「今日、保健所に連れて行く」と聞いて引き取った犬 ウンチを撒き散らし、白目を剥いて唸っていたけど…「本当は、ただ寂しかったんだよね」
ナナちゃん(2歳・メス)は、ある医師が娘のために買った犬だった。ところが、その医師も娘も「もうこんな犬は飼えない」と、実家にナナちゃんを預けていた。結局、実家でも飼えないから「今日、保健所に連れて行く」と言っていたという。
2023年11月23日、大阪の実家に帰省した兵庫県在住のKさんは、お母さんからその話を聞き、その日のうちにナナちゃんを引き取った。
初めてナナちゃんに会いに行った時、ナナちゃんは階段を駆け上がり、テーブルの上に乗り、そこらじゅうでオシッコをした。飼い主の手を噛むし、飼い主の夫妻もどうしていいか分からないようだった。
「でも、僕が抱っこさせてもらうと素直に抱っこされて、背中をとんとんすると落ち着いてくれました。『ああ、この子寂しいねんな』と感じました。これならうちに来ても大丈夫そうだと思い、連れて帰ってきました」と、Kさんは振り返る。
「ナナは当時1歳でしたが、全く面倒も見てもらえず、自動給餌器でドッグフードをもらっていました。小屋からも出られず、トイレのしつけも全然できていないため、保健所に行ったらどんな目に遭うか分からない。行かせるわけにはいかないと思いました。先方は泣いて喜んでいました」
■徐々に家庭犬として成長
先住犬のグラムちゃんに、「新しい犬が来るねんけど大丈夫?」と話をすると、「いいですよ~」みたいな顔していた。
「16年付き合っているので、何を言ってるのかは大体分かります。顔合わせをしたら『あ~、この子ですね~、分かりました~』みたいな感じですんなり受け入れてくれました。2人の娘も妻も大喜びでした」
ただ、家に来てしばらくは、前にいた家と同じように走りまわり、そこら辺にウンチを撒き散らし、白目を剥いて唸っていた。
「でも、抱っこすると落ち着いたり、先住犬グラムがナナに話しかけると動きが止まったりしたんです。一緒に過ごすうちにトイレを覚え、芸を覚え、子どもと仲良く遊び、何より妻と僕にべったり寄り添うようになってくれました」
元々の名前がナナで、鑑札の名義変更のときにイヌの登録名も変えることができたが、元の名前で呼ばれる方が混乱少ないと思い、ナナのまま再登録した。
ナナちゃんの性格は怖がりでやんちゃ。コワイもの見たさで覗き込んでびっくりするタイプだという。ソファの上での見張りをするのが好きで、いつもソファの上で人の動きを見て、家族の中で遊んでくれそうな人を見つけては「あそぼ!」と誘う。
先住の老犬グラムちゃんのことも大好き。いつも「おばあちゃ~ん!」と甘えにいく。ティッシュを引っ張り出すなどのいたずらも、グラムが教え込んだという。
グラムちゃんは“おばあわん”で、子育てが一段落したので落ち着いた生活を送っていた。しかし、ナナちゃんが来て、お手おかわりを思い出したり、しっぽを振ることや階段を登ることなど色々思い出したりしたようだった。
「今年の夏は家族で島根に行き一緒に泳ぎました。家族にとっても、グラムにとってもウチに来てくれて良かったなと本当に思います。もちろん、ナナにももっと幸せを感じてもらえたら嬉しいです」
(まいどなニュース特約・渡辺 陽)