ずぶ濡れで側溝にいた子犬 突然の痙攣でみんなを心配させた夜 体重も増え優しい飼い主の家に迎えられた
2023年7月、九州のとある場所で、側溝に落ちて脱出できない子犬がいました。雨に濡れたせいで体を震わせており、グッタリとしています。これを見た地元の心ある人が子犬を救出しましたが、このまま飼い続ける環境ではなかったため、引き取ってくれる人を探していました。
人づてに、身寄りのないワンコを保護し幸せな環境へと繋げる活動を行うボランティア団体・わんにゃんレスキューはぴねす(以下、はぴねす)を知り、相談しました。
■生後わずか1、2カ月
子犬の話を聞いたはぴねすのスタッフは一も二もなく、預かることにしました。生後わずか1~2カ月のメスの雑種犬で、側溝に落ち雨に濡れ体を震わせていただけでなく、全身にダニが寄生しており体が弱っている様子でした。
スタッフはこの子犬を「まめちゃん」と名付け、すぐに動物病院に連れて行きました。獣医師の診断は「ひとまずは命には別状ない」とのこと。点滴、注射、ノミダニ駆除薬などが投与され、まめちゃんはしばらくの間、治療を続けることになりました。
■風呂場でスヤスヤ眠るまめちゃん
まめちゃんは、はぴねす所属の預かりスタッフさんの家でしばらく過ごすことになりました。預かりスタッフさんはまずはダニの死骸を取り除くために体を念入りに洗いました。あの冷たい側溝とは違う、暖かい風呂場で気持ち良くなったのか、まめちゃんはスヤスヤと寝てしまいました。
約2時間後、目を覚ましたまめちゃんは、時間をかけながらエサを食べて温かいミルクを飲み干しました。その様子を見て「このまま元気を取り戻してくれると良いな」と願う預かりスタッフさんでしたが、この後、その願いとは真逆の事態が起こりました。
■まめちゃんに異変。繰り返す約6時間の痙攣発作
ご飯を食べ、ミルクを飲み干した後、まめちゃんが用を足すと下痢気味の便に寄生虫らしきものが混じっていました。預かりスタッフさんは「もしや」と不安に駆られましたが、当のまめちゃんは痛がる様子はありません。
しかし、やがてまめちゃんの動きがゆったりとし始め、目もうつろに。明らかに具合が悪そうです。「これはおかしい」と察した預かりスタッフさんは「明日、再受診しよう」と判断しました。しかし、日付が変わった頃、まめちゃんがいる部屋から突然バタンと何か倒れるような大きな物音が聞こえてきたのです。
慌ててまめちゃんのそばに駆け寄ると、まめちゃんは横向きになり体を仰け反らせ、手足をバタつかせ、ヨダレを垂らしていました。痙攣発作です。痙攣が収まってからまめちゃんを抱きしめました。しばらくし意識を取り戻しましたが、今度はバタバタと暴れながら鳴き続けました。猛スピードで走り出して壁にぶつかり、前に進めなくなったら大声で鳴き続けます。預かりスタッフさんは水を飲ませて落ち着かせようとしましたが、まめちゃんはずっと動き続けました。
その後もまめちゃんは、30分から1時間おきにこの繰り返しで、朝の6時過ぎまで休むことはありせんでした。
■保護前に体に合わないものを食べた可能性
朝一番にまめちゃんを動物病院に連れて行き、獣医師さんに夜中からの様子を伝えました。
預かりスタッフさんは、過去にも痙攣発作のあるワンコを保護したことがあったのですが、ここまで激しいのは初めてだそうです。獣医師が検査した結果、少々貧血はあるものの特段異常は見られませんでした。ただし、エコー検査では胃の中に1cm程の物体が見え、保護される前に何かを食べたのかもしれないとのこと。結果、約6時間にも及ぶ痙攣発作の原因は分かりませんでした。
より正確な診断をするには、MRIや遺伝子検査などの高額な費用がかかる検査が必要となりますが、検査を行ったからといって治療に繋がるとは限りません。そのため、再度の痙攣発作に備えての座薬と、予防薬として抗痙攣薬とビタミン剤を処方してもらいました。
動物病院から帰ってきたまめちゃんは、昨晩と同じようにしっかりとフードを食べミルクも飲んでくれ、夜になるとまたスヤスヤと寝ました。
「また激しい痙攣発作が起きたらどうしよう」と心配する預かりスタッフさんは夜中に何度もまめちゃんの様子を見に行きました。幸い、その日は一度も発作が起きることなく、朝を迎えました。
そしてあの激しい痙攣発作は以降はありませんでした。やはり獣医師の言う通り、保護直前にまめちゃんは何か体に合わないを口にしていただけだったのかもしれません。
■先住犬にちょっかいをかける余裕
まめちゃんは、たくさん食べてよく遊び、保護当時1.7kgだった体重が、4週間で3.6kgに増えました。やがて、預かりスタッフさんの家にいる先住犬にもちょっかいをかけるようになり、この余裕もまめちゃんが元気になってくれた証拠でもあるように映りました。
はぴねすではまめちゃんの里親募集をスタートさせました。ほどなく「子犬らしく動き回るまめちゃんに心を奪われた」という里親希望者さんが現れ、一定期間のトライアルを経て、この方の家に迎え入れられることになりました。
ずぶ濡れで、体を震わせ側溝で保護されたまめちゃん。寄生虫や痙攣発作で苦しんだこともありましたが、幸せな第二の犬生を歩んでいくことになりました。「いつまでも健康体で、まめちゃんらしく楽しい毎日を送ってほしい」と願う預かりスタッフさんでした。
わんにゃんレスキュー はぴねす
https://ameblo.jp/happines-rescue/
(まいどなニュース特約・松田 義人)