71歳で亡くなった父の「偲ぶ会」、度肝を抜く演出が話題 悲しみを吹き飛ばすアイデアに「これいいなあ」「みんな笑顔になる」

肉親の葬儀は往々にして辛く悲しいものですが、中にはこんなにも明るい雰囲気で故人を賑やかに送り出すケースもあるようで…。

「我が父親の偲ぶ会で、等身大パネルを置いたけど、これがけっこう好評で、会が終わってから、撮影会が始まりましたw

これからの時代は、写真の遺影じゃなくて、等身大遺影かもしれない!」

穏やかな笑みを浮かべるご尊父の等身大パネルの写真をXに投稿したのは、五月の缶づめさん(@canned_may_03)。「すごくいいなあ」「亡くなっても周りが笑顔になれそう」「悲しみが微笑みに変わる素敵なアイデア」と大きな反響を呼んだこのアイデアは一体どのように生まれたのでしょう。詳しく聞いてみました。

五月の缶づめさんのお父さまは、2022年に胆管癌の宣告を受け、昨年10月31日に71歳で亡くなりました。「縦にも横にも大きく、声も大きく、酒豪で、態度もでかいお父さんでした(笑)」と振り返る五月の缶づめさん。読書やギター演奏、音楽鑑賞、プラモデル…と多趣味で、コワモテながら誰とでも仲良くなれる器の大きな人だったそうです。

「本人の意向で、ほぼ家族だけで直葬を行い、その後『偲ぶ会』を開催することになりました。もともと『俺が死んだら、俺のことを肴にどんちゃん騒ぎをしてほしい』と言っていたのですが、父が『あれ? それだと俺が楽しめない!』と気づいたため、実は11月26日に『生前葬』を行う予定でした」

残念ながらお父さまはその前に亡くなってしまったので、五月の缶づめさんは当初の希望通り「偲ぶ会」を計画。会場は北九州市の門司にある赤レンガの「ブリックホール」で、先日1月21日に開催しました。お父さまの人徳もあってか、100人以上もの人が参加してくれたそうです。

■等身大パネル、どうやって思いついた?費用は?

さて、気になる「亡父の等身大パネル」誕生秘話がいよいよ明かされます。

「父の希望は『どんちゃん騒ぎをしてほしい』でしたので、楽しくお酒を飲めて、父の存在を随所に感じられる会にしたいと考えました」と、五月の缶づめさん。そして等身大パネルのアイデアは、五月の缶づめさんが、先日亡くなったミュージシャンのKANさんが大好きだったことから生まれたそうです。…つまり、どういうこと?

「KANさんのライヴは会場に『顔はめパネル』が置いてあったり、ご自身の葬儀には間に合わなかったようですが、還暦の記念に撮影した振袖の写真で等身大パネルを作りたいとおっしゃっていたりと、パネルとは浅からぬ縁のある方でした。それを参考に、父の等身大パネルに皆さんを出迎えてもらおうと思いついたのです」

パネル作成の料金は、1万5000円ほど。パネルがあることは参加者には内緒にしていたので、中にはギョッとして後ずさりする人もいたそうです。

「でも、パネルがある中で飲んだり話したりしている間に、父がみんなを見ているような感じになり、最後はパネルを囲んで写真を撮ったり、抱きしめるたりする方もいらっしゃいました」

■趣味人の父の人生が詰まった「偲ぶ会」

故人の等身大パネルには驚かされましたが、五月の缶づめさんの投稿を見ると、他にもステージにギターが何本も並べてあったり、家族で撮ったビートルズのパロディ写真が展示されていたりと、生前のお父さまの人柄が伝わってくるような仕掛けが幾つも用意されていた様子が窺えます。

「偲ぶ会のコンセプトは、『家族の中にある父の姿』を皆さんにお伝えすることでした。BGMは父との思い出の曲を集め、パンフレットにもそのことをしっかり書きました。ちなみにパンフレットの文字の色は黒とえんじ色にしたのですが、それも父が出身大学を誇りに思っていたので、早稲田カラーを取り入れてのことです。受付は『出身高校』『60歳まで勤めた会社関係』『その他』と分け、高校関係には高校時代の写真、会社関係には働いていた頃の写真、その他にはお酒を飲んで楽しそうな父の写真を、それぞれプリントして置きました」

「もしかしたら会場で話し相手がいない人もいらっしゃるかもしれないと考え、少しでも寂しくないようにと、父が作ったプラモデルを置いたり、ステージの上には父が買い集めたギターを並べたり、2004年から毎年作っていたビートルズのパロディ年賀状をレコードジャケットサイズに印刷したものを展示したりしました」

偲ぶ会をとにかく楽しい時間にしたい!という一心で準備に奔走してきたという五月の缶づめさん。投稿が話題になったことについては、「父がいたらきっと大きな口をあけて『わっはっは!』と笑っただろうな~と感じています」とした上で、「偲ぶ会は本当にやってよかったと思っています。準備を進める中で自分の気持ちも前向きになっていったような気がしますし、何より笑顔になってくださる方も多かったので、それも本当によかったと思っています」と話していました。

(まいどなニュース・黒川 裕生)

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