「天翔ける龍の姿」幻想的な動画が話題に 「昔の人はこれを見て龍の存在を思いついたのかな」実際に、飛んでいるのは…
生き物の写真を撮るフォトグラファー「眼遊 GANYU(@ganyujapan)」さんが、3年ぶりに撮影に成功した『天翔ける龍の姿』の動画が注目されました。
その動画には、夕日に染まる宍道湖(島根県)の上を細長い黒い雲のようなものが移動していく様子が映っています。それはまるで湖の向こうの山に沿って飛ぶ龍のよう。しばし見惚れるその光景に、8.6万のいいねがつきました。リプ欄にはコメントもたくさん。
「龍の飛来ってこういうのを見たのかもしれませんね」
「綺麗な夕焼けでしょうか。相まって、神秘的ですね。」
「本当に龍が飛んでいるように見えます。『まんが日本昔ばなし』のオープニングを思い出しました。」
「水鳥の群れが陽に照らさられまさに幻想的」
「空のスイミーみたいな」
実際に飛んでいるのはトモエガモで、オスメスで模様が異なるカモの仲間の群れです。トモエガモは環境省レッドリストカテゴリーで、絶滅危惧2類(絶滅危惧が増大しているカテゴリー)に分類されています。日本より北で繁殖し、冬に日本に飛来してくる冬鳥です。
眼遊さんは、2019年と2020年に飛来を確認していて、そのあとも毎年姿を追いましたが龍になるほどの大きな群れが飛来することなく、3年ぶりに撮れた思い入れの強い映像になりました。iPhone 15 Pro Maxの光学ズームだけをつかって、手持ちで撮影したそうです。眼遊さんに詳しいお話を聞きました。
■宍道湖に何度も通って撮影した
──撮影のために、宍道湖にはかなり通われたのですか?
4年前と3年前にも同じ様に宍道湖にトモエガモの群れが飛来してきており、何度も通いました。近くを通る事もありましたが、冬の山陰は天気が悪いことが多く、なかなか肉眼で見た時の感動を伝えられる映像は残せませんでした。今年も何度か挑戦して、遠くを飛ぶ群れを撮影できてはいたのですが、良いものはありませんでした。
──そして気象条件や時間帯も素晴らしい状態で撮影できたのですね。
この日は車で湖岸を走っているときに大群を発見。誰もが気付くほどの大きな黒い塊が空でうごめいていました。園庭で遊ぶ保育園児達が空を見上げて「なんだあれは!?」とざわついていたのが印象的でした。
その後進路を予測して先回りして待ち構えていたのですが、その群れは一旦自分から見て奥の方へと消えていきました。諦めていたのですが、再び遠くから群れがこちらの方へ飛んできたので撮影を開始。夕陽をバックに見事な姿を見せてくれました。
撮影中は、これをミスしたら一生後悔するだろうと思って気が気でなかったです。感動もしていましたが、冷静に撮影に集中していたと思います。群れが消え、撮影が終わった瞬間は「ヨッシャー!」と叫びました。
──撮影に成功したときの喜びが伝わります。「昔の人はこれを見て龍の存在を思いついたのかな」とコメントされていました。
文献に基づいた発言ではなく、そんなふうに感じたというオリジナルです。3~4年前はこの様な大規模なトモエガモの群れが宍道湖に飛来しているというのがほとんど知られておらず、論文の準備がされていた状況だったので、「龍が出た」という表現は私にとって都合が良く、私の過去のTweetで多用していますので「from:ganyujapan 龍」で検索してもらうと投稿を見てもらえます。
──環境省自然環境局生物多様性センターでは、「トモエガモの飛来数が増えている?」というニュースレターを2021年に発表しています
今年は宍道湖だけでなく、日本の他の地域でも大きな群れが飛来しているそうです。この様な密集した塊が龍の様に飛んでいたらトモエガモかもしれません。
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■森久拓也@眼遊さんのプロフィール
生物写真家。一児の父。図鑑やTV番組への写真提供多数。紫外線を使い生物の蛍光を撮影するUV撮影をテーマとし、現在季刊雑誌「奇蟲」にて連載中。日本自然科学写真協会(SSP)会員
(まいどなニュース/Lmaga.jpニュース特約・太田 浩子)