【M-1】かつての敗者復活戦を懐かしむお笑いファンたち「寒さに耐えながら…」 今年から屋内会場で開催

12月24日はいよいよ「M-1グランプリ2023」決勝戦。同日開催される敗者復活戦は、今大会から屋内会場での開催に変更されます。敗者復活戦は長らく、競馬場や野球場など屋外で開かれてきた歴史があり、X(旧ツイッター)では「極寒の中で耐えながら見た」と懐かしむお笑いファンもいます。

■敗復の組数、現在の2~3倍の時代も

歴代の敗者復活戦の会場は、02~04年…パナソニックセンター東京前特設ステージ/05年…明治神宮球場/06年…有明コロシアム/07~10年…大井競馬場/15~22年…六本木ヒルズアリーナ。今年は新宿住友ビル三角広場で開催予定です。大会が再開した15年以降は出場組数が20組以内に抑えられていますが、それ以前はおおよそ50~60組程度とかなり多かったのも特徴的でした。

Xでは「昔は組数が多かった」「寒さに耐えながら見たな…」「寒さで体力削られすぎて決勝はボーッとしながら見た」と、現地参戦した筋金入りのお笑いファンたちが相次いで投稿しています。

その中の1人で、かつての「baseよしもと」(※編集部注…1999年以降関西を中心にブームを巻き起こしたお笑い劇場)が大好きだったというお笑いファンの女性(33)に、当時を振り返ってもらいました。

■あまりの寒さに笑いの感覚も麻痺?

ーーー敗者復活戦に行かれたのは何年ごろでしょうか

女性:2002年から2010年まで毎年、観に行っていました。子どもだったこともあり、はっきりと記憶にあるのは05年の神宮球場以降ですね。

ーーーお目当ての芸人や、会場での歓声が大きかった芸人さんは誰だったか覚えていますか

女性:私の目当てはハリガネロックとランディーズでした。その2組が出なくなって以降も、お笑いファンの義務として行っていた感じがあります。

当時のオンエアバトルで活躍していた芸人が登場すると、やはり大きな歓声が上がっていましたね。あと2004年にオリエンタルラジオが初登場した時は「NSC在学中でこの完成度なのか」と観客がどよめいていました。

その翌年は、増谷キートンさんと椿鬼奴さんが組んでいたBODYというコンビが印象的でした。キートンさんが全裸に見えるような格好していたので、客席から悲鳴が上がったのをよく覚えています(笑)

ーーー観客の様子や会場の空気感について詳しく教えてください

女性:寒すぎてふと「なんでこんなきつい環境の中でお笑い見てるんだろ、私」と何回か我に帰ることがありました。もう20組を超えてくると「何が面白いのか分からない」状態になってくるんですね。なので中盤の芸人たちは非常に不利と言われていました。

あとはトイレ地獄です。トイレに立つことはNGではなかったのですが、やはり「真剣にやっている漫才師さんのネタ中にトイレに立つのは失礼」と思って我慢していました。5組ぐらいごとにMCが出てくる時間があり、その間にトイレに行けるか…と思っても結局女子トイレが長蛇の列すぎて、次の漫才師の出番に間に合わないので極限まで我慢していました。

あまりに寒いので、運営側から入場時にカイロが配られたこともありました。それが「あったかさ6時間持続」って書いてあるカイロだったんですが、昼12時から夜10時ぐらいまで会場にいるので、みんな「足りねーよ!!」って突っ込んでました(笑)

ーーーSNSがまだ普及していない時代でしたが、応援や情報共有の仕方はどのような感じだったのでしょうか

女性:1組ネタが終わるたびに、みんなガラケーを取り出していたのが記憶に残っています。当時はTwitterがなく、敗者復活戦のテレビ放送はCSだけだったので、みんな感想を当時の2ちゃんねるの掲示板に書き込んで実況中継していたんです。「○○は会場のウケ的に一番だった」」「○○は厳しそう」みたいな感想をみんな掲示板に書いていました。

あと、現場で観戦したあと「お見送り」という儀式がありました。大阪に帰る芸人さんの夜行バスの発車をみんなで見守るというものです。負けが確定しているのでお通夜みたいな雰囲気でした。ただ、当時はビッキーズなど人気なのにM-1で勝てないことで解散するコンビもいたので「M-1で負けても解散しないでほしい。ファンはここにいるよ」と訴えるために見送っていた感じもあります。

■コアなお笑いファンが今より少なかった時代…会場に生まれた一体感

ーーーみんな全力で応援していたんですね

女性:そうですね。当時は「推し」という言葉がなく、好きな芸人を表現するときは「○○命!!」とよく表現していたのですが、まさに言葉通り、命を削って応援していました。特に思春期の女子にとって「自分が面白いと思っている芸人が売れるか売れないか」は「自分の感性が社会に通用するか、しないか」という勝負のようにも感じていたので、かなり熱が入っていましたね。

お笑いブームが定着する2005年ぐらいまでは「M-1で優勝しないとテレビで活躍できない」という思い込みもあったので、自分の好きな芸人がラストイヤーで負けたときは挫折したような感覚になりましたし、一番好きなハリガネロックがラストイヤーで負けたときは号泣したぐらいです。毎年、歓喜するファンと号泣するファンが入り混じっていました。

ただ、自分が好きな芸人がラストイヤーが終わっても敗者復活戦に通っていたのは、敗者復活戦後に決勝の生放送をみんなでパブリックビューイングできるというのが大きかったです。たくさんのお笑いファンと見るのは一体感があり、すごく楽しかったのを覚えています。お笑いブームは到来していたものの劇場に行くという行為がまだマイナーだったので、そのぐらいお笑いが好きなファンが集う機会というのがなかなかなかったんです。「何時間も寒空の中、お笑いを見ている俺たちはみんな仲間!」…そんな意識がありました。

2015年から敗者復活戦に行かなくなったのはパブリックビューイングがなくなってしまったからというのが大きいです。その後パブリックビューイングが復活しましたが、今はチケット争奪戦とチケットの値上げがすごくて行けていないですね。

ーーー今年から敗者復活戦が屋内での開催になりますが、受け止めを教えてください

女性:羨ましい。その一言です。やっぱりお笑いは娯楽ですから快適な環境で見るのが一番です。その方が芸人さんもやりやすいと思います。

ただ寒空で何時間も耐えに耐えて、M-1の感動を大勢のお笑いファンと分かち合う、それも楽しかったなと思います。今は地上波でも見れちゃうのでその連帯感は薄くなってしまったのかな、とも思います。

  ◇   ◇   ◇

■ 「M-1グランプリ2023」

ABCテレビ・テレビ朝日系 2023年12月24日(日)

敗者復活戦 15:00~18:30/決勝18:30~22:10

(まいどなニュース・小森 有喜)

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