西日本豪雨で水没した自宅を「真備鉱物館」に 「地球の歴史を感じる」コレクション3000点超

岡山県中を巡って鉱物採集を楽しみ、専門雑誌に連載を持つフリーライター小野通男さん(70)=倉敷市真備町川辺=が、自宅の書斎を改装し“鉱物館”を開設した。水晶や黄銅鉱をはじめ数千点のコレクションを展示し「鉱石を手に乗せると地球の歴史を感じ、悠久の時間をさかのぼっていくような心持ちになる」と話す。

庭に足を踏み入れると、一面に広がる石の山。水晶の破片や磁鉄鉱が転がり、日の光に輝く。いずれも鉱物館に上がれなかった“二級品”だ。「石を採集する人の庭は皆こんな感じになるんですよ」と笑う。

■山で見つけたきらめく石に感動

鉱物の魅力に気付いたのは15年ほど前。退職後に登山を楽しんでいた時、きらめく石を発見した。黒紫の肌を光に照らすと銀灰色の輝きが美しく、調べると赤鉄鉱とわかった。「珍しい鉱物ではないが、数千万年も地中に埋まっていたものが偶然、自分に美しさを見いだされたという縁の不思議に魅了された。足元にはさらにきれいで面白いものが秘められている」と感動し、採集を開始した。

当初は河原できれいな石を探す程度だったが、次第に国立公園や国定公園の採集可能エリアも巡るように。著名な鉱山では管理会社を調べ、許可を得て立ち入る。「銅や鉄などを採掘した鉱山では、選鉱から外れた石を放置した。その石山を“ズリ”という。坑口の付近にあり、その中から目当ての鉱物が見つかることが多い」と説明する。岩石や鉱脈ができる際に生じた空洞“ガマ”の中には結晶がある可能性が高く、主にこの二つを狙って毎週のように山を巡る。

「岡山は国内でもまれなほど多種多様な鉱物が産出し、昭和初期から中期にかけて400以上の鉱山が稼働していた。県外に出るまでもなく、県内を巡れば十分」。中でも自慢の逸品は、高梁市で水抜き中のダム湖の底で発見した青色方解石。通常は白い方解石に、淡い青みがかかって美しく、国内ではめったに採れないという。井原市美星町地区で見つけた結晶が大きく鈴なりになった水晶クラスターは、小野さんが掘り出した最大級の一つで愛着がある。

雑誌に投稿を繰り返すうち、連載を依頼されるようにもなった。専門誌「ミネラ」では2年半前から「わくわくドキドキ採集記」を執筆中だ。

コレクションが増え、置き場に困っていた2018年、西日本豪雨で自宅が浸水した。「書斎と多数の本が駄目になって消沈したが、思い切って鉱物の展示場にしようと決めた」。部屋の四方に棚を設けて石の種類や大きさごとに分類し、「真備鉱物館」と名付けて22年2月にオープン。知人らに公開している。

水晶1500点を中心に柘榴(ざくろ)石、黄銅鉱、瑪瑙(めのう)など3千点以上を展示。収納室にもほぼ同数の未展示品がある。岡山大学の鈴木茂之名誉教授(地質学)は、「県内のみで、これほど多様な水晶や鉱石を採集し、展示している人は珍しい」と話した。

目星をつけた場所がまだまだあるという小野さん。「地球と対話するような気持ちで山を歩き、良い石を見つけると世界の秘密を発見した気分に。これからも心をたかぶらせる石を掘り出したい」と意気込む。真備鉱物館の見学は予約制で問い合わせは小野さん(080-3879-8365)。

(まいどなニュース/山陽新聞)

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