東海道新幹線で流れる「富士山が見えます」アナウンスはなぜあるのか ほかの名所は案内しない理由を調べると

「東海道新幹線で富士山通過のときには『富士山が見えます』と車内アナウンスがあるのに、どうして他の名所・名勝を通過するときにはアナウンスしないのでしょうか」

新幹線が好きだという小学生と、その母親からの投稿が京都新聞の双方向型報道「読者に応える」に寄せられた。言われてみれば確かに富士山以外のアナウンスはなぜないのか。小学生の疑問をJR東海にぶつけてみた。

投稿したのは京都府長岡京市の会社員、鈴木晶子さん(44)。疑問を持ったのは長男で長岡第八小4年の絢大(じゅんた)さん(10)だ。絢大さんは小さいころから速くてかっこいい新幹線が好きだった。現在でも、近くの府立洛西浄化センター公園(長岡京市)に、新幹線が走行する様子を見に行くことがあるそうだ。

保育園児の頃、家族旅行で東海道新幹線に乗った絢大さんは、家族から「新幹線では富士山が見えるというアナウンスがある」と教わったという。

そもそも富士山が見えるというアナウンスはいつから、どういう区間・時間帯・条件で流しているのか。JR東海の関西広報室に聞いた。

富士山のアナウンスについて、JR東海は「国鉄の車掌が乗客へのサービスのために実施したのが始まりと聞いている」とした。つまり、富士山に関する放送は1987年のJR発足以前から行われているようだ。

ではどういう条件のとき、アナウンスしているのだろうか。「富士山についてはその美しさから楽しみにしておられるお客さまが多く、見えると幸せな気持ちとなるとも伺います。車掌の業務状況や当日の天候など、その時々の状況も踏まえながらアナウンスを行っております」とのこと。

富士山は春夏秋冬さまざまな姿を見せるが「山の全景がご覧いただける時に車掌の判断でアナウンスを行っております。特に空気が澄み、山頂付近が雪化粧する冬の季節は車掌のアナウンスを耳にする機会があるものと思います」(JR東海)とする。年末年始を含む冬は放送を聞ける機会に恵まれていそうだ。

投稿者の鈴木さん親子の疑問は「なぜ富士山以外のアナウンスはないのか」。鈴木さん親子は「富士山だけではなく『今晩は近くで花火が見えます』や、京都だと『大文字山が見えます』などのアナウンスがあってもいいのでは」と疑問を呈する。

親子の問いかけに対しJR東海は「車内には1000人を超えるお客さまが思い思いに過ごしていらっしゃいますので、快適な車内空間をお客さまに提供しつつアナウンスを行っています」と説明した。

確かに頻繁に車内放送があると、寝ている人や集中して仕事や勉強に取り組む人にとっては妨げになるかもしれない。

一方で「修学旅行専用列車では、富士川や浜名湖、関ケ原のアナウンスを行うことがあります」(JR東海)という。同社は乗客に応じたサービスを実施しているということのようだ。ちなみにJR東海が運行する在来線特急「ひだ」では犬山城(愛知県)や木曽川、飛騨川などで名所の案内をしているそうだ。

JR東海の回答を聞いた絢大さんは「納得もするけど、やっぱり高い建物などは案内放送をした方がいいと思う」と率直な感想を述べた。ただ「前より新幹線に乗りたくなった。在来線の特急にも絶対乗ってみたいと思った」と新たな夢ができた様子だった。

移動が増える年末年始、童心に返って電車の観光案内放送に耳をそばだてるのも面白いかもしれない。

(まいどなニュース/京都新聞 浅井佳穂)

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