旅先ガイドはいらない ほしいのは旅スタイルガイド 大人のゆったり旅を楽しむために
コロナ禍の制限がなくなった今年、あちこちで旅行に関する話を聞くようになりました。
旅行は、コロナ禍の4年間の我慢を解放できるものの一つです。だからこそのんびりゆったりと、そして充実したものにしたいという人も多いと思います。そんな人にうってつけの一冊を見つけました。『わたしのごほうび時間 大人のゆったり旅』(柳沢小実・著、大和書房)です。
本書は、「旅先のガイド」ではなく「旅スタイルガイド」。タイトルにもある通り「大人に向けたゆったり旅」を提唱し、体力勝負ではなく質を大切にした旅行の仕方をあらゆる角度から指南しています。
■量より質の「大人のゆったり旅」5か条
本書でいう「大人のゆったり旅」には大きく5が条があるとのこと。著者の柳沢小実さんは自身の体験も交えてこう紹介しています。
1.急がない、欲張らない
むやみに詰め込むと、一つひとつの印象が薄れしまう。候補は多くてもいいけれど、全部無理に回ろうとはしません。ただただのんびりすごすリゾートの良さがわかってきたのも最近のこと。
2.計画を立てて、目的ある旅に
「気球に乗って初日の出を見る」。ラオス旅行の計画を立てた際に、大きな目的をひとつだけ決めました。目的があると有意義な旅になるし、逆算して時間やコースも決めやすいです。
3.ゆとりある時間や曜日を選ぶ
ハイシーズンは、混みあうし値段も高い。だから、わずかにズラして混雑を回避します。連休前後の週末や、クリスマス後から年末にかけては狙い目。また、一~二日休みを足したりも。
4.信頼する人の情報を頼りに
検索した情報は、様々な価値観によるものだから、当たり外れがある。信頼できる人の口コミに勝るものはなし。また、初めて行く街は、感覚の合う著者のガイド本に身をゆだねて旅したりも。
5.食事はしっかりリサーチ
詰め込まない分、食事はしっかり調べて、満足感につなげます。観光客向けよりも地元の人が普段から利用する活気のある店へ。Googleマップの口コミも参考に。
■旅を楽しむだけでなく、旅の後も楽しむ
この5か条を基本に、ゆったり旅に適した持ち物、ファッションなどが、まさにゆったりとしたビジュアルで紹介されているほか、自分で作る「旅ノート」「スケジュールの組み方」なども紹介されています。
そして、旅の移動術、目的ごとに違うスタイルも細やかに紹介されているほか、特に海外旅行では大きな課題になりがちな「パッキング詰め方」もわかりやすく解説しています。
また、本書の中で特にほっこりしたのが「旅のあとの旅ノート」の紹介。つまり、旅から帰ってきた後も、ノートに思い出を綴りながら、ちょっとしたシールやチケットなどを貼って残しておくことも勧めています。
旅慣れない人がやりがちなのは、各地で培われた空気よりも「私が見たいものを探すんだ!」とばかりに通り過ぎてしまうだけの旅行です。こういった旅では、たいてい各地の思い出は薄いはずで、各地を訪れても「私」のことしか記憶にない、といったことにもなりかねません。
しかし、著者が推奨するこの「旅のあとの旅ノート」を旅ごとに習慣づければ、自然と各地への見方・地元の人への接し方が変わってくるでしょうし、そして、その旅の記憶はずっと残るはず。行くだけの旅ではなく、行った後もその旅を楽しめる「旅のあとの旅ノート」は、和やかですごく良いなと思いました。
■コロナ禍の影響で、数年越しで刊行が実現
「旅先のガイド」ではなく「旅スタイルガイド」というあまりないタイプの本ですが、どのような経緯で刊行に至ったのでしょうか。担当編集者に聞きました。
「旅好きな柳沢さんは過去にも旅本・ガイド本を出版されていましたが、『現在形の柳沢さんの旅の形を本に』ということで制作を進めていました」
しかし、コロナ禍で制作をストップしたおかげで、より内容が濃くなったとも。
「全般的に『量より質』を重視する旅本となっているので、1回の旅の楽しみが長く続くように、準備~旅の間~帰宅後それぞれの楽しみを盛り込みました。柳沢さんの旅アイテムも多く紹介しているのですが、見た目と機能性を兼ね備えている素敵なものばかりで、拝見するのが楽しかったです。旅の時間は日常から離れられる貴重な時間だと思います。せっかくなら満足感が高く、充実したものにしたい、そんな思いを叶えるアイデアや、旅好きの柳沢さんならではの快適度を上げる工夫などが詰め込まれた1冊になっています」
久しぶりの旅行を計画している人、ゆったりと旅を楽しみたい人にはうってつけの本です。また、旅慣れている人にとっても、「ほかの人の旅のスタイル」を覗き見できるような楽しさもありそうです。ぜひ手に取ってみてはいかがでしょうか。
(まいどなニュース特約・松田 義人)