「自衛官」装う“火事場泥棒”被災地に出現の恐れ 元自衛官が教える「ニセモノを見破る8つの質問」
1月1日に発災した能登半島地震。着のみ着のまま避難した人たちの留守宅が、窃盗の被害に遭う事案が起こっているという。13年前の東日本大震災では、迷彩服に身を包んだ「ニセ自衛官」の目撃情報もあり、能登の被災地にも現れる恐れがあると注意を呼びかけるとともに、ニセ自衛官の見分け方を投稿しているXユーザーがいる。
■本物の自衛官なら必ず答えられる8つの質問
5日には、地震で被害を受けた輪島市内の民家から、高級ミカン6個を盗んだとして自称大学生の男が現行犯逮捕される事件が起きている。報道では容疑者は「ボランティアで来た」と述べているという。また、被災地の警察署の管内では、窃盗が疑われる通報や相談が寄せられているといい、いわゆる「火事場泥棒」の出没が懸念されている。
「信用と安心につけこんだニセ自衛官が現れる恐れがある」と、Xで注意を呼び掛けているのは、元自衛官のはじめさん(@xxhajixxx)。
はじめさんは陸上自衛隊に13年間勤務した元自衛官だ。
東日本大震災のときは人がいる家にも迷彩服を着て現れ、「入らせてもらっていいですか」とあがりこみ、あたかも安全を確認するふりをして金品を盗んでいく被害があったという。
はじめさんによると、ニセ自衛官を見分けるには、8つの質問をしてみるといいそうだ。
その質問とは、以下の通り。ご本人の承諾を得て引用する。
◇ ◇
1.半長靴(はんちょうか)の紐の結びを見る
2.いきなり敬礼をしてみて反応をみる
3.相手が陸曹なら「なん曹教に行きましたか?」と質問する
4.モスはなんですかと聞く
5.自衛官の心構えを質問する
6.自衛隊体操が出来るか確かめる
7.射撃号令を言ってみてと確かめる
8.『いちばーーーーん!』って叫んだ後、これ、何かわかる?って聞いてみる
◇ ◇
用語について解説を加えると、「半長靴」とは自衛官が戦闘服または作業服を着用する際に履くコンバットブーツのこと。「陸曹」とは、陸上自衛官の階級で陸曹長から3等陸曹をいい、いわゆる「下士官」である。航空自衛隊と海上自衛隊も同様で、「陸」の字がそれぞれ「空」「海」となる。
「曹教」は陸曹へ昇任する際の教育訓練を受ける「陸曹教育隊」のことで、「陸教(りっきょう)」ともいう。つづいて「モス(MOS)」は自衛官なら職種別に必ず取得している特技のことで、自衛隊内で通用する資格のようなもの。「Military Occupational Specialty」の頭文字をとって「MOS」という。
これらの質問は、本物の自衛官であれば全て淀みなく瞬時に答えられるものばかり。邪(よこしま)なことを企てる者たちに手の内を晒さないよう、答えは敢えて伏せておく。また3つめの質問に対する答えには例外がひとつあるが、それも伏せておこう。
大事なのは、質問に対し即座に答えられるか否かである。
ほかにも、「階級章の上下が逆ですね」とわざと知っているそぶりで話しかけてみたり、階級とふだんの業務との関係について説明を求めたりしてみて、反応を観察してもいい。
また、とっさにマニアックな質問ができなくても、「どこの駐屯地の何という部隊に所属しているか」「(自衛官個々にふられている)認識番号」などは聞いてみよう。もし電話などが可能であれば駐屯地に連絡して確認してもよいだろう。電話をした際に、該当する部隊や隊員がいないことが分かったら「そちらの駐屯地(または基地)の所在を名乗るニセ自衛官が出没している」という情報を、人相風体と共に知らせてあげてほしい。
◇ ◇
次に、陸海空では、それぞれ異なるパターンの迷彩服を着用している。陸上自衛隊は、濃淡のあるグリーンを基調に、黒と茶色を配した迷彩。海上自衛隊は、濃淡のあるブルーを基調に、黒が少し混じった迷彩。航空自衛隊は、グレーを基調に、グリーンと薄茶色を配したドット迷彩。ドット迷彩とは、細かな四角の集合体からなる、見た目にカクカクした感じの迷彩柄だ。
同じ柄のレプリカは、一般の人でも手に入れることができる。だから、陸海空の所属と服装の一致がポイントになる。
自衛隊で勤務経験があれば、頭髪、立ち居振る舞い、身についた細かい所作などから違和感を覚えるのだが、一般の人がそこまで見分けるのは困難だ。それでも、自衛隊は部隊行動が基本だから、被災地域を単独で行動していたらよくよく注意しよう。
ふだん日常生活では、自分から元自衛官を名乗ることは少ない。目立たないだけで、元自衛官はどこにでもいるから、怪しい動きに対してはいつでも監視の目が光っている。
(まいどなニュース特約・平藤 清刀)