民間路線バスの8割、2023年中に減便・廃止 運転手確保できず、残業の上限規制も
大阪府の4市町村で路線を運行していた「金剛バス」がバス事業から全面撤退するなど、地域の公共交通を担う路線バスの減便や廃止が全国に拡大しています。株式会社帝国データバンク(東京都港区)がこのほど発表した「全国『主要路線バス』運行状況調査(2023年)」によると、公営バスを除いた全国の民営路線バス運行業者の約8割が、2023年中に1路線以上の「減便・廃止」を実施することが分かったそうです。
調査は、路線数が2022年度末時点で30本以上有する民営バス事業者127社(公営・高速バス路線のみの事業者は除く)を対象に実施されました。
調査の結果、運行ダイヤの改正などにより、81.1%にあたる98社で2023年中に1路線以上の「減便・廃止」を実施することが判明しました。2024年に予定・検討中の事業者(5%)を含めると計103社に上るといいます。
「減便や廃止となった理由」としては、主に「運転手(人手)不足」で、高齢化や人手不足により、運行系統の整理など減便や廃止に踏み切るケースが目立ちました。また、ドライバーの時間外労働に年960時間の上限が課される「2024年問題」に対応するために「ダイヤ改正」を行ったケースや、沿線の人口減による収益の低下を理由としたケースもみられました。
他方で、平日の市街地路線や、休日のショッピングモール線など、収益確保が見込まれる路線では増発を行うケースもあり、バス路線の対応は各社で戦略が分かれています。
また、同社が保有する企業情報から、2019~2023年の乗合バス運行事業者運転手を含めた従業員数が判明した路線バス運行業者307社のうち、2019年と比べて53.1%にあたる163社で人数が減少。この内訳を見ると、「2割未満の減少」が36.8%、「2~5割未満」の減少が15.0%となりました。
さらに、「1社あたり従業員数の推移」をみると、コロナ禍では貸切バス業界からの人材流入もあり「240人/社」を超えているものの、以降は再び減少傾向で推移し、2023年10月時点では「235人/社」に留まっています。
この背景には、他業種に比べて路線バス業界の給与水準が低いことや、長時間労働など待遇面の悪さが人材定着に悪影響を及ぼしているとの指摘があります。また、コロナ禍で落ち込んだ乗客数が完全に戻り切れていないことや、燃料費高騰による収益面での打撃も重なり、賃上げで運転手を確保する余力のあるバス会社が少ないことも、問題解決の糸口が容易に見つからない要因となっているといいます。
これらの調査結果から同社は、「”2024年問題”の解決の要となる、運転手不足の短期的な解決が難しいなか、利用者の多い市街地路線でも一層のダイヤ縮小や路線の統合などによる”減便・廃止”が進む可能性が高い」と述べています。