真っ白な岩肌が剥き出しの奇怪スポット・屯鶴峯 千数百万年の時を経て生まれた自然の造形美
奈良県香芝市に「屯鶴峯(どんづるぼう)」という、異世界さながらの風景がある。周囲が木々の緑で覆われている中、ある部分だけ真っ白な岩石が剥き出しになっている奇観の正体は、長い年月を経て堆積した火砕流や火山灰だという。
■鶴が屯しているような奇観だから「屯鶴峯」
奈良県と大阪府の境にまたがる地域に、ラクダのコブのような外観の二上山(にじょうさん)という山があって、その北のふもとに広がる丘陵地帯に、凝灰岩が剥き出しになっている一帯がある。
そこが標高約150メートルの岩山「屯鶴峯」だ。文献やメディアによっては「どんづるぼう」や「どんづる峯」と書かれることもある。
香芝市役所商工観光課によると「遠くから岩肌を見ると、鶴が屯(たむろ)しているような奇観のため『屯鶴峯』と呼ばれるようになりました」とのこと。
この場所はかつて湖で、千数百万年前に二上山が噴火したことによって火砕流や火山灰などが水中に堆積。その後、地殻変動によって湖底が隆起し、長い年月の間雨風によって浸食され現在の姿になったと考えられている。白く見えるのは、ガラスや無色の成分を多く含むためだという。
周囲は緑の樹木で覆われた山で、その部分だけ草1本生えていない真っ白で特異な景観であることと、学術的にも貴重だとされ、1978年に奈良県の天然記念物に指定されている。
屯鶴峯は観光地でもあり、誰でもいつでも自由に立ち入ることができる。いつから観光地として知られるようになったのか、その時期は定かではないが「メディアで取り上げて頂く機会もあり、市外の認知度も上がってきていると思います」とのことだった。
道路を挟んで、トイレが併設された「どんづる峯専用駐車場」もある。「屯鶴峯」への立ち入りはなだらかな階段が設置されていて、足腰にさほど負担をかけることなくたどりつけるようになっている。
実際に訪れてみると、思いのほか起伏がある。急な坂には階段があったり簡単な柵があったりして通路が設けられているが、足元には十分な注意が必要だ。
本当に草1本生えておらず、岩肌が剥き出しのため、とくに雨が降った後など濡れていると滑りやすい。
香芝市役所では植生や岩肌の経年変化の状況を毎年調査するとともに、「屯鶴峯」を訪れる人が安全に散策できるよう、木の枝を剪定したりナラ枯れの除去を定期的に行ったりしているという。
ナラ枯れとは、カシノナガキクイムシという昆虫が病原菌である「ナラ菌」を木の中に運び込むことよって起る樹木の伝染病で、奈良県では被害が広がっているそうだ。
(まいどなニュース特約・平藤 清刀)