「見ないふりして逃げようかと」ガリガリの野良猫が駐車場に現れた!あなたならどうする? 保護して家猫になるまでの話に感動

「ノラミの悲惨な風貌と様子に最初見ないふりして逃げようとおもったんです。

餌やりだって近所や家族の目があるからこっそりあげてた

毎朝毎晩『今日は他に行ってますように、明日は来ませんように』って考えてた

瀕死の野良猫の命を背負うなんて勇気がでなかった」

自宅の駐車場にやって来るガリガリに痩せた野良猫を保護し家猫になるまでのエピソードがInstagramで話題になりました。

投稿したのは、保護主の「ユミルとベロ_pugly_yumill」さん(@pugly_yumill)。野良猫は、今では家猫になったノラミちゃんです。年齢不詳の女の子。保護主さんの自宅駐車場に現れたのは2023年7月21日、猛暑の夏でした。

■猛暑の夏に現れた野良猫 悲惨な風貌と様子…目の前の命を助けたくて餌やりを始めた

「昼間出掛けようと駐車場に行くとすみに小さくうずくまって瀕死の状態で骨と皮のガリガリの猫がいました。それがノラミです。野良猫のいない地域に突然現れ、よだれと鼻水、ベタベタ真っ黒に汚れた片目の猫でした。体も顔も小さく『子猫?』と思うくらいの風貌。消え入るような鳴き声でこちらに飢えを訴える姿に覚悟がないならダメと感じながらも餌やりを始めてしまったんです。ちょうどお隣さんが帰宅してお水と餌をあげるところを見られてしまって気まずい思いをしたことを覚えています」

当時保護することは全く考えていなかったという保護主さん。目の前の命を助けたくて、とっさに餌と水をあげてしまったとのこと。それ以来、ノラミちゃんは駐車場が寝床となり、保護主さんから窓越しに餌をもらうように。必死に生きるノラミちゃんを見守り続けているうちに保護するかどうか…葛藤する日々が続いたといいます。

「ノラミが現れる少し前、SNSで保護活動をされている方の様子をずっと見ていて、『もし私がこんな悲惨な子たちに出会ったらどうするだろうか』『たぶん見て見ぬふりするな』なんて漠然と考えていました。そんな頃でした、ノラミとの出会いは。私は試されてる?いや、保護するのは無理だよと思ったり。

長女には『もし私たちが妊娠して病気でもうつされたら後悔じゃすまないよ』とか、夫には『餌やりなんかするからいついとるじゃないか!!どーにかしろ』と怒鳴られて。どんどん保護する気持ちは萎縮していきました。それでも毎日毎日炎天下のなか駐車場から窓を見上げて鳴くんです…私が泣きたかった。正直この状況から逃げたかったです」

■野良猫との出会いから3カ月、ついに保護へ

とはいえ、ノラミちゃんとの出会いから3カ月ほど経った10月。ついに保護主さんが行動を起こすことになったのです。

「10月、いつのまにか秋になってました。その頃には勝手口に来て待ってるようになり、網戸越しにうちの先住犬のパグたちが見ているなか、ご飯をもらうようになっていました。また防寒用の段ボールを加工した部屋も作って寒くなった夜はノラミの寝床に。瀕死の状態だったノラミも食後、日光浴しながら毛繕いしてる姿も見られるようになり、生きていることに安心感も出始めていたようです。近所の外飼いの大型犬のケージに手を入れて必死で餌の横取りすることもなくなっていました。

しかし触ることもできない、勝手口を開ければまずは一目散に逃げる子をどうやって捕まえられるのか…知識もなく、そんな状態でもし保護できたとしてもうちで飼うなんてこの子に迷惑だろうし家族も反対だし。犬がいるし、夫が反対してるから病気があっても医療費払ってもらえないし。明らかに口臭もきついから病気あるし…いろいろ考えあぐねている時、ノラミのお世話を手伝ってくれる三女から『ねえ、あのこのことどーするの?このままじゃなにも変わらない、春が来たら子ども産むかもよ。うちの駐車場で。そうなったら飼うの? とにかく捕獲して避妊か去勢の手術だけはしてこようよ』と何度も言われたんです」

当時ノラミちゃんが雄か雌かははっきりと分からなかったものの、三女の「子どもを産むかもしれない」という言葉などが後押しに。そして「保健センターで捕獲器が借りられる」ことを三女に調べてもらい、保護主さんは重い腰を上げてノラミちゃんの捕獲・保護に乗り出すことになりました。

「その頃夫が酔っ払って、『お前らあの猫どーするんだ! 俺が仕事から帰ってくると車の下から出てきてニャーって顔を見上げてくる、いたたまれない。お前らが捕獲手術して菌やら虫やら臭いやら病気やら全部面倒見るなら家にあげてやってもいい。俺はなんも関わらんが!』とつぶやくのを三女と聞いたんです(笑)。それも大きかった。ノラミを保護する決意が固まりました」

ついに捕獲器を使い、ノラミちゃんの保護を無事決行。その日のうちに、ノラミちゃんを連れてTNR(Trap/捕獲し、Neuter/不妊去勢手術を行い、Return/元の場所に戻すこと)に理解のある動物病院へ足を運んだといいます。

「ノラミは女の子で、推定年齢は6歳以下くらいのようでした。まず先生からは『うわー痩せてるねえ手術できるかな。よだれも酷いし鼻水もあるね。何かしらの病気は確実にあるし術後は一週間から10日ほどお家の玄関先でいいから療養させられない?』と言われました。さらに『TNRは術後すぐ元の場所に基本戻すってことなんだけど、エリカラ(エリザベスカラー)しないと猫は傷口が気になってなめ壊すから傷口開いて内臓垂らしながら歩いてる子いるくらいなのよ、野良は』と。『野良に戻すと数年で死んじゃうからできたらおうちの子にしてもらえたらね』と言われたんです」

■病院で避妊手術後、保護主の自宅で療養 外に戻すか家猫にするかの決断に苦悩

ひとまず避妊手術を受けられ、その日の夕方に迎えに行ったという保護主さん。ノラミちゃんは妊娠経験はなく、獣医師からは「歯を見ると白くて若いけど口の中もとてもひどくて歯肉は下がって歯根が露出するほど。口の中消毒したら数本抜けちゃったし。栄養失調で妊娠できるほど体が準備できなかったか、性格上雄を受け入れなかったか…」と。そんな話を聞いてボロボロの体で生き抜いてきたノラミちゃんを助けたいと再び思った保護主さんは、自宅に連れ帰りしばらくベランダに設置したケージの中で養生させることになりました。

ケージ生活も2週間過ぎ、食事もミキサーかけたご飯をよく食べ、ケージの中のトイレでちゃんと用を済ませ暴れることもなく過ごしていたノラミちゃん。奥ゆかしさを感じたという保護主さんは、当初の予定通りTNRを実行するため外に戻そうと考え始めましたが…獣医師から言われた「野良に戻すと数年で死んじゃうからできたらおうちの子にしてもらえたらね」という言葉を思い出したといいます。

「戻したらまた病気がひどくなり、ボロボロ猫に戻ってしまう。県道沿いの我が家、車にひかれて死ぬかもしれない…と再びお外に戻すことへのうしろめたさを感じました。『この子の今後の運命と寿命は私にかかっている。逃げるのか?』と卑怯者になりたくなくて。それが本音なんです。だから家猫にすることに決めたんです」

猛暑を乗り越えたノラミちゃんを、とうとう保護主のおうちに家猫としてお迎えすることに。先住犬のパグの夫婦ベロくん(雄・5歳)とユミルちゃん(雌・6歳)とともに家族の一員になったのです。

「パグたちは保護するまでの3カ月、途中から勝手口でご飯をもらい始めていたのを見てたので、療養中はケージに入りっぱなしでベランダで過ごすノラミの近くでわりとくつろいでましたよ。私もほぼつきっきりで家にいる時はベランダでお世話してましたしね。この生き物はケージから出てこない!って安心感もベロとユミル2匹にはあったと思いますが(笑)。

現在ケージは扉をフリーにしてますからノラミはその気になれば家中どこでも行けます。ひとりのお留守番の時は家庭内探検しつつ南の窓際で日光浴してるみたいです。夜中にみんな寝静まった2階の廊下まで来て『ニャーニャー』と誰かを呼んでたりもします。つい先日はボス犬ユミちゃんの洗礼にあっていました! 顔やら耳やらなめまくられてぐりぐり頭で体を押されてましたけど怒りもせずむしろ喉を鳴らしてされるがままになってました。シャーシャー猫の初めてのパグとの交流がディープなものになり、見守るこちらはドキドキしました(苦笑)」

■保護主「見て見ぬふりをする勇気の方が重かったから今がある」

今回のノラミちゃんを保護して家猫するまでのエピソードには「優しい方との出会いがあり、良かったね」「命を繋いでくださりありがとうございました」「この子が今生きてるのは確実にあなたのお陰ですよ」などと感激するコメントがたくさん寄せられています。最後に初めて経験した野良猫の保護について、保護主さんの思ったこと考えたことをご紹介します。

「野良猫を保護することは勇気がいりましたが、私には見て見ぬふりすることも勇気のいることだと感じています。保護に至る勇気は、保護した猫が全て健康で懐いて幸せに暮らしてくれる保証なんか全くなくて、知らなければ済む悲しみや苦しみをその子の命と共に背負っていかなきゃならない。保護しない勇気は、何か食べさせてくれとすがる目で鳴く小さな生き物を見捨てる自分と直面しなきゃいけない、そんな自分をどこかでずっと責めて生きていかなきゃいけない。まして自分の家に幸せに生きる生き物がいるならその子たちの命との重さの差を自らに説明しなきゃいけない。だからどちらに行動するにも簡単じゃなくとても重い決断になると思います。

だからもう1匹同じような迷い猫が現れたとしても手放しで『保護します!』なんて言えません。実際ノラミはそのうち口内の手術で数十万円かかりそう。自費です。でもノラミは選んでここに来た、来てしまった。だから見て見ぬふりをする勇気の方が重かったから今があるという感じです。だから保護しない選択をする人にもその選択を責めるつもりなんてない。ただ自治体には、地域猫活動などの普及をボランティアする人の気持ちに任せるんじゃなく、財源を確保して応援、啓発してほしいと思います。保護した子の治療費にもです。それならばもう少し道は開かれるのにと思いました」

(まいどなニュース特約・渡辺 晴子)

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