「職場の雑談は3分」がちょうどいい 「忘年会の強制参加きつい」「余興やらされるの嫌」嘆く人たちに朗報?
「悲報 会社の忘年会が復活してしまいました」ーーネット上では12月に入り、職場の忘年会を嫌がる社会人の投稿が相次いでいます。忘年会は本来、一年の苦労をねぎらうために開かれる宴会ですが、「労働時間外の強制参加きつい」「忘年会の時間の残業代払って」「会費5千円はきつい。会社が出して」「なんで会費払って上司のお酌しないといけないの」「いまだに飲みニケーションとか言ってくる」「余興やらされるの嫌だ」などの声があふれています。
■適切な雑談時間は3分、9分過ぎると「長い」「負担」
そんな中、「わずか3分の雑談」の効果に注目が集まっています。
法人向けの自動販売機「社長のおごり自販機」を展開するサントリー食品インターナショナル(本社、東京都港区)が発表した「雑談がちょっと生まれやすくなる5条件」。同自販機を設置する企業の中から120社を対象に、同自販機がもたらす効果についてアンケートを実施。上智大学言語教育研究センター教授清水崇文さんとともに分析を行った結果、次の5つの条件を見出しました。
《雑談がちょっと生まれやすくなる5条件》
(1)終わりの時間がよめる
(2)ながら・ついで
(3)共同作業
(4)目の前にある共通の話題
(5)適度な距離で横並び
そもそも雑談にはどんな効果があるのでしょうか。
清水教授は、雑談について「雑談の本質は『相互的な自己開示によるラポール(信頼関係)の醸成』だと考えています。お互いに心がつながりあっている、通じ合っていると感じられる状況を指します。職場においては、雑談は心理的安全性や生産性に良い影響を与えます」と説明し、「信頼関係(つながり)がある同僚が多い職場だと、職場はその社員にとっての『ホーム』となります。会議中などでも気軽に発言できたり、行き詰まったりしたときに早い段階で誰かに相談することができたりします。些細なことかと思われるかもしれませんが、この積み重ねが、生産性に影響を与えます。逆にいうと、心理的安全性が確保されていないと、働く人のモチベーションを低下させ、結果として組織の生産性やクリエイティビティを損なわせる一因になり得ます」とコメントしました。
今回の調査から、自販機を利用するときの雑談の平均時間は約3分と分かりました。
「業務のすきま時間に収まる短さが良いーーちょっとした息抜きになる一方、業務の邪魔にならないーーということも考えられます。また、短い時間で雑談を終えることで『もっと話したい』『次はこんなことを話そう』と、繰り返し誘う行動にもつながります」(清水教授)
一方で「長い」「負担になる」と感じる雑談時間は約9分という結果でした。
「職場の同僚との適切な雑談時間は『約3分』であるという事実は、私にとっても新たな発見でした。心理学では、接触する機会が多ければ多いほど相手に好意を持つ傾向があると言われています(単純接触効果)が、1回の会話が短いからこそ頻繁に誘うことができ、その結果、ラポールも生まれやすくなります。今回発見した、職場の同僚との適切な雑談時間=約3分という発見を、日頃から意識できるようなキーワードにするならば『腹三分目雑談』と言えるでしょう」(清水教授)
また、2人並んで自販機に向かって歩くときや、社員証をタッチするときの距離「50~100cm程度」なども、雑談が生まれやすい要因の一つと考えられるそうです。
「相手の表情や雰囲気が分かり、個人的会話をするのに適した距離(個体距離)に該当します。また、正面同士では圧迫感を感じて、相手の一挙手一投足に敏感になり、緊張感が生まれやすいのですが、横並びの位置関係では、距離が適度にひらき、視界が開け圧迫されず、リラックスしやすい効果があります」(清水教授)
今回分かった5つの条件は日常生活でも使えるといい、「普段何気なくやっているような雑談でも、実はこれらの5条件のいくつかが満たされていることが多いです。ご近所さんと帰り道が一緒になったときや、買い物ついでのお店の人との会話など。つまり、職場でも、職場以外でも、今回見出した5条件を意識するだけで、雑談が生まれやすくなると言えます」(清水教授)。
▽社長のおごり自販機…2021年10月、首都圏エリアでサービスを開始し、2022年5月から全国展開。社内で自販機に行く相手を誘い、2人で社員証を同時にタッチすると飲料がもらえるという仕組み。飲料代は会社が負担し、設置場所によってはポスターの文言を「工場長のおごり」などと自由に変更可能。「あいさつ以上・食事未満」の気軽なコミュニケーションが生まれやすくなると評判が広がり、設置企業は360社に上る(2023年10月現在)。
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行きたくもない飲み会に嫌々参加するより、業務時間中の3分の雑談で信頼関係を生み、生産性を上げるーーアルコールや強制的な飲み会、余興が苦手な人にとっては朗報かもしれませんね。