリのところでこのジーニーを引き出すことにし、相応のトレーニングを実施した後、同団体で新しい里親さんを探し、幸せへと繋ぐことを目指しました。
ジーニーを引き出した後、適切な健康診断を実施し、すぐにしあわせの種たちに登録する、愛知県の預かりボランティアさんの移動させることにしました。こういった一連の手続きの中で、野犬だった保護犬は、恐怖から暴れるワンコも少なくありません。しかし、ジーニーはここでも自らの境遇を全て受け入れる覚悟を持っているかのように映りました。
その様子に、心を痛めたスタッフはジーニーにこう声をかけました。
「ジーニー、大丈夫だよ。もう怖くないからね。これからは優しい人のもとで、ご飯をいっぱい食べて、一歩ずつ前を向いて進んで行こうね」
■穏やかな性格の反面、野生味あふれる一面も
愛知県の預かりボランティアさんの家へとやってきたジーニー。
すぐにお利口さんぶりを発揮し、お座りを10秒でマスター。人間に対する恐怖心はない様子で、散歩の際もリードを引っ張るようなことはありません。夜になればおとなしく添い寝ができるワンコになってくれました。
ただし、普段は穏やかなジーニーも外では野生味あふれる姿を見せることがありました。急に穴を掘り出したり、虫をほじくりだしたりします。でも、これも犬の習性です。そんな元気な姿もまた預かりボランティアさんには愛おしく見えました。
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■ジーニーの身に訪れた運命
こんなに温厚で優しく、そしてルックスもイケメンのジーニーですが、どういうわけか里親募集をかけても名乗り手が現れないままでした。
ここで預かりボランティアさんはあることを悟りました。「ジーニーの本当の家は我が家なのではないか」と。
そう思えば思うほど、さらにジーニーとの絆が、もともと繋がっていたように感じ、後に正式に「我が子」として迎えることにしました。あの日、ジーニーが岡山県動物愛護センターでジッと待っていたのは、「殺処分」ではなく「本当の幸せをつかむ日」だったというわけです。
NPO法人しあわせの種たち
https://shiawasenotanetachi.amebaownd.com/
(まいどなニュース特約・松田 義人)