篠塚和典氏、ミスターから「これができれば朝飯前」 44年前の地獄の伊東キャンプを振り返る

1979年10月28日から11月21日まで静岡県伊東市で、第一次長嶋巨人で行われた、一軍若手選手による壮絶なキャンプを書籍化した『地獄の伊東キャンプ 完全版 長嶋茂雄が闘魂こめた二十五日間』(鈴木利宗著、河出書房新社刊、発売中、2585円)の発売記念イベントが都内にある北沢タウンホールで20日、篠塚和典氏、鹿取義隆氏をゲストに迎え開催された。

会場には200人のG党らが集まり、鈴木氏、篠塚氏、鹿取氏による「地獄の伊東キャンプトーク」で盛り上がった。鹿取氏は伊東キャンプでの思い出を「私のテーマは技術面では、持ち球を磨いて精度を高めること、シンカーの切れを増すことでした。肉体的には長いシーズンを投げ抜くための体力アップ、スタミナづくりのために、走り込みも徹底的にやりました」と語った。

篠塚氏は「伊東キャンプというと、中畑さんのマンツーマンノックや、松本さんのスイッチヒッター転向への『鳥かご特打』など、ミスター直々の猛特訓がよく取り上げられますが、私もティーバッティングでミスターの理論を直々に伝授されたんです」と話した。そして、真ん中の球ではなく、高め、低めの明らかなボール球を放られ、足腰を前後、上下に素早く移動させてミートする練習で「頭の上に来る球を、脇を締めて上から打ち下ろす。低い球は腰を深く下ろすように膝を曲げた状態で長嶋監督は『これができれば、真ん中を打つ技術なんて朝飯前だ』と。いまでいう体幹トレも兼ねていた。ミスターの先見の明です」と指導の詳細を説明した。篠塚氏はその後、ミスター直々のトレーニングを自分のものとし、2度の首位打者に輝いた。

この伊東キャンプの翌年、長嶋巨人は3位とAクラスに浮上。『来季こそ優勝を』の結束が強まったシーズン最終戦翌日、突如「長嶋電撃解任」が報じられた。著者の鈴木氏は、「翌81年にはレギュラーに成長した伊東のメンバーが中心となってリーグ優勝、日本一に輝くんですが、チームを指揮したのは後任の藤田元司監督だったが『自分を育ててくれたのは長嶋監督である』という思いが強い伊東キャンプに参加した18選手は長嶋前監督をたずね、日本一を報告すると、長嶋さんを胴上げしたんです」と感慨深げに話した。

イベントを終えた鹿取氏は「伊東キャンプでのことを、初めて野手、つまり投手陣以外としっかり話せました。実際、彼(篠塚さん)から聞くのは知らなかった内容ばかり。野手陣の伊東キャンプは、伝え聞いていた以上のキツさだったんだとわかりました。お客さんは記念撮影時に声をかけてくれて『面白かったです、とてもいい話でした』と。みんな、当時は若かったと思うんですが、あの79年の伊東で何が行われていたのかを今日のトークで伝えられたかなと思います」

一方の篠塚氏は「伊東キャンプをこれだけ大規模なイベントで、お客さんを前に振り返るのは初めてでしたね。もっとはやくこういうイベントができればよかったけれど、44年経って振り返るのも、いいものだと思いました。年配のお客さんも多かったので、当時の懐かしい記憶がよみがえった人もいると思いますが、鹿取さんと私も、話しながらどんどん思い出すし、記憶がよみがえってきました。これだけ楽しんでいただけるのであれば、このトークイベントをさらに続けて行っても、面白いと思います」と興奮冷めやらぬ様子で語った。

最後に篠塚氏は『44年前はこんなこともやっていたのか!?』と、つらいときだけでなく、元気なときでも読んでもらって、さらなる活力にしてもらえたら。我々の伊東キャンプを、同時体験してもらえる本だと思います」、鹿取氏は「いまのご時世、誰でも苦しいときはあると思いますが、伊東キャンプをやり抜いたメンバーが、その後に活躍して多様な成果を上げていく物語を読むと、日々努力すること、耐えること、そして苦難を乗り越えるということが一本の線でつながることに気づくと思う」と語った。

書籍『地獄の伊東キャンプ完全版』は、著者の鈴木氏が、伊東キャンプの当事者・関係者を足かけ20年にわたって取材し「完全版」としてまとめた力作で、320ページのボリュームになっている。次回が最終回のイベントとなり『地獄の伊東キャンプ完全版』発売記念イベントに角盈男氏と西本聖氏が登場する。来年2月29日、東京・北沢タウンホールで開催される。チケットは各プレイガイドで好評発売中。

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