「猫の島」で野良猫が急増→NPOが不妊去勢手術「島は高齢化に過疎化、動物病院もない。行政も対策を考えて」
愛媛県松山市の瀬戸内海に浮かぶ「猫の島」と呼ばれる睦月島(むづきじま)。野良猫が急増し、猫の保護・TNR(※)活動などに取り組むNPO団体「わにゃんこ愛媛」(同市)が昨年から、同じくNPO団体「Sakura Cat(サクラキャット)」(同市・代表山本博子さん)とともに猫たちの不妊去勢手術に取り組んでいます。
島内には動物病院がないため猫たちを保護した後、松山市内でこれまでに約50匹の猫たちに手術を行いました。「わにゃんこ愛媛」代表の倉瀬奈々子さんは「島は高齢化や過疎化が進み、近親相姦(そうかん)を繰り返し野良猫だけが増えています。また野良猫たちは栄養不足状態の子たちばかり。これ以上不幸な猫を増やさないよう徹底的に手術を行う予定です」と話しています。
※TNR:Trap/捕獲し、Neuter/不妊去勢手術を行い、Return/元の場所に戻すこと。
■50匹の野良猫を手術 NPO「野良猫の増加は社会問題。行政が主体となって民間団体と協力しながら対策を」
倉瀬さんによると、睦月島は瀬戸内海の「忽那(くつな)諸島」の島の1つ。中島本島のすぐ東の隣に位置する島で、人口は約120人とのこと。島内で猫が多く集まるのは、2009年から休校になっている睦月小学校。このほか餌やりをする住民の家などに集まってくるといいます。両団体の倉瀬さんや山本さんたちは昨年7月から数回視察に入り、10月に野良猫たちの一斉不妊去勢手術を実施しTNR活動を行いました。
「猫は以前からいたようですが、5、6年前から比べると2倍くらいに増えました。山にいる猫もいるようですが、イノシンに食べられたりしてるそうです。山猫も含むとまだ30頭以上はくらいはいるのではないかと推察されます。数については餌やりさんがいる地域は分かりますが、いない地域は分かりません。また島の方は島独特の考えがあり、生まれてきて、死んでも仕方ないという感じです。とはいえ、私たちが実施した不妊手術については島の方々は良かったと思われているようです」(倉瀬さん)
今回手術を行った約50匹の猫の手術費用については、「わにゃんこ愛媛」と「Sakura Cat」が自費でまかなったとのこと。また保護した猫のうち10匹以上いた子猫たちは栄養状態が悪くてガリガリ、猫風邪になっており、このほか出産を繰り返し子宮の病気になった成猫も。全頭ワクチン接種もし、猫風邪がひどい猫には注射をしたそうです。
「繰り返しになりますが、島は高齢化と過疎化が進み、動物病院もない現状の中で野良猫が急激に増えています。栄養不足で猫風邪のまん延だけではなく、ロードキルで生命を落とす子も多々います。イノシシのくくり罠(わな)にかかり、手がない子も。 1番辛いのは餓死です。餌やりの方が高齢者で亡くなったり、施設に入れば置き去りです。中島にはまだ若い人もいますが、睦月島は高齢化が著しく厳しいです。
私たち民間団体が自費で不妊手術や病気やけがの子たちを医療にかけ、保護することにも限界があります。野良猫が増えてしまうのは人間の責任でもあり、社会問題だと思います。ですので、移動手術車を導入して島内で手術できるようにするなど、行政が主体となって私たち民間団体と協力しながら対策を考えてもらいたいです」(倉瀬さん)
「わにゃんこ愛媛」「Sakura Cat」の2団体は、睦月島をはじめ中島、興居島(ごごしま)などで野良猫のTNRを実施。中島では飼い猫の大量繁殖による多頭飼育崩壊が発生し、80匹以上を移動手術車で手術、興居島で保護した70匹以上の猫は、松山市内で手術を行いました。中島の猫の手術費用については、クラウドファンディングで集めた資金と市の助成金を活用したそうです。
(まいどなニュース特約・渡辺 晴子)