妊娠中の保護犬が5匹を出産 体が冷えミルクも飲めない1匹の赤ちゃん犬 「生きるんだ」哺乳瓶でミルクを飲ませ必死に看護

九州を拠点に行き場を失ったワンコたちの命を救い、世話を続けるボランティアチーム、わんにゃんレスキューはぴねす(以下、はぴねす)。2023年秋、はぴねすに迎えられた元繁殖犬がいます。推定年齢5歳ほどのシェトランドシープドッグの血が入ったミックス犬のメスで、名前はリツ。保護当初妊娠していました。

■出産直後自分で赤ちゃんとのヘソの緒を切ったリツ

妊娠中のリツを保護した後、無事に出産してくれるよう、スタッフは献身的な世話を続けました。今か今かと寝てもいられぬ日々。そんなある日の深夜1時ごろ、リツがなんだか落ち着かない素ぶりを見せ始めたのです。

「そろそろ?」とスタッフは声をかけながら、静かに見守りました。深夜3時ごろお産が始まり、4匹目までは間を開けずに出産。しかし、もう1匹いるとおぼしき赤ちゃんがなかなか出てきません。この間、リツは4匹分のへその緒を自分で切り、綺麗に赤ちゃんたちを舐めてお乳も与えてあげていましたが、同時に残りの1匹を産み出すために、いきむ様子もありました。朝5時45分ごろ、最後の1匹を出産。リツ、5匹の赤ちゃんとも無事だったことに目頭が熱くなりました。

リツの母性本能にも感動。そのやつれた表情からもかなり辛かったであろう出産にもかかわらず、赤ちゃんたち全員を自分の体に抱き抱えるように集めていました。逞しさと母性を前に、スタッフは強い感動を覚えました。

■きょうだいのうちの1匹に異変が…

産後のリツはお母さんワンコによくある「私の子に構うな」と言わんばかりの様子もあり、スタッフは、慎重に慎重に様子を見守りましたが、出産から2日後にアクシデントが起きました。

スタッフがベッドを取り替え、リツ親子たちがいるサークルの掃除をしている際、目に飛び込んできたのは、リツの背中側に横たわる5匹のうちの1匹の小さな赤ちゃんでした。スタッフは「あらこんなところにいたらダメじゃない。リツ母さんに温めてもらわないと」と、赤ちゃんをリツのお腹のほうに置いてあげようと抱えると、その小さな体は冷え切っていました。

どうも母乳を飲めていない様子でか細い声で鳴いていました。「このままでは死んでしまう」と慌てたスタッフは、赤ちゃんの体を丁寧にマッサージしながら必死に温め、一晩中ミルクを与え続けました。生後間もない赤ちゃんは動物病院でも「ほぼ何もできない」ことが多かった過去の経験からのスタッフの咄嗟の判断でしたが、赤ちゃんは小さな口で哺乳器に吸い付き弱々しくも必死に生きようとしていました。

■「正直もうダメかもしれない」

スタッフは「もうダメかもしれない。でも、その覚悟を持ちながらも、その生きようとする力に寄り添い、最後まで諦めずにお世話をし続けよう」と決意。このスタッフの思いと献身的なサポートのおかげで、赤ちゃんの体は体温を取り戻し、ミルクを飲む量も日に日に増えていきました。他のきょうだい同様の健康を取り戻し、今では5匹のきょうだい仲良くみんなでお昼寝をするようにもなりました。

赤ちゃんたちは体格の差さえあれど、与えられた命を全うしようと今日も小さい体で懸命に生きようと過ごしています。リツの出産、そして5匹の赤ちゃんたちの様子を見て、はぴねすのスタッフは改めて命の尊さを思いました。

5匹の赤ちゃんをさらに幸せな犬生へと結ぶことを誓い、立派なお母さんぶりを見せてくれたリツにも優しい里親さんとのマッチングを目指すことを心に刻みました。

わんにゃんレスキューはぴねす

http://happines-rescue.com/

(まいどなニュース特約・松田 義人)

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