「安い給食」はもう限界…給食事業者の倒産が過去5年で最多ペース あらゆるコストの高騰が要因に
2023年9月に給食運営のホーユー(広島)が事業を停止し、全国各地で給食がストップするなど、給食事業者の倒産が目立ってきているといいます。株式会社帝国データバンク(東京都港区)がこのほど発表した「『給食業界』倒産動向:全国企業倒産集計2023年10月報」によると、「給食事業者の倒産」は2023年10月までに17件発生しており、1~10月の累計としては過去5年で最多ペースとなっていることが分かったそうです。
調査は、2023年10月31日までに負債1000万円以上の法的整理による倒産件数を分析したといいます。
まず、「給食事業者の倒産件数推移」を見ると、学校給食や企業向け給食、学生・社員食堂の運営受託などを含む「給食事業者の倒産」は2023年10月までに「17件」発生しており、同年1~10月の累計としては2年連続で増加、過去5年で最多ペースとなりました。
この倒産件数増加の背景にあるのは、2022年以降、月2000品目を超える食品の値上げに加え、調理スタッフなど人件費や光熱費など、あらゆる運営コストの高騰が小中学校を含む給食現場の経営を襲ったことにあるといいます。
2022年度の最終利益が判明した給食事業者374社のうち6割超が赤字または減益となったほか、1割超の企業では3年連続で赤字となるなど厳しい経営環境が露呈した形となっています。
さらに、学校給食は最安値で入札した業者と契約する一般入札の採用が多く、低価格競争が常態化しているため、人件費や食材費を事前に高く見積もることが難しく、契約上の問題や保護者の抵抗から値上げも難しい状況です。同社によると、中学校でも給食負担が「1食200円前後」と「安い給食」を維持するあまり、急激な物価高を前に市場退出を余儀なくされる中小給食事業者が増えているといいます。
その一方で、価格以外の面も考慮して給食業者を選定する「プロポーザル方式」の入札制度を検討や、補助金投入でコスト高分を補填する自治体も出てきています。
給食は一度ストップしてしまえば、子どもたちだけでなく、社会に広く影響が出る「食のインフラ」であることから同社は、「『安くて当然』の低価格競争から、利益が出せる弾力的な価格の設定といった制度改革が必要となっている」と述べています。