劇団の閉鎖、そして六郎の戦死…『ブギウギ』の戦争描写 「亀」がこんなにも効いてくる作劇に驚嘆

 今週放送された『ブギウギ』(NHK総合)第10週「大空の弟」では、ツヤ(水川あさみ)の死からまだ立ち直れないスズ子(趣里)と梅吉(柳葉敏郎)の身に、六郎(黒崎煌代)の戦死という、さらなる悲運が襲いかかった。昭和初期を舞台にした朝ドラでは避けて通れない「戦争描写」。『ブギウギ』ではそれをどう扱うのか。制作統括・福岡利武さんに聞いた。

■「『生きていく』ということがテーマ」

「『カーネーション』(※編註 2011年後期。福岡さんは演出で携わっていた)などを含め、いくつもの朝ドラに携わってきて、戦争描写は大変難しいと、その都度思っています。僕の祖父は18歳で終戦を迎えまして、当時の話を祖父からよく聞いていました。決して説教くさいドラマにはしたくないのですが、『明日どうなるかわからないけれど、今日を必死に生きる』という思いで、当時の皆さんは生きていたのだと想像します。そして、『生きていく』ということ自体が当時の社会全体のテーマだったのではないかな、と思います。スズ子たちのたくましく生きる姿を見て、ドラマをご覧の皆さんに何かしら感じていただければ、うれしいです。

 第10週ではスズ子と梅吉が六郎の戦死を受けて、どういう気持ちになっていくのか、2人の思いをどう描くかについて、スタッフ間でたくさん話をしました。加えて梅丸楽劇団が解散し、スズ子の歌う場所がなくなってしまう。『歌って人の気持ちをハッピーにしたい』が主題の、このドラマだからこそ、より戦争の時代の苦しさが際立ったのではないかと思います。そんなところも含めて、『ブギウギ』らしく、あまり湿っぽくなりすぎない、カラッとした作劇を心がけました」

■「黒崎さんがまっすぐなお芝居で六郎を演じてくれた」

 また、六郎が可愛がっていた「亀」がこんなに効いてくることに驚かされた視聴者も多いのではないだろうか。六郎が書いてよこした手紙には亀のことしか書かれておらず、それがかえって想像を絶する戦地の地獄と六郎の苦しみ、そして「家族に心配をかけまい」という六郎の優しさが、刺すように伝わってきた。六郎が残した亀を入れた籠を抱きしめながら、スズ子が歌う「大空の弟」に聴き入る梅吉の姿や、スズ子と小夜(富田望生)が亀の餌のミミズを探すシーンでは、六郎の不在感がより一層迫ってきた。この、「亀」の用い方について福岡さんに聞いてみると、

「『のちに戦争で亡くなってしまう』というのは最初から決まっていて、それも含めて六郎というキャラクターを皆で作っていき、亀はそのキャラクター造形のひとつでした。残された亀を見てスズ子と梅吉が六郎に思いを馳せるシーンは、自然と肝になっていくだろうなと予想しながら、準備をしていました。

 亀を愛する優しさもそのひとつですが、作劇の上では、六郎の『純粋な想い』を何よりも大切にしたいと考えました。そしてまた、黒崎さんが本当にまっすぐなお芝居で演じてくれたので、台本上で想定していたよりもはるかに、六郎の死が映像としてぐっと入ってきたと思います。六郎が生きていれば、周りを明るくする、素直ですてきな好青年になっていたと思いますし、作っている僕らもとても辛くて悲しいです。その思いをしっかりと、スズ子が歌った『大空の弟』に込めることができたのではないかなと思っています」

 と、作り手としての六郎への思いを語った。ツヤと六郎の死を受け入れ、梅吉は新天地を目指して香川に旅立ち、鈴子は全国を巡業して歌っていくことを決意した。次週11週「ワテより十も下や」では、新たな出会いが待っているようだ。スズ子の生きていく姿を、見届けたい。

   ◇   ◇

『ブギウギ』

【出演】趣里 水上恒司/草彅剛 蒼井優 菊地凛子 生瀬勝久 小雪 水川あさみ 柳葉敏郎 ほか

【主題歌】「ハッピー☆ブギ」中納良恵 さかいゆう 趣里

【脚本】足立紳 櫻井剛

【音楽】服部隆之

【語り】高瀬耕造(NHK大阪放送局アナウンサー)

【放送時間】

▽NHK総合

毎週月曜~土曜 前8:00~8:15/(再)後0:45~1:00(※土曜は一週間を振り返り)

毎週日曜(再)前11:00~11:15

翌・月曜(再)前4:45~5:00(※日曜、翌・月曜は、土曜版の再放送)

▽NHK BS・NHK BSプレミアム4K

毎週月曜~金曜 前7:30~7:45

毎週土曜(再)前9:25~10:40(※月曜~金曜分を一挙放送)

(まいどなニュース特約・佐野 華英)

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