生まれたばかりの命を守れ!子猫や子犬を預かり育てる「ミルクボランティア」が絶賛拡大中
生後間もない捨て猫は即日処分-。そんな過酷な現状を打開しようと、離乳前の子猫を預かって育てる「ミルクボランティア」が滋賀県内でも奮闘している。県動物保護管理センター(湖南市)や地域の動物愛護団体と連携し、子猫が自活できるまで育てる活動だが、もらい手を探したり、医療費を立て替えたりと、ボランティアの負担が大きくなっている。
現在、同センターに登録するミルクボランティアは3人。そのうちの1人、甲賀市の柊ひろ子さん(56)の自宅を訪ねた。
離れの一室に置いた大小のケージで、柊さんは生後3週間から5カ月の猫13匹を預かっていた。正午前、生後3週間の猫に、柊さんが小さな哺乳瓶でミルクを飲ませる。「人間の赤ちゃんみたいにあおむけにしては駄目。立たせて飲ませるんですよ」と話しながら、哺乳瓶にかじりつく小さな体を優しく支えた。
ミルクや固形フードなどの餌やりは基本的に朝昼晩の3回だが、生後1カ月までは数時間おきの給餌が必要になる。実は柊さん、水口センチュリーホテル(甲賀市水口町)の支配人としてフルタイムで勤務する。猫たちの世話は出勤前後だけでなく、昼休みに一時帰宅することもあれば、さらに見守りが必要な子猫の場合は職場に同伴する日もある。「社長や同僚の理解があるからこそ。『今日はどんな子?』と喜んでくれて、職場の癒やしにもなっている」とほほ笑む。
取材当日は、生後5カ月の黒猫のきょうだいが新しい家族に引き取られる日だった。預かって4カ月たつと聞き「別れるのは寂しいですか」と問うと、柊さんは「寂しくないです」ときっぱり。「この子たちにとって幸せなことだし、ケージが一つ空いて、また次の猫を預かってあげられるから」と話した。
新しい飼い主を見つけるのもミルクボランティアの役目だ。さまざまなインターネットサイトや動物愛護団体の口コミを駆使し、もらい手を探す。猫の場合、生後2カ月になれば譲渡が可能になるが、もらい手がなかなか見つからないケースもある。すでに柊さんは、持病を抱える猫や、センターで譲渡対象にならなかった老犬計6匹を自宅に引き取ってみとりをする。「私が何歳まで続けられるだろうか」と考える。
費用も重くのしかかる。県が支給する謝礼は1匹当たり1日100円(上限30日)。しかし、子猫用の離乳食は1食あたり170円ほどで全く足りない。避妊手術代やワクチン代などは譲渡する際に新しい飼い主に負担してもらうが、えさ代やトイレの砂といった日常の経費は、自身が所属する動物愛護グループ「しっぽ救援隊」が開く譲渡会などで集まった寄付金を充て、足りなければ自費でまかなっている。
柊さんは、2011年に飼い猫が死に、保護猫をもらい受けたのがきっかけで仲介譲渡に携わるようになった。スーパーに捨てられた子猫を人づてに預かった15年からはミルクボランティアも始めた。今では常に10匹前後の猫を預かるが、体の弱い子猫の場合、死なせてしまうこともある。「自分じゃなかったら生かしてあげられたのでは」と思うこともあるといい、精神面の負担ものぞかせた。
「何とかしたい気持ちだけでやっているが、助けられる猫の数は限られている。ボランティアが増えてくれたら」と話している。
(まいどなニュース/京都新聞)