普通二輪免許でハーレーダビッドソンに乗れる! X350に試乗した ライバルはホンダGB350か?
ハーレーダビッドソンというと「大排気量V型二気筒エンジンを積んだアメリカンバイク」というイメージですが、今回普通二輪免許で乗れる350ccのモデルがデビューしました。気になります。試乗してきました。
■ハーレーの戦略的モデル
ハーレーダビッドソンというと、大きな車体で広大なアメリカ大陸を旅するイメージではないでしょうか。荒野を行く馬のような独特の鼓動感を生み出すV型2気筒エンジンは、1909年に登場しました。当時は400ccから1200cc(74立方インチ)までのバリエーションがあったといいます。その後、1966年に出たショベルヘッドで1340cc(82立方インチ)のモデルが現れ、1999年のツインカムでは1800cc(110立方インチ)、そして2017年から空冷は現行のミルウォーキーエイトエンジンになりますが、バリエーションの最大排気量は1977cc(121立方インチ)まで大きくなりました。
年々厳しくなる排ガス規制を空冷エンジンでクリアし、なおかつ周囲のクルマのハイパワー化にも対応する必要もあるのでしょう、ハーレーはエンジンを大きくしていってる訳ですが、一方で日本向けにやや小さいサイズのモデルもこれまで展開してきました。
2000年代前半、883ccのモデル(パパサン)を88万3千円という戦略的な価格で販売したり、2015年には水冷750ccのストリート750を85万円で発売したり、いわゆるエントリーモデルを日本市場に投入してきました。
そして今回、日本特有の免許区分に切り込む350ccのニューモデル、X350がデビューしたのです。
■X350に乗ってみた
水冷並列2気筒DOHC4バルブエンジン。これまでの「ハーレーというとV型2気筒」というイメージ(かつて単気筒のモデルはありましたが)を思いっきり外してきました。また普通二輪免許で乗れる353ccという排気量(かつてもっと小さい排気量のモデルも存在しましたが正式に日本に入ってきてません)も。そもそもベースはベネリなんだそうです。しかし全体的なスタイリングはハーレーのイメージにきちんとはまっています。
飛び出しナイフ型のお洒落なキーを差してセルを回すと、すたたたたっと軽快にエンジンが目覚めます。アクセルもクラッチも非常に軽く、また195kgの車体も非常に軽く感じます。身長171cmの筆者で両足かかとが着くシート高もあって非常に安心、立ちごけする気はまったくしません。ただ、やや広めのハンドルと、なぜか少しバックステップのポジションは独特な雰囲気です。
シフトのストロークはごく普通のバイクくらい、ストっと入ります。丸いアナログメーターの下半分に、液晶デジタルのタコメーターがあります。ほぼ振動もなくマイルドなエンジンは、走り出すと意外と回転が上がります。
トップギア、40km/hでおよそ2700回転。回り方の軽さもあって、国産250ccに乗ってる感じに近いかも知れません。スペック上の最大出力36.7馬力は8500回転で発生するので、単純に計算すると120~130km/h辺りまで出そうです。ただ、高速を頑張って走るというよりも、楽しいのはやはり街中でしょう。静かで滑らかな360度クランクのツインエンジン、全ての操作が軽く、ちょっと乗るのに全くストレスがない。現在売れ行き好調のホンダGB350の対抗になるのかな、と感じました。
■X500にも乗ってみた
X350と同時に発売、となると、フレームやスタイルは同じで排気量だけ違ったバリエーションモデルかと思ったのですが、実際に見ると全く違うバイクです。まずスタイルが全然違います。シャープで都会的なX350に対して、マイルドでクラシカルなX500。こちらもハーレーのイメージをしっかりと感じさせてくれます。
カタログデータでは車重は208kgあることになっていますが、バランスが良いのか全く重さを感じません。X350と比べてシートも少し高くなっていますが、両足かかとが少し浮くぐらいで全く不安はありません。またX350のバックステップな感じは無く、ハンドルの広さは感じるものの自然なポジションです。
エンジンはセル一発、だたたたたっとこれまた軽く始動します。X350よりは少し低く存在感のあるエンジン音ですが、充分に静かです。軽々しくなく、重々しくもなく、絶妙な感じ。もしこれを買ったらマフラーはノーマルで乗りたいなと、それくらい好感が持てました。
走り出すとさすがに500cc、押し出しに力強さを感じます。トップ40km/hでおよそ2000回転。ただしこのバイク、アイドリングは1500回転くらいなので、この速度はトップだと少ししんどそうな回り方になります。X350よりおよそ10馬力乗せの47馬力/8500回転ですが、それ以上に余裕を感じます。たっぷりとトルクがありながら、まったく急かせる感じがしません。街中で気軽に取り回せる軽快さと、長距離ツーリングにも良さそうなやや硬めのシート。
X500、筆者はとても好きになりました。
大型二輪免許が必要ということでX350の方がよく売れているようです。また免許のある人はよりハーレーらしい大排気量モデルを選ぶということもあって、実際に乗ってみないと魅力の伝わりにくいX500はある意味「通好み」なポジションかも知れません。しかし、大人のライダーが落ち着いて乗れるいいバイクだと感じました。
なお、ハーレーの母国アメリカではXは一般に市販されていませんが、教習車に使われているそうです。癖がなくて乗りやすいハーレーダビッドソン。ちょっと気になる存在なのではないでしょうか。
(まいどなニュース特約・小嶋 あきら)