「定年者だらけ時代」に迷わないために 会社員思考を変える「おじさん専門コミュニティ」 セカンドキャリアを踏み出す人が続々

第2次ベビーブームと呼ばれる1971~1974年生まれの世代。2024年にはこの世代の全てが50代に突入します。

数年後には大量の定年退職者が生まれるわけですが、この世代の「終身雇用」の感覚のままだと、定年退職後、生き抜くことは難しいかもしれません。

若い頃から同じ会社に勤め、人生のうちの大半の時間を費やしながら貢献してきた人に対し、ここで急に「何か新しいことをやりなさい」「別の社会を見てみなさい」というのは、あまりに酷な話のようにも思います。そんな「おじさんたちの悩み」に寄り添い、定年退職後のセカンドキャリアを考える上でのサポートをするコミュニティがあります。「おじさんLCC(ライフキャリアコミュニティ)」というものです。

■「会社軸」の人にありがちな思考とは?

この「おじさんLCC」を主宰する金澤美冬さんは、「身を削って勤め上げたおじさんたち」に敬意を払いながらも、だからこそ「なんとなく定年ではもったいないし、遅い」と提言しています。金澤さんに聞きました。

「人生100年時代と言われますが、定年後のセカンドキャリアにはまだロールモデルがなく、今の50~60代が切り拓いていかねばなりませんし、1人ではなかなかできないことでもあります。また、『定年後も活躍したい』という意思を持つ人がいる一方、『定年後どうしたら良いかわからない』という人が多いのも現状です。それまで『会社のために』『会社の目標を達成するために』と『会社軸』で生きてきた方が多いため、定年後に自分のやりたいことをを考えてみても、まったく思いつかないということはよくあります。

そこで『おじさんLCC』というコミュニティを立ち上げ、同じ境遇の方同士との情報交換をしていただきながら、定年退職後のセカンドキャリアにおいて、互いに鼓舞し合い、そして切磋琢磨する場をご提供しています」

■「自分の小さな声」を発表し合うコミュニティ

「おじさんLCC」の具体的な活動はまず「月に一度の定例会」。この場に集まるコミュニティのメンバー同士が、個々の行動報告や次月の目標などを発表します。目標は仕事、趣味、家族のことなど何でも良く、そして、必ず達成しなければいけないものでもないのです。大切にしていることは行動の種を撒くことで、似た世代の同じ境遇の人たちに話を報告し、共感や意見を交わすことで、しなやかに過ごしてもらうことを目指していると言います。

「定年後は、それまでの『会社軸』や『他人軸』ではなく、『自分軸』での考え方を変えることが必要です。まずは『好きかも』『やりたいかも』という『かも』で良いので、自分の小さな声に耳を傾けるところから始めてみることが大切です。さらに、実際に行動に移すことも大事です。実際にやってみたことで『すごく好き』になるのか『やっぱり違った』になるのか……頭の中で考えているだけだとやりたいことには出会えないので、『かも』と感じたら『やってみる』を繰り返していくことが大切です。

こういった考えのもとで、『おじさんLCC』では参加するメンバー同士が『自分の小さな声』を発表し合い、様々な意見や応援を交わしていただいています。この場で『やってみる』の報告をし、翌月になって『やっぱり違った』でも良いんです。その人にとっての『自分軸でのやりたいこと、有意義なこと』を見つけ合うためのコミュニティでもありますから、このことをバカにしたり否定するような人はメンバーにはいません」

■「自分にもそれができるのではないか」

おじさんLCCの定例会に参加後、それまでの考え方がしなやかに変わった人も数多いそうです。

「会社員で過ごし、『定年後はのんびり過ごし、たまにボランティアでもしていこう』と考えていた方がいます。『それしか自分には可能性がない』と思っていたとも言います。しかし、『おじさんLCC』に参加し、定年後に仕事・家庭などの面で、それまでの会社員時代とは違う活動をする人、独立したりなんらかのカタチで働くメンバーの様子を見るにつけ、『定年後の自分も社会から必要とされ続けたい』『自分にもそれができるのではないか』という考えに変わったそうです。現在、この方は再雇用で元いた会社で働きながら、独立の可能性も含めた準備をされています」

金澤さんの考えをまとめた本も刊行されました。『おじさんの定年前の準備、定年後のスタート 今こそプロティアン・ライフキャリア実践!』金澤美冬・著(総合法令出版)で、金澤さん自身がおじさんLCCをどういった思いで立ち上げ、どんな活動を目指すかがつづられています。

刊行時のメンバーのおじさんたちが抱える不安や思い、そして実践の様子などが紹介されているので、まずはこの本を手に取ってみるのも良さそうです。

■定年後の実例をデータ集積・研究・発信する新たな取り組みも

金澤さんは定年後の生活を充実したものにしてもらうべく、「おじさん未来研究所」を立ち上げました。50~60代にとってのライフ&セカンドキャリアに関するデータを集積・研究・発信し、おじさんたちがさらに活躍する未来を創るための場です。

数年後に訪れる「定年者だらけ時代」を前に、金澤さんにこう話しています。

「『定年したら仕事はしたくない』と考えている方が多いのも実情です。しかし、仕事をすることが、健康寿命を長く、お金の心配を減らし、社会とのつながりも持ち続けられる一番の方法だと思っています。まずは『楽しい』『やりがいのある仕事』を見つけるところから始めると良いと思います。そして。そういう背中を若い世代にも見せることで、希望をもたらすことができるとも思っています」

おじさんLCC

https://www.protean.co.jp/service/ojisan-lcc/

おじさん未来研究所

https://www.ojisan-mirai.jp/

(まいどなニュース特約・松田 義人)

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