「狂気の卒業制作」が話題、美大生がひたすらペンで描いた巨大な空想都市に8万人が驚嘆 作風の出発点は小学校の社会の授業?
現役美大生で絵本作家やイラストレーターとしても活躍中の「こた」さん(@kota_draw)の卒業制作がX(旧ツイッター)で話題になっています。自分だけの「空想都市」をひたすらにペンで描いた巨大な作品に「緻密すぎる」「狂気的で最高」と驚嘆する声が上がっています。
幼少期から絵を描くことが好きだったこたさん。小学4年の社会の授業がきっかけで“地理オタク”になった経験が、現在の作風の出発点です。架空の都道府県や市町村を考えて地図や人口統計表を作ったり、路線図を描いたりしていました。
6年生の頃からこうした「空想都市」を立体的な絵で表現するようになったことで、より芸術としての側面が強くなります。中学3年でSNSに空想都市の絵をアップし始め、たびたび話題になってきました。現在、多摩美術大学グラフィックデザイン学科に在籍。在学中に出版社から声がかかり、絵本作家デビューも果たしました。今年11月には新作絵本『ユメノシティ』を発売したばかりです。
今回の卒業制作も、8万件近くの「いいね」を集める好評ぶり。高層ビルや繁華街、電車、近未来的な建造物などを緻密な線で描き、独特な世界観をつくり出しています。作品の大きさは、現時点で横3.8m、縦1.6mほど。来年3月の公開に向けて描き足し、さらに大きくなる予定だということです。
■"人の手"が生み出す芸術の狂気を感じて欲しい
ーーー現時点でどのぐらい制作に時間がかかりましたでしょうか。また、作品は最終的にはどれぐらい大きくなるのでしょう。
こたさん:本格的に制作に入れたのが新作絵本の入稿を終えた9月半ば頃だったので、だいたい3ヶ月といった感じです。目標は特になく、描けるとこまでといった感じなのですが、横7mくらいにはして会場へ持って行きたいなと思っています。
ーーー作品のコンセプトや「ここを見てほしい」という点について教えてください。
こたさん:特にテーマやコンセプトはありません。本当にただの自己満足で、趣味で描いているような感じです。未来都市を描いていたと思えば、途中から古い街並みが登場したりと、行き当たりばったりで描いています。
ただ、ひとつだけテーマというか意味付けをするとしたら、"人の手"によって生み出される芸術の狂気的な部分を感じて欲しい、という思いがあります。作品の善し悪しというより、人間の「描く」「芸術を楽しむ」という行為自体を見て欲しいなと。最近では何かとAIの話題で持ちきりですが、自分個人としては描く行為そのものが好きで絵をやっているので、あまり問題視していません(もちろん、勝手に著作物を参考にAIで絵を生成することには問題を感じていますが)。
今回の卒業制作はシンプルに紙とペン、そしてとにかく大きな絵を描く、ということだけを決めて、いま一度素直に芸術を楽しみたいと思ってスタートしました。
ーーー小学生時代から作風が確立されていたように感じます。大学での4年間を経てご自身で変化、成長したなと感じる点はありますでしょうか。
こたさん:スタイルは小学生の頃から全く変わらず、ツールは紙とペン、そして「空想の都市を描く」ということを一貫してやってきているのですが、単純に絵の精度がめちゃめちゃ上がったなと感じます。まず一番は線の精度で、小学生時代の絵を見るとかなりぐちゃぐちゃなのが見て分かると思います。かすれがあったり、はみ出していたり、直線が歪んでいたり。
さすがに小学生と比較してああだこうだ言うのもアレですが、ずっと続けていることだからこそ、なかなか成長を実感するタイミングがないんですよね。今も小学生のときと同じ熱量、技量で描いている感覚です。なので改めて並べて見て「あぁ、ちゃんと成長しているな」と実感出来ました。
線以外にも、大学に入ってからはパースの正確さだったり、モチーフのデッサン力だったり、技術面での成長が出来たと思います。
ーーー卒業後の展望について教えていただけますでしょうか。
こたさん:継続して絵本作家・イラストレーターとして活動していくので、絵本をどんどん作って子どもたちに届けていきたいなと思います。絵本以外のイラストのお仕事も沢山していきたいです。
目標としては初個展が東京での開催だったので、次に個展を開催するときは関東と関西の2地点、もしくはそれ以上の巡回展を開催出来たらなと思います!
あと欲張りですが、いつか空想都市(ペン画)だけの画集を発売出来たら嬉しいなぁ...と思っています。卒業後も引き続き制作を頑張っていくので、作品を見ていただけたら幸いです。今後とも、こたをよろしくお願い致します!
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この卒業制作は、来年3月2・3日に東京・恵比寿ガーデンプレイス内の会場で開催される「多摩美術大学グラフィックデザイン学科卒業制作展2024 "LINE"」で展示されます。こたさんは「もっともっと絵を大きくして会場に持って行くので、ぜひ生で見て欲しいです。お時間ありましたらぜひ!」と呼びかけています。
(まいどなニュース・小森 有喜)