2人に1人が「ふるさと納税制度を利用したことがない」…利用しない理由は「手続きが面倒」が最多に
総務省が2023年8月に発表した「ふるさと納税に関する現況調査結果(令和5年度実施)」によると、ふるさと納税の受入額・受入件数共に右肩上がりだそうです。そこで、全国の20~70歳未満の有職の男女1000人に「ふるさと納税」について調査をしたところ、約2人に1人が「ふるさと納税制度を利用したことがない」と回答しました。また、ふるさと納税制度を利用しない理由については、「手続きが面倒」が最多となったそうです。
SMG菅原経営株式会社(名古屋市中村区)が、2023年11月にインターネットで実施した調査です。
まず、「ふるさと納税制度を利用したことはありますか」と聞いたところ、「利用したことがない」(53.2%)、「毎年利用している」(24.2%)、「今までに利用したことがある」(6.5%)、「時々利用している」(6.0%)という結果になり、過去にふるさと納税制度を1回以上利用したことがある人は4割弱(36.8%)に留まりました。ちなみに、約1割の人が「ふるさと納税制度を知らない」(10.1%)と答えています。
ふるさと納税制度を利用したことがない人が半数を超えたことを受けて、ふるさと納税制度を利用したことがない532人にその理由を複数回答可で答えてもらったところ、「手続きが面倒」(29.7%)や「制度がよくわからない」(29.0%)に回答が集まったほか、「収入が少なくてできない」(24.8%)、「メリットを感じない」(18.8%)、「興味・関心がない」(18.4%)といった回答も挙げられました。
次に、ふるさと納税制度の利用経験がある367人に対して、「自身のふるさと納税限度額を把握していますか」と聞いたところ、92.3%の人が「把握している」(何となく把握している48.2%・把握している44.1%)と回答。その一方で、6.5%の人が「把握していない」、1.1%の人が「限度額があることを知らない」と回答しています。
さらに、「ふるさと納税制度の寄付の申告方法」を教えてもらったところ、「ワンストップ特例制度」(43.6%)が最も多く、次いで「確定申告」(40.1%)、「ワンストップ特例制度と確定申告の両方」(11.2%)などが上位に挙げられたそうです。
◇ ◇
【出典】
▽SMG菅原経営株式会社 調べ
なお、同調査では「ふるさと納税制度のメリット・デメリット」などについて、同社の代表で税理士の菅原由一氏は以下のように解説しています。
【ふるさと納税制度のメリット】
「ふるさと納税制度」とは、日本全国の地方自治体に寄付をすれば、寄付した額に相当する翌年の住民税が控除され、少なくなるというお得な制度です。ふるさと納税できる額は個人の所得額によって異なります。高所得の人はたくさんふるさと納税できますが、低所得の人は少ししかできません。
例えば、年収400万円の人の場合、ふるさと納税できる額(限度額)は年間で4万円程度です。仮に、4万円寄付すると、その3割以内に相当する1万2000円程度のものが返礼品としてもらえ、翌年の住民税も3万8000円安くなります。この場合、寄付した4万円-2000円=3万8000円が控除され、自己負担2000円で1万2000円程度の返礼品が手に入るお得な制度です。これがふるさと納税制度の最大のメリットになります。
【ふるさと納税制度のデメリット】
例えば、年収400万円の人が限度額の4万円をふるさと納税する際、クレジットカード等で支払います。しかし、返礼品がもらえるのは手続きから数週間~数カ月後、住民税が控除されやすくなるのは翌年の6月以降になるため、返礼品や住民税の控除としてお金が返ってくるまでの期間、4万円が減ったことになります。
つまり、最大のデメリットは一時的にお金が減ることです。そのため、その日暮らしをしているなど金銭面的に厳しい人はできません。一度に4万円が減るのが厳しいという人は、1万円ずつ4回に分けてやるなど、年間を通して計画的にやることで、資金繰りが厳しくなることはないと思います。ふるさと納税は1月から12月までの間に利用すればよく、早めに利用すれば早く返礼品がもらえるので、年末ギリギリなどではなく、早めに利用することをオススします。
【ふるさと納税制度のやり方】
基本的にネット通販と同じような感じです。「ふるさと納税」とネット検索すると、様々なふるさと納税のサイトが出てきます。そのサイトから欲しいもの(返礼品)をクリックして、カード情報や住所などの個人情報を入力し申請するだけです。
但し、自身の所得額によって、ふるさと納税できる限度額が決まっています。自身の限度額がいくらか事前に把握し、その限度額内で買い物(ふるさと納税)しましょう。限度額以上の買い物(ふるさと納税)はできないことはありませんが、逆に損をしてしまいます。
【ふるさと納税制度の手続き】
基本的には確定申告が必要です。確定申告をすることで、その年の住民税が削減できるというメリットがあるのですが、実は、確定申告をしなくても良い「ワンストップ特例」という制度もあります。
ふるさと納税のサイトで返礼品を選んでクレジットカード等で決済する際に、その自治体に「ワンストップ特例制度」の申請書を提出すれば、確定申告をしなくても住民税の削減(控除を受けること)ができます。しかも、ネット上で完結できるため簡単です。
但し、ワンストップ特例制度の申請は、ふるさと納税した自治体が5カ所(※1)以内となっているため、6カ所以上の場合は確定申告が必要となります。確定申告をしたくない人は、ワンストップ特例を5カ所までに抑えましょう。
(※1)同一自治体にふるさと納税を何度やっても、それは1カ所としてカウントされます。
【注意!住民税が控除されない例もある】
ふるさと納税で寄付した額は本当に控除されているのでしょうか?実際、控除されていない人もいます。昨年ふるさと納税で寄付した額が、今年の納税通知書に反映されているかきちんと確認しましょう。今年のふるさと納税で寄付した額は、来年の納税通知書に反映されます。ここで、住民税が控除されない例を2つ紹介します。
▽ワンストップ特例の申請書を提出した人
ワンストップ特例の申請書を提出した人が医療費控除など何かしらの確定申告をすると、ワンストップ特例の適用が無効になります。そのため、ふるさと納税の確定申告をしなければ、寄付金控除を受けることができず、住民税を満額支払っているというケースがあります。
▽自治体による計算もれ
自治体によっては、「住民税決定通知書」にふるさと納税の寄付金が記載されていないケースもあります。そもそも自治体が計算もれをしている可能性もあるため、住民税決定通知書の「摘要」欄に記載がなかったら、「税額控除」欄を見て、(ふるさと納税の)寄付金控除額が記載されているか確認しましょう。「寄附金税額控除額」が『ふるさと納税で寄付した額-2000円』となっていれば、きちんと控除されています。住民税決定通知書を見てもよくわからない場合は、自治体に電話して確認してください。
まだ、ふるさと納税をやっていない人は是非活用してください。ネットで「ふるさと納税限度額 シミュレーション」などと検索すると、自身が納められる限度額がわかります。満額でのふるさと納税をオススメします。
また、ふるさと納税は送り先を指定できるため、その返礼品を他の人に送ることもできます。送る日時を指定できるものもあるので、知人などの誕生日に返礼品が届くようにセッティングしておけば、ふるさと納税でプレゼントを贈ることも可能です。国が認めた制度を最大限活用しましょう。
◇ ◇
【出典】
▽SMG菅原経営株式会社 調べ