同人誌販売にコスプレショー、岡山のオタク文化支えて37年 「ぶちすげぇコミックバトル」は今年2回で最後 実行委代表「やりきった」

 岡山の“オタク文化”を支えたイベント「ぶちすげぇコミックバトル」が今年、37年間の歴史に幕を閉じる。漫画・アニメファンを中心に人気を集めたが、新型コロナウイルス禍で中止が続いたことや作品発表の場がインターネットに移行するなど時代の変化に対応するのが難しくなったことが大きな理由だ。立ち上げから関わった実行委の岡本宏志代表(61)=岡山県笠岡市=に終了を決めたいきさつやラストイヤーへの思いを聞いた。

 人気作品をもとに自作したり、オリジナルで制作したりした漫画同人誌、グッズの販売、コスプレショーなどを繰り広げる「ぶちすげぇ-」。1987年にスタートし、昨年までに400回以上開催した。岡本さんが大阪の大学に通っていたころ、同人誌のサークル活動やイベントの運営に打ち込んだノウハウを生かして始めた。

 当時、同様のイベントが開かれるのは東京や大阪といった大都市に限られていたため、地方では草分け的な存在だった。タイトルの「ぶち」は山陽エリアで使われる方言で、「とても」の意味。地元色を出すために採用した。

■あふれかえる人

 初回の会場となった岡山武道館(岡山市北区いずみ町)には、抽選に当たった300組が机を並べ、同人誌などを販売。土砂降りだったにもかかわらず、2、3千人が詰め掛け、会場の外も中もあふれかえる人の熱気に満ちていたという。

 当初は年1回程度だったが、来場者の増加に伴い95年ごろから年5、6回に拡大。県内では有数の収容人数を誇るコンベックス岡山(岡山市北区大内田)や岡山ドーム(岡山市北区北長瀬表町)を会場にし、コスプレショーや写真撮影会、アニメソングライブなど内容を充実させていった。岡本さんは「岡山のオタク文化をにぎわせたいという一心で取り組んだ」と振り返る。

 多くの人をとりこにしたイベントを、なぜ今年で終えることにしたのか。理由の一つは来場者の減少だ。ピーク時は県内外から3千人以上が来場していたが、ここ最近は500人程度にとどまっていた。さらに、核である同人誌を販売する人が減ったことも大きい。

■コロナ禍でつながり消え

 新型コロナウイルス禍も追い打ちをかけた。2020年から3年間は、開催発表、中止の繰り返し。気持ちだけでなく、会場のキャンセル費用など金銭面でも苦労が絶えなかった。岡本さんは「私たち世代にとっては、イベントが作品を発表する唯一の場だった。しかし、今はネット上で発表する人が多くなり、同様のイベントが近隣でも増えてきた」と話し、「高校などの先輩、後輩で参加する人もいたが、コロナ禍の3年間でそういったつながりも消えてしまった。やりきったというのが本音かな」と明かす。

 イベント終了は昨年10月、X(旧ツイッター)への投稿で発表。長く親しまれているイベントだけに、「お疲れさまでした!私の青春」「本当に絶叫した」などといった惜しむ声が多く寄せられている。

 イベント開始当初から参加し、現在は長男(25)と一緒にスタッフとしてイベントを支える女性(51)=岡山市=も同じ気持ちだ。「当時はこういうイベントが地方になく、興奮して出掛けたのをよく覚えている。今でも久しぶりに友人に会える場所だった」と残念がる一方、「他のスタッフが小さいイベントを開くなど輪は広がっている。違う形でまたバトンをつないでいければ」と願う。

 残すは、4月14日の倉敷市民会館と12月22日の岡山ドームの2回のみ。岡本さんは「人生の半分以上携わってきたので、さみしい気持ちもなくはないが、続けていくことはかなりのプレッシャーだった。肩の荷が下りたら、再び同人活動をやりたい」と笑いながら語り、「これまで参加したことのある幅広い世代の人にも気楽に参加してもらえるラストイヤーにしたい」と力を込めた。

 参加方法など詳しくはイベントのホームページで。

(まいどなニュース/山陽新聞)

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