保護されたやせ細ったチワワ トリミング後も心を閉ざしたまま たっぷりの愛情を受け下向きの尻尾は日に日に上がってきた
2023年8月、埼玉県の動物愛護センターに1匹のチワワが収容されました。推定年齢8歳ほどのメスで、自慢であるはずの栗色のヘアはボロボロ。やせ細った体をさらに小さくすようにして、「私はどうなるの?」と不安そうな表情でした。
飼い犬のはずですが、一定期間を過ぎても名乗りはありませんでした。心ない人間から捨てられた可能性が高く、胸を痛めた動物愛護センター職員は、懇意の犬保護団体restartdog LIEN(以下、リアン)に相談。リアンのスタッフはこのワンコを引き取ることにしました。
■割れた下顎が放置されたことで、骨が固まっていた
リアンに引き取られたこのワンコは「デイジー」と名づけられました。
デイジーは常に舌が出ています。聞けば、何らかの理由で下顎が割れ骨がズレてしまい、そのまま固まってしまったとのことでした。明らかにネグレクトの末に捨てられた可能性が高く、リアンのスタッフは胸を痛めましたが、悲しんでばかりもいられません。辛い思いをしてきた分、ここから先の犬生では絶対に幸せになってくれるよう愛情をたっぷり注ぎ世話することを誓いました。
■なかなか心を開かないデイジー
リアンのスタッフは、まずデイジーの体をきれいにすべく懇意のトリマーさんにトリミングをお願いすることにしました。デイジーの体を丁寧に洗った後、綺麗に毛を整えていきます。この間、デイジーはじっと固まり、不安そうな様子でしたが、異臭を放っていたデイジーの体はさっぱりとしました。トリミングを終えると、デイジーは少しだけホッとした表情を浮かべてくれました。
その後、デイジーはリアンに所属する預かりスタッフさんの家へ。しっかり体力をつけてもらうため、預かりスタッフさんはたくさんの食事を摂ってもらえるよう工夫しました。「人間に対する恐怖心や不信感」を克服してもらうべく、優しく声をかけて根気強く向き合いました。
それでもデイジーは預かりスタッフさんの姿を前にすると、ケージの中に逃げ込みずっと引きこもってしまいます。また、預かりスタッフさんの家の先住犬の中に、体格が大きいワンコがおり、そのワンコが近くにいるだけでも怖がってしまいます。預かりスタッフさんは「我が家はデイジーにとって良くない場所かもしれない」と悩んだ末、別の家に移すべきと判断。他の預かりスタッフさんへとバトンタッチすることにしました。
■デイジーがぎこちなく心を開き始めた
新しい預かりスタッフさんの家にも先住犬がいますが、ここではデイジーと同じ小型犬のみ。「デイジーのストレスを減らすことができるかもしれない」という当初の考えは的中し、引っ越し後のデイジーは、少しずつ落ち着きを見せるようになりました。ただし、人間に対する恐怖心や不信感は根深い様子で、新しい預かりスタッフさんの前でも当初はとにかく怖がっていました。
それでも預かりスタッフさんは諦めません。「大丈夫だよ。ここは怖い場所ではないからね」「自由に遊んでいいんだよ。ご飯もいっぱい食べてね」と常に声をかけ、たっぷりの愛情を注ぎ続けました。
すると、デイジーに変化が起こりました。預かりスタッフさんがデイジーをなでようとすると、怖がる様子を見せなくなり、「信じていいの?」「もう私に意地悪しないよね?」とぎこちないながらも安心した表情を浮かべてくれるようになりました。そして、散歩の際も当初は下がっていた尻尾が、日に日に上がってくるようにもなりました。
預かりスタッフさんによれば、「まだまだ人馴れトレーニングが必要」とのことですが、これらのお世話をしばらく続け、「もう大丈夫だろう」と判断した後、里親募集にかけたいと言います。
本来ならばしなくて良いはずの過酷な経験をしたであろうデイジー。その第二の犬生では、幸せいっぱいで安心して過ごせる環境に繋げてあげられることを強く願う預かりスタッフさんでした。
犬保護団体restartdog LIEN
https://ameblo.jp/liendog
LIENインスタグラム
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(まいどなニュース特約・松田 義人)