脱毛のミックス犬は警戒心の塊 トリマーや保護団体スタッフの愛情を浴びて甘えん坊キャラに 「病気を治して幸せになろうね」
2023年9月、福岡県の保健所にオスの小型ミックス犬が収容されました。飼い犬とみられますが、脱毛が著しく皮膚病を患っている様子です。全く世話されないまま棄てられたように映りました。一定期間を過ぎても飼い主の名乗りはなく、そして捕獲されたエリアは同様のワンコが多数おり、このことからあるエリアで多頭飼いをしていた飼い主が意図的に棄てた可能性が高いように感じられました。
しかし、今すべきはこの行き場を失ったワンコの保護です。地元で保護活動を続けるボランティアチーム、わんにゃんレスキューはぴねす(以下、はぴねす)では、このワンコを引き出すことを決意。「元気くん」と名付けお世話をすることにしました。
■「その名の通り『元気』を取り戻していこうね」
保健所の職員によれば、収容された当初はとにかく警戒心が強く、なかなか近寄ってこなかったそうです。さらにときには「噛みつこうとしたこともあった」そうです。
ワンコの警戒心は、個々の性格もありますが、過去に飼い主に見放され、病気にかかっていても治療を受けられなかったり、虐待されたりしたことによるトラウマから生まれるケースも多くあります。こういったワンコを前にし心を痛めることが多かったはぴねすのスタッフでしたが、元気くんはスタッフの優しさを瞬時にキャッチしたのか、初めて会った時に少し尻尾を振ってくれました。元気くんを前にスタッフはこう語りかけました。
「信頼してくれてありがとうね。これから体を治して、その名前通りの『元気』を取り戻していこうね」
■不安そうに「クーンクーン」と鳴く元気くん
保護当初は皮膚がただれており、トリマーさんの元でも「クーンクーン」と鳴きながら、体を触られることを嫌がっていました。これまで多くの保護犬をきれいにしてきたトリマーさんは慌てません。「大丈夫。すぐ綺麗になるからね!」と声をかけ元気くんの体を念入りに、洗いました。油くさかった匂いやベタベタの肌もすっかり綺麗になりました。
スタッフはトリマーさんにお礼を言い、まずは預かりスタッフさんの家へ元気くんを連れていくことにしました。
■皮膚病と歯以外は太鼓判を押されるほどの健康体
翌日、元気くんを連れて動物病院へ。明らかな皮膚病が考えられ、元いた環境でこれだけケアされていなかったことを踏まえると他の病気にも感染している恐れがありそうです。
が、心配は杞憂に終わり、血液検査は問題なくフィラリア検査も陰性。屋外飼育で3年間予防薬を投与していないワンコの場合、フィラリアの感染率が90%を超えますが、元気くんには感染がありませんでした。心臓も全く異常がなく、皮膚病を除けば獣医師が太鼓判を押すほど健康な体でした。
やがて、去勢手術を実施し、マイクロチップを挿入。歯石取りも実施。最終的にたくさんの歯を抜くことになってしまいました。不衛生な場所で適切なケアがなされず、餌だけをもらって飼われていたように思われました。
そんな中でも必死に生き抜いていた元気くんだからこそきちんとケアをしてあげれば、必ずや完全な健康体を取り戻し、いっぱいの笑顔を見せてくれるようになることも期待できました。
■捕獲エリアに他にも同じ境遇の犬がいる?
預かりスタッフの家に来てからの数日間、元気くんはサークルの中で静かに過ごし、人間が近寄れば「近寄らないでもらえませんか」と、嫌そうな情を見せていました。しかし、少しずつ心を開いてくれるようになり、本来の性格も見せてくれるようになりました。
保健所の職員が言っていたような強い警戒心や噛みつかんばかりの威嚇はなくなり、むしろ「遊ぼうよ!」と甘えてくる、かなりのかまってちゃんの性格だったことがわかりました。かと言って、嫉妬深いわけでもなく、預かりスタッフの家にいる他の先住犬との協調性も抜群。皮膚病さえ完治すれば、全く申し分のないかわいいワンコであることもわかりました。
現在、はぴねすでは元気くんの里親募集に向けて、お世話をし続けていますが、同時にこんなことも頭に浮かべていました。
「元気が捕獲された場所のある家に、他にも同じような境遇のワンコたちがいるんじゃないだろうか。まだワンコたちがいるのなら、環境改善のために何かできることがあるかもしれない。そうなのだとしたら、飼育環境の改善をし最後までお世話をするべき命を守っていきたい」
はぴねすでは元気くんだけでなく、1匹ずつに与えられたワンコたちの尊い命をサポートすべく今日も保護活動を続けています。
わんにゃんレスキューはぴねす
http://happines-rescue.com/
(まいどなニュース特約・松田 義人)