「子犬が見たいんよね」と多頭飼育現場の飼い主 保護団体スタッフは粘り強く説得 避妊去勢の承諾を取り付けた
各地で発生する多頭飼育。大半は飼い主が、ワンコに対し避妊・去勢といった適切な処置やケアを行わなかったためです。増えたワンコが次々に出産することでさらに手に負えない状況に。不衛生であることも多く、問題が深刻化します。
心ある保護団体の中には、こういった多頭飼育現場の飼い主に慎重に交渉し、ワンコたちを引き取り幸せへと繋ぐ活動をするところがあります。福岡県を拠点に、ワンコたちの保護活動を行うボランティアチーム、わんにゃんレスキューはぴねす(以下、はぴねす)もそういった団体の一つ。保健所からの相談を受け、福岡県田川郡のとある多頭飼育現場に「介入」という形で、ワンコたちを引き取る活動を地道に続けています。
■飼い主は気分でワンコたちの呼び名を変えていた
田川郡の多頭飼育現場は、中型のミックス犬が大半。はぴねすでは、ここからこれまでに複数のワンコを引き取ってきました。いずれのワンコもノミやダニだらけでしたので、今年9月の現場入りではまず全頭に対するノミ・マダニ駆除薬を投薬するところから始まりました。
今回は外に繋がれているワンコ、オス19匹メス10匹の対応にあたりました。あらかじめ用意していたリストに各ワンコの名前と性別を全て書き出し、チェックをしていくわけですが、血縁関係のある犬は見た目がそっくり。見分けが付きにくく、思うように作業が進みません。飼い主は、そのときの気分でワンコの呼び名を変えていたため、余計に混乱するわけですが、はぴねすのスタッフはなんとか声を掛け合いながら進めていくことにしました。
■小さく呟いた「子犬が見たいんよね~」
前述の通り、外飼いとなっているワンコたちは一応鎖には繋がれているものの、オスとメスが一緒の場所にいます。このままではさらにワンコが増えていく可能性があります。
「一刻も早く避妊手術を」とスタッフが飼い主に提案しますが、当の飼い主は「いや、この子たちの子犬が見たいんよねぇ~」とつぶやきます。管理できるのであれば問題ありませんが、すでにこの状況です。増えたワンコたちは、野犬のような目をしており、飼い主以外の人に対して警戒心から威嚇したり、おびえて動けずにいたりします。
スタッフは根気強く飼い主に交渉。やがて理解してくれ、順次この現場のワンコ全頭の避妊・去勢手術を承諾してくれました。
■「今できることを、できるときに、できる人がやる」
飼い主は、ここにいる全てのワンコにエサを与えていました。どのワンコも極度に痩せていたり、栄養失調になっているわけではありませんが、しかし、それだけで「ワンコの世話している」と考えているのは間違いです。個々に与えられた尊い犬生をしっかりサポートするためにも、適切なケアは不可欠です。
はぴねすスタッフは、避妊去勢手術を飼い主に承諾してもらい、壁のひとつをクリアしましたが、しかしこれはまだ出発点に過ぎません。その後も、ワンコ個々へのサポートを丁寧に進めなければならず、それはとても大変な作業です。スタッフは語ってくれました。
「確かにすごく大変な作業です。しかし、今やらなければ、さらにどんどん増えていき、今よりももっと大変な状況になることが目に見えています。大変ですが、今できることを、できるときに、できる人がやらなければならないと思います。言うまでもなく、これは飼い主のための活動ではありません。生きていくワンコたちのための活動です」
はぴねすスタッフの心ある活動とその思いは、この多頭飼育現場にいるワンコ個々にも通じることでしょう。そして、いつかワンコたちが本当の幸せな犬生をおくれる日が来ることを願うばかりです。
わんにゃんレスキューはぴねす
http://happines-rescue.com/
(まいどなニュース特約・松田 義人)