「あまりにひどい」 保護団体スタッフも涙したプレハブ小屋の繁殖現場 救出された柴犬の人懐っこい性格が幸せを運んだ
九州地方を拠点に、行き場を失ったワンコたちを保護・お世話をし、新しい里親さんへと繋ぐ活動を行うボランティア団体・わんにゃんレスキューはぴねす(以下、はぴねす)。
このはぴねすと他の動物愛護団体が連携して、10年間も介入を続けた繁殖現場がありました。その繁殖現場は、150匹にも及ぶワンコたちを「物」のように狭い檻に閉じ込め、強制的な繁殖をさせていました。この繁殖現場に、長い時間をかけて働きかけ、多くのワンコたちを保護していました。
■「息が途切れるほど泣いた」と保護団体スタッフ
この繁殖現場はぴねすや他の動物愛護団体が介入する以前はさらに凄惨な状況だったといいます。犬舎は断熱材もないプレハブ小屋で、この中に吹きさらしの狭い檻が設置され150匹のワンコたちが閉じ込められていたそうです。
「繁殖犬」とされるメスのはさらに悲惨で、ただひたすらに子犬を産まされ、産めなくなったら放置。掃除もされず、糞尿があちこちに落ちていました。不衛生な環境で、満足な食事やケアもされないことから、次々と病気になり命を落としたそうです。
様々な現場を見てきたはぴねすのスタッフでさえ、「ここはあまりにひどい」とその光景を前に泣いたそうです。悲しみは「1匹でも多く救いたい」という強い想いへ変わり、多くの支援と協力のもとで、この繁殖現場から何匹ものワンコを救い出していくことにしました。
■繁殖現場の狭いケージの中で育ったそらちゃん
はぴねすが保護したうちの1匹が、そらちゃんです。保護当時、推定年齢3歳ほどのメスの柴犬で、繁殖現場では狭いケージの中に入れられていました。保護した後、すぐに動物病院へ連れて行きました。
劣悪な環境下で過ごしていたことを思えば、なんらかの病気があることが予想されましたが、検査結果は幸い「異常なし」。当初抱いていた不安が杞憂に終わり喜ぶスタッフでしたが、これを機にそらちゃんに避妊手術、ワクチン接種、マイクロチップ装着などを行うことにしました。
■性格はいたって良好の超甘えん坊
そらちゃんはとにかく人が大好きで、病院のスタッフさんにもベタベタに甘えてきます。預かりスタッフさんや看護師さんが、「そらちゃん、かわいいねー」となでてあげると、尻尾を振って上機嫌。愛らしいそらちゃんの姿を前に顔をほころんでしまう預かりスタッフさんでした。
以降、そらちゃんは預かりスタッフさんの家でしばらく過ごすことになりましたが、ここでもすぐに溶け込み、のびのびとした姿を見せてくれました。
ただし、ひとつだけ問題行動もありました。それは目につくものをなんでもオモチャにしてしまうこと。預かりスタッフさんの目を盗んでは、家の中のあらゆる物に噛みつくことがしばしばありました。配線コードを噛んでいたことがあり、このときばかり「ダメ!」と強めに叱ったそうです。
そらちゃんはまだまだ遊び盛り。狭いケージの中で過ごしていたことを考えれば、この環境で「物に興味を持つ」「遊ぶ」ということは、そらちゃんにとって「やっとつかんだ自由」を謳歌する行動のようにも映ります。そこそこのイタズラは許容したい一方、配線コードなどを噛んだ際は感電などの事故が起きないとも限りません。そのため、預かりスタッフさんは、他のワンコ以上にそらちゃんをしっかり見守るよう心がけました。
■「迎え入れたい」という里親希望者さんが現れる
賢明な世話によって、トイレトレーニングなども成功するようになったそらちゃん。これを受けてようやく里親募集をかけることになりました。
同じころ、はぴねすの知り合いから「ワンコを飼いたがっている人がいる」として里親希望者さんを紹介してもらうことにしました。さっそくこの里親希望者さんにそらちゃんの話をしたところ「ぜひ会いたい」という返事でした。
面会すると、人懐っこいそらちゃんの態度に里親希望者さんが一目ぼれ。トライアル期間を経て、そらちゃんを正式に「家族」として迎え入れることになりました。
そらちゃんは、この家にいるワンコとニャンコとも仲良く過ごしているとのことで、まさにぴったりの家庭へと巣立っていってくれたことを、おおいに喜ぶスタッフでした。
朗報がもう一つ。そらちゃんがいた劣悪な繁殖現場が、年内で廃業することが決まりました。最後に繁殖現場に残ったワンコたちは、はぴねすと他の動物愛護団体とが連携して引き取ることになっています。
「約10年という長い間介入してきましたが、諦めないで本当に良かったです。これからも多くの行き場を失ったワンコの命を救い、本当の幸せへと繋いでいきたいです」とスタッフは語ってくれました。
▽わんにゃんレスキュー はぴねす
https://ameblo.jp/happines-rescue/
(まいどなニュース特約・松田 義人)