【迷惑系ユーチューバー】キャンプ場で突然始まった生配信 カメラ片手に近隣キャンパーに話しかけ、子どもの顔撮影【専門家が示す対応策は】
キャンプの様子を撮影し、YouTubeで紹介する動画が人気です。試してみたいノウハウや、こだわりのギアなどを紹介してくれるのでキャンパーから注目を集めていますが、配信者の中には視聴者数を伸ばしたいがために、迷惑行為に及ぶ人も少なくありません。
■妻とのフリースタイルのキャンプが趣味
Nさん(30代、長野県在住、営業職)は、妻との共通の趣味であるキャンプを月に1度のペースで楽しんでいます。以前までは、サイト区分が決まったキャンプ場を利用していましたが、最近は自由なスタイルでキャンプが楽しめるフリーサイトのキャンプ場にはまり中。
どこにテントを張るか、タープをどの向きに掛けるか、リビング、寝室の位置など、快適に過ごすために妻と工夫しながらサイトを作っていくのが面白いのです。
この日出かけたキャンプ場は、お気に入りのソロキャンプYouTuberが紹介していたキャンプ場で、広い敷地とひらけた空が魅力の自然豊かなスポット。YouTubeで紹介されたことから人気が高まり、なかなか予約が取れなかったのですが、ようやく訪れることができました。
■配信を始めた隣のソロキャンパー
テントを張ってゆったり過ごしていると、隣で1人の男性がテントを張り出しました。少し距離が近いと感じましたが、最初はそれほど気に留めず妻と食事作りを進めます。すると、その男性はなにやらカメラを持って喋りだしました。
どうやらその男性は、YouTuberのようです。このキャンプ場に来たきっかけも好きなYouTuberの影響なので、そういうこともあるだろうと気にしなかったのですが、その男性はカメラに向かって大声でしゃべりながらその辺りをウロウロし始めました。
その姿に妻もだんだんと不安な表情になり、周りの他の人たちも男性を気にしています。
■他の人達のエリアにまで侵入
最初は自分のサイトの周りをウロウロしていた男性ですが、次第にキャンプを楽しんでいた人たちに許可なく話しかけるように。他の人のサイトエリアにまで無断で侵入して、その人の持っているキャンプギアにコメントするなど勝手に紹介しています。
話しかけられた人は明らかに迷惑そうな顔をしているし、ファミリーキャンプを楽しんでいる子どもにまで近づいていったので、ハラハラしながら見守っていました。
その男性がしゃべっている内容からして、どうやら生配信を行っているようです。
■生配信で晒された恐怖
動画を撮影しているだけなら後からモザイク処理ができますが、生配信なのでそうもいきません。Nさんだけでなく、他のキャンパーさんたちの顔もばっちり配信されたことでしょう。
おすすめのキャンプ場を配信で紹介するのは良いことだし、視聴者にとっても有益な情報になりますが、他の人のプライバシーを侵害したり、迷惑をかけたりすることはいかがなものなのでしょうか。
このようなトラブルはよくあることなのでしょうか?また、対策などはあるのでしょうか?フリーランスWebライター・デザイナーとして活躍しながら、キャンプインストラクターとしても活動している田中颯さんに聞きました。
◇ ◇
ーーこういったことはキャンプあるあるなのでしょうか
私自身は直接迷惑行為を受けたことはありませんが、近年のキャンプブームやYouTube・SNSの発達を鑑みると、珍しくない話だと感じます。撮影をされている方をキャンプ場で見かける機会も増えましたし、配信しているような声が聞こえてきたことは何度もありますね。
ーーこのような時、なにか対応策はあるのでしょうか
今回のケースだと出くわしてしまったら対策のしようがないのが難しいですよね…。できることとしたら後でYouTubeのアカウントを探して通報するくらいでしょうか…。なので、まずはそのような状況に遭遇しないように注意するしかありません。
バランスが難しいところですが、無料のキャンプ場や低価格のキャンプ場は避けて、管理人が常駐している高規格なキャンプ場を選ぶのもひとつの方法です。不審に感じたら、すぐに管理人に通報しましょう。迷惑行為が増えていることや、ソロキャンプなどで静かな時間を楽しむ人が増えたことを受けて、厳格なルールを定めているキャンプ場も増えています。あえてそういったキャンプ場を選ぶのも良いかもしれませんね。
また、キャンプ用品の盗難なども増えています。写真映えするようなおしゃれなレイアウトを楽しむのもキャンプの楽しみのひとつですが、目を付けられやすいのもまた事実です。フリーサイトでキャンプを楽しむときは最小限のギアを使って自分のスキルを試してみる、しっかり区画されているサイトでは存分に自分好みのアイテムを持ち込んで楽しむ…という風に、サイトの状況によって楽しみ方の軸を変えてみるのもアリですよ。
ーー同じようにプライバシー面の問題などで隣のテントから迷惑に感じられるような行為はありますか
よくあるのはやはり音の問題ですね。大きな声で話をしたり、音楽を流したり。日中はあまり気になりませんが、夜焚き火をゆっくり楽しみたい時にはやはりノイズになります。あとは異様にランタンの明かりが明るかったり、後から来た人に真正面にテントを張られたりすると気になりますね。焚き火の火が強すぎると「大丈夫かな」と心配にもなります。
意外と気になるので注意してほしいのが、車のドアを開け閉めする音です。早朝にバタンという音が聴こえてきて目が覚めてしまうこともよくあります。
ーーお互いに迷惑をかけないように心がけることはありますか
まずはゴミを持ち帰る、夜は静かにするなどの当たり前のルールを守りましょう。あとはキャンプ場のルールに従うこと。22時以降は消灯などのルールのキャンプ場は多いので注意です。
それからキャンプ場に来ている人それぞれに楽しみ方があることを理解してほしいですね。自分はわいわい楽しみたい派でも、他のキャンパーはしっとりとした時間を楽しみたくてキャンプ場を訪れているのかもしれない。自分は静かに過ごしたいけれど、子どもに自然の魅力を伝えたくてキャンプをしている人もいる。それぞれが他のキャンパーの過ごし方の邪魔にならないように少しずつ配慮すれば、大きなストレスにはならないように思います。スペースに余裕があれば、できるだけ離れた場所にテントを張り、近くに張らざるを得ない場合も角度をつけてテントを張り、真正面にこないようにするなど工夫しましょう。一声「すいません」と声をかけるだけでお互いに気持ちよく過ごせますよ。
子どもの声がうるさい、と感じる人もいるかもしれませんが、個人的にはそこはある程度許容してほしいかなとも思います。日中にはしゃいでいる子どもの声は微笑ましいものです。せっかくのことなので、小さなことにストレスを溜めず、大らかな気持ちで過ごすのも大切です。
どうしても耐えられないなら、ソロキャンプ専用のキャンプ場を選ぶ、林間サイトなどサイト間の距離があるキャンプ場を選ぶなど、自分の過ごし方にマッチしたキャンプ場を選ぶと良いでしょう。
◆田中颯(キャンプインストラクター)
県庁を退職し、フリーランスのWebライター・デザイナーとして活動中。幼い頃よりアウトドアに慣れ親しみ、キャンプインストラクターとしても活動している。大学時代は子ども向けのキャンプイベントを企画運営し、現在は干し野菜や発酵食材を活用したキャンプ料理なども考案している。
(まいどなニュース特約・ヨシダ コウキ)