破格の安さの「1万円」 ショーケースのトイプードルはあきらめたような表情をしていた 売れなかった犬たちの行き先は
主に埼玉県、茨城県の動物愛護センターから、殺処分の淵に立たされたワンコたちを救い、新しい里親さんへと繋ぐ活動を行う犬保護団体restartdog LIEN(以下、リアン)。
同団体に所属する預かりスタッフが、ある日買い物途中で覗いたペットショップでショーケースのトイプードルを見つけました。1万円で売られているオスのトイプードルでした。
ショーケースの前面に書かれた紹介文言によれば、このトイプードルは生後5カ月とのこと。なぜ1万円なのか、なぜ誰もこのワンコを飼おうとしないのか。謎が深まるばかりでした。
■生体価格は「1万円」。でも総額は「16万円以上」
ペットショップで売られている子犬は、犬種にもよりますが、一般的には15~40万円程度。「1万円」で売られることはまずありません。
異常なまでに値段が安い場合、何かしらの事情があるケースが多いわけですが、「1万円」のトイプードルは生後5カ月ほどという、遊び盛りの月齢にも関わらず人間やオモチャにも興味を示さない様子で、ショーケースの中で全てを諦めたかのように横たわっていました。預かりスタッフさんと一緒に見た娘さんは、「この子がかわいそう。『どうせ買わないんでしょ』と思っていそうな表情を浮かべている」と言ったそうです。
さらに謎だったのが、プライスカードの脇にあるローンの詳細。「1万円」という価格ながらも、48回払いで総支払額が16万円以上になる計算となっていました。生体価格が1万円で、購入の際に合わせて絶対に買わなくてはいけない付属品的なものが、それを遥かに上回るということなのでしょうか。
■売れ残ったことによる大幅値下げは少なくない
実は1万円で売られているワンコは、その子だけではありません。子犬が格安で売られているケースは他にもあります。前述のようにワンコの体になんらかの事情がある場合もあれば、「売れ残った」ことで、大幅の値下げがなされることもあるのです。
ペットショップでワンコが一番売れる月齢は、生後2~3カ月と言われています。ペットショップ側としては、その人気に間に合うよう、見た目が整っていて人気のある犬種をどんどん繁殖させ売り上げを伸ばす必要があります。
しかし、ワンコが生後3カ月を過ぎて体が大きくなってきたり、見た目が整っていない場合は売れないこともあります。売れ残りのワンコが多くなると、ペットショップ側はコストがかかるため、なるべく早く売りさばくために値段を下げていくのです。
■売れ残ったワンコたちの行く先は…
売れなかったワンコは、一体どうなるのでしょうか?
一般に「保健所に連れて行かれて殺処分される」という説が囁かれることもありますが、2013年以降は動物愛護法が改正され、保健所や動物愛護センターはペットショップなど動物取扱業者によるペットの持ち込みを拒否できるようになりました。ただし、個人を装って保健所に持ち込むケースもないとは言えず、この点は保健所、動物愛護センターのよりいっそうの厳しいチェックに期待するばかりです。
売れ残ったワンコの行く先は、動物保護団体、元のブリーダーへの返還なのが多いと言われています。リアンのような心ある団体に引き取られる場合なら良いですが、たとえば悪徳ブリーダーに返還された場合は、繁殖犬に用いられたり、十分なお世話をしてもらえないまま一生を過ごすこともあります。
こういった現実を知る預かりスタッフは、「1万円」のトイプードルを前に、「どうか幸せになってほしい」と願うことしかできませんでした。
生体価格「1万円」、しかし総額「16万円」のモヤモヤは残ったままではあるものの、とにかく1匹でも多くのワンコたちの命を救い続ける…私たちにできるせめてものことだ、とあらためて誓いました。
犬保護団体restartdog LIEN
https://ameblo.jp/liendog
LIENインスタグラム
https://www.instagram.com/restartdoglien/
(まいどなニュース特約・松田 義人)