2両編成の電車が1時間に2本…都会の中の超ローカル線・南海汐見橋線 渡し船と組み合わせて訪れたい“レトロ大阪”
「大阪市内のローカル線」といえば、南海汐見橋線ではないでしょうか。汐見橋線は汐見橋~岸里玉出間結ぶ路線です。近年は鉄道ファンの間で大変有名になった路線ですが、渡し船を組み合わせることで、より魅力的な汐見橋線の旅になると思います。実際に汐見橋線と渡し船に乗ってきました。
■ターミナル駅に乗り入れない閑散路線
汐見橋線は汐見橋~岸里玉出間を結ぶ5キロ弱の路線です。大阪市内にもかかわらず、基本的に1時間あたり2本しかありません。複線でありながら、2両編成の電車が行ったり来たりしています。
汐見橋駅では阪神なんば線の桜川駅、岸里玉出駅で南海本線、南海高野線に接続します。しかし、難波や天王寺といったターミナル駅に乗り入れないことから、閑散路線となっています。汐見橋線は梅田と関西空港を結ぶ「なにわ筋線」の候補に挙がったこともありますが、それも立ち消えになりました。
汐見橋線には計6駅ありますが、中間駅も乗降客数は少ないのが実態です。最も少ない駅は木津川駅で、1日乗降客数は200人もいません。
駅構内は貨物列車のターミナル跡があり、駅周辺は大阪市内とは思えない静寂な雰囲気に包まれます。
■川と結びつきが強い汐見橋線
単に汐見橋線を往復するだけでもいいのですが、渡し船を組み合わせるとさらにユニークな旅になります。
汐見橋線を地図でみると、芦原町~木津川~津守間で路線が街の中心地から外れる形で木津川に近づきます。実は汐見橋線は「川」と強い関係がある路線でした。
そもそも、正式には汐見橋線は高野線の一部です。しかし、1985年に高野線と分断され、現在に至ります。かつては旅客輸送はもちろん貨物輸送も盛んにおこなわれていました。
貨物輸送では紀伊山地の木を木津川駅まで運び、木津川駅からは木津川の水運を利用して、各所へ運んでいました。汐見橋線近くには貯木場もありました。しかし、汐見橋線の貨物輸送は1971年に廃止。現在、汐見橋線と「川」との直接的な関係はありません。
一方、木津川には渡し船があります。津守駅から徒歩10分くらいで、2つの渡し船の船乗り場である落合上渡船場・北津守側、落合下渡船場・津守側に着きます。
対岸の落合上渡船場・千島側、落合下渡船場・平尾側の周辺にはJR大正行きの路線バスのバス停があります。対岸の渡し船の料金は無料。日中のダイヤは15分間隔で、大阪市によって運営されています。
実際に汐見橋線津守駅から落合上渡船場、落合下渡船場の順に乗ってみました。渡し船の利用者はほとんど地元客。また、自転車をそのまま船に持ち込みます。落合上渡船場からは水門が見られました。
落合上渡船場、落合下渡船場ともに乗船時間は5分くらい。船旅をじっくり堪能する間もなく、あっという間に着きました。それでも、船から見る大阪はなかなか興味深かったです。
■汐見橋線を訪れる際のワンポイントアドバイス
なお、先述したように津守駅から徒歩で落合上渡船場、落合下渡船場にアクセスできますが、落合下渡船場へは歩道がなく交通量が多い道を歩くことになります。大阪の街を歩きなれていない方は津守駅から落合上渡船場のコースをおすすめします。
◆新田浩之(にった・ひろし) 1987年兵庫県生まれ。神戸大学大学院国際文化学研究科修了。関西の鉄道や中欧・東欧の鉄道旅行をテーマとした執筆活動を行なう。最新刊として2023年11月に「関西の私鉄沿線格差」を刊行。ブランドタウンを多く持つ路線は? 社寺や古刹が多い路線は? 沿線の平均家賃が高い路線は?…など、さまざまな視点から関西5大私鉄の「沿線」を徹底比較した。KAWADE夢新書。208ページ、979円(税込)。
(まいどなニュース特約・新田 浩之)