生駒山上で今も現役の飛行塔 実は日本最古…稼働して95年、戦争を生き延びた土木遺産

大阪府と奈良県の境にそびえる生駒山。標高642メートルの山頂一帯にある「生駒山上遊園地」は1929年の開園で、今年で95年を迎える。さらに、ここに設置されている飛行塔は、現存する大型遊具では日本最古である。

■戦時中も軍に利用されて生き残る

生駒山は大阪府と奈良県の境にあって、山上にはNHKや民間放送局、FM局の送信施設などが設置されている。大阪市内からも、山頂付近にいくつもの鉄塔が建っているのが見える。

この山上には、生駒山上遊園地という遊園地があって、大型遊具機械の目玉のひとつが開園当初から稼働している飛行塔だ。これが、現存する大型遊具では日本最古であり、今でも稼働しているのである。

生駒山上遊園地に問い合わせたところ、生駒山上に遊園地をつくる構想は「1922年1月頃に生まれたと考えられています」とのこと。開園は1929年で、飛行塔は開園当初から稼働していたそうだ。

当時の写真を見ると、吊り下げられている飛行機の基本的な形が、主翼が上下2段になっている複葉機で、これは現在でも変わらない。飛行機の形が、開園当初から踏襲されているのだろう。これを回転部の直径約20メートル、高さ約30メートルの位置で回すと、飛行機に乗った気分を味わえるというわけだ。

この飛行塔を設計した人物は、日本初の国産観覧車を設計したことで知られる土井万蔵氏。土井氏は国内の博覧会でも多くの大型遊戯機械を設計し「日本の大型遊戯機械の父」といわれる人物だ。生駒山上遊園地の飛行塔は、土井氏の代表作とされている。また、土井氏の作品で唯一現存しているのも、この飛行塔である。

生駒山上遊園地が開園した当初はエレベーターがあって、展望塔も兼ねていた。生駒山頂よりさらに約30メートル高い位置から大阪方向を望むと、当時は大阪湾まで見通せたといわれている。

ところで、現存する飛行塔では日本最古とのことだが、この飛行塔より前に設置された飛行塔はなかったのだろうか。これについては「資料がないので回答いたしかねます」ということだった。

戦時中は物資不足に伴う金属供出で、ほかの遊園地では、飛行塔をはじめ鉄製の大型遊具が解体され多くが姿を消していった歴史がある。そんな中、生駒山上遊園地の飛行塔は海軍航空隊の防空監視所として利用されたため、幸か不幸か解体を免れた。

軍に利用されたことで戦争を生き延びた飛行塔は、戦後も繰り返し改修されながら、今も現役で稼働しているというわけだ。

2021年には、土木遺産の顕彰を通じて歴史的土木構造物の保存に資することを目的として設立された「土木学会選奨土木遺産」に認定され、歴史的に貴重な土木遺産と認められた。

このような歴史的な背景や土木遺産としての価値を知ると、今すぐにでも飛行塔に会いに行きたくなるが、生駒山上遊園地は今、冬季休園の期間に入っており、3月中旬まで休園中だ。

(まいどなニュース特約・平藤 清刀)

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