深夜にテントの外からガサガサ物音…キャンプで予期せぬ来訪者 鋭い眼光に牙で威嚇「熊でなくてよかったけど…」

キャンプの醍醐味と言っても過言ではない焚き火にBBQ。“外メシ効果”もあり、家での焼肉とは一味違う食事を楽しむ事ができます。しかし、後片付けを怠ってしまうと大変なことが起こるかもしれません。自然に囲まれたキャンプ場ならではの“予期せぬお客さん”が深夜に現れることもあるのです。

■久しぶりのファミリーキャンプ

実家で両親と愛犬と共に暮らすMさん(都内在中、20代、会社員)は、コロナの影響で大変な新人時代を乗り越えた社会人3年目です。友人も多く学生時代は、旅行やアウトドアと休日にはいつも遊びに行っていました。

50歳を過ぎた両親は、それぞれ仕事をしていますが、時間が合えば今でも2人で出掛けるほどの仲の良さです。

3人はテレビで流行りのキャンプ番組を見るたびに、今度行ってみようねと話すものの、忙しいMさんはなかなか予定を合わせる事ができず、もう何年も家族で泊りがけの旅行に行っていませんでした。

最近は帰りが遅い忙しい日も増え、日頃の疲れが見え隠れするMさんを両親がキャンプに誘いました。3人ともアウトドアが好きで、Mさんが小さい頃は夏休みや大型連休にキャンプにでかけ、自然と触れ合っていました。大人になってからは初めてのファミリーキャンプです。

キャンプなら愛犬も連れて行けます。いつも近所の散歩だけなので、広い場所で走り回って運動不足解消にもなると家族みんなで楽しみに準備をすすめました。

予約した関東近郊の川沿いキャンプ場は、街の中心地からは離れていますが山奥というわけでもなく高規格なキャンプ場でした。

3人で笑いながらテントを立てて、タープを設置すれば設営完了です。その後、昔からアウトドアが好きなMさんは、森林浴を兼ねて愛犬とともにキャンプ場を散歩。普段の喧騒から解放され、静かなゆったり流れる時間を楽しみました。場内は、混み合ってはいないものの、ちらほらと利用者も居て炊事場やトイレも清潔に保たれています。

日も傾きはじめ、父がこの日のためにと新調したBBQグリルを用意します。久しぶりのファミリーキャンプを楽しみにしていたのはMさんだけではなかったようです。

BBQなら食材を焼くだけなので、下準備も簡単。食材を剝いたり切ったりを母とMさんで担当し、父がどんどんと焼いていきます。

家族でゆっくりお酒を飲む機会もめずらしく、焚き火を囲み会話も弾みます。夕食を済ませ、澄んだ空気の中、満天の星を眺めながら上機嫌な3人は、片付けをして就寝の準備に取り掛かりました。

BBQの炭がきちんときえていることを確認し、洗い物を済ませ、ゴミもひとまとめにしておきます。

明日の朝も使うからと、タープの下にグリルや食器、まとめたゴミを置いて3人と1匹はテントの中に入りました。そして、心地よい疲労感でMさんはあっという間に寝てしまいました。

■深夜の予期せぬ来訪者

ところが深夜、一緒に寝ていた愛犬が落ち着きなくソワソワしはじめました。しきりにテントの外を気にしている様子です。寝ぼけまなこで、愛犬を抱きかかえると、外からガサガサと物音がします。

風の音とも違う物音を不審に思ったMさんがそっと外を見ると、タープの下で黒い影が動いています。何事かと目を凝らすと、猿です!タープの下で猿が荷物をあさっていたのです。

驚きで大声を上げそうになるのをこらえ、急いで両親に声を掛けます。

そこで両親も目を覚まし、母が瞬時に猿に向かって声を上げ、父が追い払おうとテントから飛び出します。ところが猿は、人間に怯むことなく、鋭い眼光と牙で威嚇をしてきます。今にも噛みついてきそうな勢いです。

うなる愛犬を抱きしめるMさんと両親を見て猿たちは去っていきましたが、その後すぐは3人とも放心状態でした。壊されたものはないかと、あたりを見渡すとゴミが散乱し、ひどい状態になっていました。3人で真夜中に猿が散らかしたゴミを拾い集めるのは、何とも言えない残念な気持ちです。

咬み後の付いた生ゴミが多いことから、BBQの残骸が狙われたことに気付きましたが時すでに遅し。生ゴミは匂いが漏れないようきちんと口を縛って、テントの中など屋内に入れておくべきでした。就寝前のゴミの処理を間違えてしまったのです。

   ◇   ◇

こんな体験をしないよう、今後気を付けたほうが良い対処方法はあるのでしょうか。

Webメディアキャンプクエストでアウトドアライター、キャンプインストラクターとして活躍している岩本利達さんにお話を伺ってみました。

■熊には特に注意したい

ーー猿以外にどのような動物が食べ物をあさりにくる可能性がありますか?実際にこれまでにどのような被害が起きたことがありますか?

鹿や猪、イタチなど、野山には様々な動物がいますが、特に熊は最も命が危険にさらされるリスクがある獣です。2020年8月、長野県の上高地エリアにあるキャンプ場で、テントの中にある食料が熊に狙われるという事件がありました。2023年6月には群馬県川場村でもキャンプ中の男性が熊に襲われています。どちらも幸い命に別条はありませんでしたが、運が良かったとも言えるでしょう。

ーーもしキャンプ場で熊に遭遇したらどのように対応すればいいのでしょうか?

鍵のかかる建物や、車にすぐに逃げ込めるのであればいいのですが、熊は動くものを追いかける習性があるため、背中を見せて逃げるのだけはやめておきましょう。まずは冷静に、目を合わせずに熊の方を見ながら、手に持っている荷物などがあればそれを遠くに投げて気をそらしつつ、ゆっくりとその場を離れていきます。環境省がガイドラインを出しているので、キャンプに行く前に目を通しておくといいでしょう。

※ガイドラインはこちら 

▽クマに注意!-思わぬ事故をさけよう-

https://www.env.go.jp/nature/choju/docs/docs5-4a/kids/full.pdf

ーー熊に合わないキャンプ場所の選び方はありますか?

正直、もはや熊に遭遇しないキャンプ場は無いという意識の元で行動した方が良いと思います。それでも遭遇する可能性が低い場所という事を考えると、入場ゲートが1カ所しかない高規格キャンプ場や、周辺に住宅地などがあるアーバンキャンプ場あたりでしょうか。熊は泳ぎも得意とされており、出没するイメージの少ない海でも遭遇しないとは言い切れません。とにかく、遭わないための各種対策を万全にしておきましょう。

◆岩本利達(キャンプクエストNEWS編集部)

本業のかたわらアウトドアの専門家として活動。Webメディアのライターの他にも、アウトドアギアの開発やキャンプをフックにしたビジネスをサポートする。キャンプ歴は12年。

(まいどなニュース特約・ヨシダ コウキ)

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