「困っている犬を助けなさい」 両親の教えで家族に迎えた保護犬 君がいるだけでわが家が穏やかになったよ
■野犬の子犬
ポムくん(5歳・オス)は、山中にいた野犬の子犬だった。保護団体に保護された時は生後6カ月くらいだったという。
千葉県在住の石井さんは、幼稚園の時から犬を飼うことに憧れていた。ただ、両親は「自分で責任をもって面倒みれるようになるまでは絶対にダメ」というタイプだったので、幼少期に犬を迎えることはできなかった。
「私が正社員として仕事が落ち着き、自分でお金もある程度稼げるようになった時、家族に改めて犬を飼いたいと相談したところOKが出たので犬を飼うことになりました。昔から親が『金で命を買う』というのが嫌だったようで。犬を飼うなら保健所に行くか、困ってる犬を助けなさいという教えてくれたので保護犬を選びました。」
■犬が苦手な犬と人が苦手な人
2018年5月上旬、石井さんはシェルターに直接犬を見に行った。ポムくんがいたシェルターは、複数の広い柵の中にたくさんのワンチャンが入ってるような感じだった。柵の外には数匹単体でリードに繋がれている犬がいて、その中の1匹がポムくんだった。
「シェルターの入口付近にいたのですが、真っ先に目に入った子がポムだったんです。柵の外にいる犬はわんちゃんが苦手な子なんですと教えてもらい、私もぶっちゃけ人付き合い苦手だし、大人数とか苦手だし、『分かるぞ~』と言いながらポムをなでさせてもらっていました。人の手を嫌がることも無く最初からすっごい人懐っこい子でした」
その後も一通り施設の中のわんちゃんを見て回ったが、石井さんはポムくんのところに戻ってきた。戻ってくると、ポムくんもうれしそうに「またなでて」と言わんばかりに耳を倒してお出迎えしてくれた。1時間ほどポムくんと触れ合い、石井さんはポムくんを迎えることにした。
■昭和の親父もベタ惚れ
初めて家に来たポムくんは、割と落ち着いた様子で部屋の中をクンクン嗅いで回った。ある程度落ち着いたら次は石井さんのところに来て「なでて」とアピール。
「もう可愛くて、ずっとなでていました(笑)これは早く慣れてくれるかなと思った矢先の夜、事件が起きました」
シェルターでたくさんの犬に囲まれて暮らしていたからか、ポムくんは急に1匹になるとすごく不安になったようだった。
「ポムがケージで寝ているから今のうちにと、私がお風呂に行った数十分後、2階の自分の部屋からドタバタとすごい音がして、寂しそうな声で鳴いてる犬の声が聞こえたんです。急いで見に行くと、ポムが入っていたケージは鍵が壊され、ケージもひん曲がり、ポムはなぜかケージ一の上で震えていました。衝撃でした。」
その時けがはなかったものの、また壊した時にけがでもしたらと心配し、それ以来家の中ではフリーにして飼うことにしたという。
■君がいるだけで家族がみんな穏やかに
ポムくんはお散歩が大好きで、石井さんが着替えているだけでお散歩だと思って喜ぶ。お散歩の「お」と口にしただけでも耳がぴこぴこし、尻尾をブンブン振る。ドライブは、昔は車で少し走ったたでけでも吐くほど苦手だったが、いつの間にか好きになってくれた。
「今では私の車の前を通るとポム専用席のドアの前に自分から行き、『ドアを開けろ』と言わんばかりにこちらを見てきます(笑)楽しい場所に行けると覚えてくれたのでしょうか」
ポムくんがいるだけで家族がみんな穏やかになった。少しピリピリしていても、ポムくんが誰かに「なでて」という動作しただけで、みんな「ポムはかわいいな~」と和やかになる。
「特に変わったのは祖父です。昔ながらの『犬は外で飼え!』というThe昭和のおやじタイプだったのですが。今では外飼いの犬を見ると、『犬は家の中で飼うべきだよな』と言うようになりました。それに、祖父はポムと散歩に行くようになってとても元気になりました。私も、辛いことがあっても犬のためにと少しでも踏ん張れるようになり、ポムが生きる希望になっています。やっぱり犬は素晴らしい存在です」
(まいどなニュース特約・渡辺 陽)