世の中が1年で一番幸せそうな日だからこそ… クリスマスに「お悩み相談」続ける尼さんの願い

寒い夜に瞬く、色とりどりのイルミネーションに、流れるクリスマスソング。恋人たちが肩を寄せ合い、家族連れはプレゼントを手に家路を急ぐー。1年で最も街が華やぐクリスマスに、10年以上「お悩み相談」を続ける尼さんが兵庫県尼崎市にいます。

上方落語の落語家で、天台宗道心寺の住職という異色の肩書を持つ、露の団姫(まるこ)さん。高校時代、人間不信から自死をも考えるほど思い詰めたつらい経験から宗教の道を志し、仏門へ。その頃から、悩んでいる人の相談に乗りたいと考えてきたそうですが、クリスマスに相談会を始めたきっかけは、12年前の新婚旅行でした。

団姫さん夫妻が訪れたのは常夏の島・ハワイ。現地の人たちの陽気な人柄と文化に触れ、ふと「ハワイの自殺率はどうなんだろう?」と地元の牧師に尋ねました。そこで返ってきたのは「ほとんどないけど、あるなら日本人だね」という答え。驚く団姫さんに牧師は「日本人が旅行に来て、ハワイのハッピーな雰囲気に触れ、ギャップでしんどくなってホテルから飛び降りるんだ。イメージがあるから、表沙汰になることはめったにないけどね」と続けたそうです。

さらに帰国後には「クリスマスの自殺率が高い」という噂を聞きました。都市伝説かも知れないし、事実は分かりません。「ただ、クリスマスに自ら命を絶つ選択をする人が、ゼロではないことは確か」と団姫さん。「みんながハッピーな気持ちになる日に気を付けなければ」と思ったといいます。

以来、クリスマスを始め、お正月やゴールデンウイーク、バレンタインなどにお悩み相談を受けてきましたが、中でも「クリスマスはギャップが一番大きい」と感じるそう。ある人は、SNSの投稿が彼氏や彼女との写真などで溢れるのを見て「普段なら軽いねたみで済むのに、クリスマスは『よっぽど自分に問題があるんだ』と悩みを深めてしまう」といい、また別の人は「予定が全くないことに焦り、どうしようもない空虚感にさいなまれる」とも。そこで「予定を作ってもらうことで、前を向く力の手助けになれば」と、クリスマス前にイベントも企画。最近では「何も予定ないー!」と意気揚々とお寺に来る“常連さん”もできたといいます。

「仏教の言葉に『抜苦与楽』という言葉がありますが、お悩み相談で、苦しみの棘を抜き、落語で笑ってもらえたら」と団姫さん。「このお寺があることで、つらい時に寄れる場があることで、1人でも自死を思いとどまってくれる人がいたらそれ以上のことはない」と話します。

お悩み相談は、ホームページの申し込みフォームや電話、FAXなどで申し込み、遠隔地などの場合はZoomでもできるそうです。

道心寺 06-4950-0452

(まいどなニュース/神戸新聞・広畑 千春)

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