紅白歌合戦の視聴率もすぐわかる 新サービスが目指す「リアルタイム視聴」、なんのために?
「テレビ離れ」と言われて久しい中、それでも注目を集めるのが視聴率です。とはいえ誰もが、即座に視聴率を知ることは難しいことから、テレビ広告の分析を行う会社スイッチメディア(東京都港区)は今月、関東・関西・中京3エリアの地上波番組のリアルタイム視聴率を表示するサービス「TVAL now(ティーバル ナウ)」を開始しました。でも、どんな仕組みで計測しているのか気になります。詳しいことをスイッチメディアの高山俊治社長に聞きました。
スイッチメディアは2012年の創業。同社は2022年6月に独自に視聴率を計測し分析する企業向けサービス「TVAL」を提供するなど、テレビCMの視聴分析や効果検証をしている新興企業です。
そんなスイッチメディアが12月5日に開始したサービスがTVALnowです。技術は従来提供していた法人用のTVALと同じ。これを一般向けにしたサービスが、TVALnowだそうです。
TVALnowの特徴は、スマートフォンやパソコンなどから5分前から3時間前までの視聴率をアカウント登録なしでだれでも見られるという点です。しかも、「#TVALnow」と付ければスクリーンショットした画面をSNSに投稿することもできます。
エリアは関東・関西・中京の三つから選べ、NHK総合と民放5局の視聴率が実際の時間の5分遅れという「ほぼリアルタイム」で表示されています。
では視聴率はどうやって計測しているのでしょう。スイッチメディアによると関東1万2000人、関西4000人、中京2000人のモニターの協力を得て、専用の機械をテレビに取り付けて計測しているそうです。
なぜ視聴率がリアルタイムで見られるサービスをだれでも見られるようにしたのでしょうか。高山社長は二つの理由があるといいます。
一つが「TVの視聴データの民主化」だそうです。一般にいわれる視聴率はビデオリサーチ(東京都)が計測したデータを指します。ビデオリサーチのデータはしばしば話題の番組の視聴率としてニュースになりますが、全ての番組の数値が公開されているわけではありません。高山社長は「どういう番組がどう盛り上がっているかを一般の視聴者はあまり知りません。CMを出す企業側もごく一部の超大手を除けば知らない。こういうオープンなデータがあると広く知ってもらうために始めました」と言います。
そして、もう一つは「リアルタイムでテレビを見ることを応援したい」。テレビ離れが叫ばれ、「TVer(ティーバー)」など、さかのぼって番組を視聴するスタイルも浸透してきていますが「スポーツイベントや生中継のお笑い番組など同じ時間に同じ番組を見るのはやっぱり価値があるんじゃないかと思っています。NHK紅白歌合戦もリアルタイムで見てこその紅白だと思うんです。リアルタイムでの視聴を応援・促進していきたいという思いがあり、TVALnowをサービス開始しました」と高山社長は語ります。
その上で高山社長は「サービス開始後、放送局さんからもお問い合わせを頂きました。今後は番組の中でリアルタイムに視聴率が上がった下がったというのを取り入れてもらった企画もできるのではないか、と考えています」と将来を見据えます。
では一般の視聴者にはTVALnowをどういう風に活用することを期待しているのでしょうか。「『推し活』に使ってもらえたらと思います。自分の『推し』のアイドルやタレント、アニメなどが放送されている時間に『これだけ視聴率が上がったよ』などと共有してもらえるといいツールになるのでは」と高山社長は期待を託します。
年末年始、NHK紅白歌合戦をはじめさまざまなテレビ番組の視聴率が話題になります。リアルタイムの視聴率を見ながら、テレビを見てみると新たな発見がありそうです。
(まいどなニュース/京都新聞・浅井 佳穂)