地震で生き埋めになった犬を救出!…災害時ペット救助チームの投稿が話題「とにかくあきらめない!」
能登半島地震で甚大な被害となった石川県。木造住宅が密集する地域では大きな揺れによる家屋の倒壊が相次ぎ、生き埋めになっている人たちの救助が続きました。そんな中、生き埋めになっている犬たちの救助のため、1月2日、千葉県から石川県輪島市町野町に向かったのが災害時ペット捜索・救助チーム「うーにゃん」です。同チーム代表のうささん(@____Usa)が出動から救出までの一部始終をSNSで報告。話題を集めました。
■家に残してきた、逃げてしまった被災者のペットの救出・捜索依頼を受けて石川・輪島市へ
うささんによると、生き埋めになっていた犬はトイプードルのムームくん(雄)。飼い主さんの家族から救出依頼があり、現場へ急行しました。
「輪島市だけではなく、珠洲市や能登町、志賀町、七尾市の方々から、生き埋めになっている、家に残してきてしまった動物たちの救出依頼と、地震で逃げてしまった猫やインコの捜索依頼がありました。まずムームくんの救助に向かっていたのですが、現場の町野町まであと5キロというところで、大きな土砂崩れがあり、道がふさがっていて車で進むことができませんでした。日は沈み辺りは真っ暗に。雨も降っていました」
現場に向かう途中、土砂崩れで道がふさがれ先に進めなかったといううささん。「どうしよう」と悩んでいたところに、町野町にいる家族の安否が分からず徒歩で向かっていた2人の男性に出会いました。当時、同町にはまだ自衛隊も災害救援車も入っておらず、生き埋めになったままの人がたくさんいるとのこと。とはいえ、この日は雨も降り、夜で真っ暗。強い余震も続いていることなどから、車を置いて男性たちと一緒に歩いて近くの避難所に一泊することになりました。
■全壊の家からトイプードル犬を救助へ 鳴き声が聞こえ「生きていた!」
そして一夜明けて翌朝、小雨の中、再び歩いてムームくんの救助へ。うささんは「こんなに寒い中、3日間ご飯も食べず、水も飲めず、土砂崩れと地震で全壊の家の中にいる。酷い状況だから生きていないかもしれない…」と依頼者から言われたことを思い出しながらも、ムームくんが生きていることを強く願い急ぎました。
ムームくんのいる家に到着、1階2階の居住場所は屋根に押しつぶされ全壊でした。倒壊した家の周りを歩きましたが、柱や壁、ガラスなどがぎっしり詰まっていてライトで中を照らしても全く見えず…うささんは、とにかく「ムーム!」と名前を繰り返し呼び続けました。すると、微かに動物の鳴き声が…姿は全く見えなかったものの、すぐ近くまできていることが分かったといいます。
「安全なところから…と周りを見ても、どこも隙間一つなく中の様子が見れませんでしたが。ムームの鳴き声が聞こえる辺りのがれきを慎重に、一つ一つ取り除いていきました。不安気持ちで泣き続けるムーム。『ムーム!』と声を掛けながら、作業を進めました」
しかし、途中まで取り除くことができましたが、その先は手ではどうすることできず。途方に暮れていた時、空に自衛隊のヘリコプターが飛んできました。ようやく町野町に、自衛隊が入ってきたのです。うささんは急いでヘリコプターが降りた避難所に走りました。そして自衛隊員にムームくんが生き埋めになっていることを話し、「救出を手伝ってください」とお願いしたそうです。
■自衛隊員ががれきを撤去、隙間からトイプードル犬の姿が見えた
ちょうど2人の自衛隊員が作業の指示待ちとのことで、「それまでの時間なら」とムームくんがいる現場へうささんが案内。バールやノコギリを使い、ぎっしり詰まっていたものを外していってくれました。やっと隙間ができ、その奥にはムームくんの姿が…ただ「次の場所に行かなければならない」と自衛隊員はその場を離れました。
とはいえ「もう少しでムームくんを助け出すことができる」と確信したうささん。フードを持ち腹ばいになって、自衛隊員が開けてくれた隙間に入りました。ムームくんはとても怖がり警戒をしていたものの、フードで誘い寄せて近づいたところをうささんは右手で首輪をつかみ、隙間からムームくんを引きずり出したのです。助け出した瞬間、うささんはうれしくてうれしくて、涙が止まらなかったといいます。
「鳴き声が聞こえてから救助まで約2時間ほどでした。ムームは最初はとても怖がっていて、がれきを撤去してムームの姿が見えた時、いくら名前を呼んでも遠くから見ているだけでこっちに来てくれませんでした。ムームの近くにフードを投げたりして、少しでもこっちに来てくれないかと工夫しましたが、全く近づいてこず。なので、私が潜るしかないと思い、腹ばいになって、ゆっくりムームの方に近づいたんです。
左手にフードをムームの口元近くに持っていき、フードに鼻を近づけたときに右手でムームの首輪をつかんで。一発勝負、絶対に失敗はできないと思い、もしもかまれても絶対に手を離さない気持ちで、首をつかんだ右手で思いっきりムームを引きずり出しました。外に出したら、ムームは怖がる様子もなく、うれしそうにしがみついてきました。すごく不安だったんだと思います。私は、絶対に失敗できないと言う緊張感から、一気に本当に良かったという、喜びと安心の気持ちで胸がいっぱいになりました。ムーム、ほんとによく頑張ったと思います」
ムームくんの救出後、がれきの撤去を手伝ってくれた2人の自衛隊員が次の作業場所に行く前に心配して戻ってきてくれました。元気なムームくんを見てとても喜んでいたとのこと。そして、うささんは自衛隊員に何度もお礼と感謝の言葉を伝えたそうです。
■飼い主の80代おばあちゃん、神戸の親戚宅に避難 救出されたことを聞いて笑顔に!
今回助け出されたムームくんの飼い主さんは、80代のおばあちゃん。おばあちゃんはすでに神戸市内の親戚のおうちに避難していたとか。うささんが車で千葉県に帰る途中に、神戸からおばあちゃんの息子さんと甥っ子さんがムームくんを迎えに来たといいます。
「息子さんも甥っ子さんもほんとにほんとに喜んでました。話を聞くと、おばあさんはムームを家に残して避難してから、一切何もしゃべらなくなったそうです。でもムームが生きていて、救出されたよと聞いた途端、笑顔が戻り、いつものように話をするように。ムームもうれしそうに帰っていきました」
今回うささんは、犬1匹と猫5匹を救助。被災地でのレスキュー活動についてこう振り返ります。
「とにかく諦めないことがいちばんです。ムームも生きることを諦めず頑張って生きていました。私もどんな場所にいようが、生きていることが分かった限りは絶対に救出する気持ちしかありませんでした。今、行方不明の動物たちも、生きることを諦めず頑張って生きていると思います。だから、私には諦める選択はひとつもありません。地震により家をなくし、何もかも失ってしまっても頑張っていけるのは、大切な家族が無事に生きているからだと思います。犬や猫など家族と離れ離れになった被災者の方のためにも、行方不明の動物たちを生きて家族のもとに戻してあげたいです」
うささんはいったん活動拠点の千葉県に戻り、再び1月29日ごろから被災地へ向かい動物たちの救助へ向かうとのこと。「今度は、新たな問題が出てくると思います。行方不明になっている猫の捜索活動が増えるんじゃないかと思います。なので捕獲器をたくさん持っていきます。また私は人も動物も同じ部屋で一緒に避難することができる、ペット同室避難の必要性を東日本大震災の時からずっと訴え続けているので、避難所の問題にも取り組もうと考えています。そして、被災者の方や動物たちが必要な物資もいろいろ持っていこうと思っています。今度は長期滞在の予定です」と話してくれました。
(まいどなニュース特約・渡辺 晴子)