納税額で競ってないのに…中国地方で「ふるさと納税」1位 民間委託しない職員の本気とは?
鳥取県米子市の2022年度のふるさと寄付金額が中国地方で1位になった。制度開始から積極的に取り組み、過去には寄付数日本一や寄付額で全国6位に入った。市は産品のPR機会と捉えて商品造成を行う。自治体間競争が過熱する中でなぜ結果を残せているのか、担当者に聞いた。
■全国でも人気の商品
米子市の22年度の寄付金額は13億7400万円。18年度から続く鳥取県内1位を堅持し、19年度の15億4200万円に次ぐ寄付額となった。22年度の件数も19年度以来となる10万件を突破した。23年度も好調に推移しており、寄付額は14億円を超え、過去最高に迫る見通しだ。
米子市のふるさと納税の歴史を振り返ってみる。制度開始の08年度は寄付件数134件、寄付額1千万円ほど。11年度は全国に先駆けてクレジットカード決済を導入し、絶えず力を入れている。
全国でも人気の商品が多い。大山ハム詰め合わせや大山山麓の天然水、梨、皆生温泉の宿泊券が人気だという。
■民間委託せず
なぜ、米子市が選ばれるのか。市商工課ふるさと振興担当の森田真智子課長補佐は「市の魅力が多いからこそ、さまざまな返礼品の商品が造成できる」と自負する。市は商品造成やHPへの登録を民間委託せず、職員が担う。職員自身が魅力を知り、大変さを知ることで、PRの本気度が試されるらしい。
ふるさと納税は、他の自治体では税務担当や総合政策担当が扱うケースが多いが、米子市は山陰両県でも数少ない「商工」担当が受け持つ。「納税額を増やすのが目的ではなく、産品をPRするのがふるさと納税の意味だと思っている」と商工課の石田晃課長は言う。商品造成にも積極的で取引業者や件数は増え続け、現在は100事業者800商品をそろえる。
■職員自ら足を運ぶ
それぞれの商品造成には職員自ら足を運ぶ。寄付者とのやりとりも基本的に職員が担う。
この取り組みが功を奏した事例もある。コロナ禍で客が激減した焼き肉店。急場をしのぎたいと商工課を訪れた店主と市職員の話し合いの中で、砂ずりとホルモンのセットを真空パックで返礼品とした。焼き肉店はコロナ禍を乗り越え、今も続けている。
また、コロナ禍で飲食店が営業を中止すると多くのコメが余った。その声を聞いた職員が緊急支援米として、返礼品にコメを選定。コシヒカリ10キロ、きぬむすめ10キロを出したところ、全国から合計約8600件の申し込みがあり、在庫がほぼなくなった。
■「全力で支える」
23年度はJRと共同で、明治期の面影を残し、ファンにとっては魅力のスポット・JR後藤総合車両所運用検修センター(米子市目久美町)の「扇形車庫」を見学できる体験型ふるさと納税を新たにスタート。市は今後、食品に限らず、体験型の商品造成に力を入れる考えだ。
石田課長は「ふるさと納税をきっかけに人気が出て提供業者の皆さんに頑張ってもらえるのが一番だ。市として全力で支える」と話す。
(まいどなニュース/山陰中央新報)