脚が鉄柵に刺さり動けない黒猫を救出 手術成功後に分かった上あごの異常 「助かってほしい」皆の願いが奇跡をもたらした
2023年初夏。京都のとある場所で、民家の防犯用鉄柵に引っかかって動けないでいる黒い猫が見つかりました。「なんとか助けてあげたい」と思ったその方は、関西圏を中心に活動している保護猫・ノラ猫専門のお手伝い屋さん「ねこから目線。」にレスキューを要請しました。
「ねこから目線。」のスタッフは当初その状況を把握できませんでしたが、現場の画像を送ってもらい、驚きます。黒い猫の後ろ脚が、鉄柵の鋭利に尖った部分に刺さっています。「すぐに助けに行かなければ!」と「ねこから目線。」の京都スタッフが現場に急行することにしました。
■「現場まで一緒についていく」と心ある獣医師
鉄柵から離すことができたとしても、猫は逃げてしまう可能性も考えられました。そのまま逃げられると適切な治療をすることができず、脚のけがが悪化してしまうことも考えられます。スタッフは「鉄柵から黒猫の脚を取ること」「すぐに治療してくれる動物病院の確保」を念頭に置きました。
黒猫の保護については、慎重に行うことでなんとかクリアできそうですが、問題は動物病院の確保です。このようなケースで治療に対応してくれる動物病院は稀ですが、複数の病院に問い合わせをしたところ、「鎮静剤を打って治療に応じる」という心ある病院が見つかりました。さらにその獣医師は「現場まで一緒についていく」と言ってくれました。
スタッフと獣医師は現場に急行しました。近所の方々が見守る中、スタッフは獣医師と一緒に慎重に黒猫の脚を鉄柵から抜き取ることにしました。
できるだけ痛くないように…。なんとか黒猫の脚を鉄柵から離すことができました。
■脚のけがは順調に回復。しかし…!
救出後、動物病院へ連れて帰りました。獣医師によれば、手術は繊細な作業が必要で特に負傷した脚の予後が心配とのこと。さらに、破傷風の感染の危惧もあり、そのけがの状況は想像以上に厳しいものでした。
取り急ぎ、この日は出来る限りの治療をし経過観察をすることになりました。スタッフは黒猫に「お願いだから、どうか良くなってね」と声をかけ、いったんは帰宅しました。
それから一週間後。獣医師から連絡がありました。「破傷風感染もなく脚も順調に回復してきています」という喜ばしい知らせでした。胸をなでおろすスタッフでしたが、しかし獣医師は「新たな問題が浮上した」とも言います。この黒猫の上顎には、大きな穴があることが発覚。どうも脚が刺さった際に暴れた影響からか、口内にも負傷があったようでした。「一難去ってまた一難」です。
■救いだったのは、深まった黒猫と人間との絆
いったんはこの病院を退院。その後、黒猫は大阪にある譲渡型の保護猫カフェ「猫の惑星にゃーくる」で預かってもらうことになりました。同カフェスタッフの献身的なサポートを受けながら、別の動物病院で3回にわたって上顎の穴を塞ぐ手術を実施しました。
黒猫の保護・治療などにかかわった人たちは皆、心を痛めましたが、他方で救いだったのは、黒猫が人間に馴れてくれたことでした。撫でると安心したような表情を見せてくれ、黒猫が信頼してくれていることがわかり、気持ちが通じ合えたように思い、和やかな気持ちになりました。
やがて黒猫は3回の手術によって上顎の穴が完治し、自分で食事をとれるようになりました。「本当に良かった」と胸をなでおろすスタッフでした。
■里親希望者さんとの出会いを待ち続ける
鉄柵に刺さっていた黒猫は、災難を乗り越え奇跡的な回復を遂げました。現在も「猫の惑星にゃーくる」で過ごしています。同カフェ『セーラームーン』に出てくる黒猫にちなんで「ルナ」という名前をつけてもらい、今日も里親希望者さんとの出会いを待ち続けています。
ずいぶんと元気になってくれた黒猫・ルナ。「ねこから目線。」のスタッフはこのことをおおいに喜び、そしてこう声をかけてあげました。「近い将来、優しい里親さんと出会えるはず。いつまでも元気で楽しく過ごしてね」。
「ねこから目線。」
https://nekokaramesen.com/
(まいどなニュース特約・松田 義人)