「寒ないけ?」「おにぎり持ってかし」心まで温めてくれる能登の人たち 「のとはやさしや」エピソード描いた漫画家に聞いた
「能登はやさしや土までも」という言葉があります。能登は人はもとより、土までも優しいという意味です。国立国会図書館が全国の図書館等と協同構築しているデータベース「レファレンス協同データベース」によると、もともと労作歌の一部で、1696年(元禄9)に能登をめぐった加賀藩士が日記に書き残したそうです。
能登半島地震は2月1日で発生から1カ月。大地震とその後の苦境にあっても人情を失わない能登の人たちの温かさを伝えようと、北國新聞朝刊に被災地のあちこちにある「能登はやさしや」エピソードの漫画を描いた漫画家、なとみみわさん(@miwasowmen)に聞きました。なとみさんは石川県能登町出身です。
ーー能登の人たちの気質や人柄を
「優しいし人懐っこいっていうか、距離が近いです。祭り好きで故郷愛が強い。そして頑固で少し不器用です。私が若い頃、友達を連れてお祭りに行ったとき、知り合いの家に顔をだすと、『上がって酒飲んでけ!』って友達みんなにも振る舞ってくれたんです。あれも食べろこれも食べろって。どこの家に行ってもそうでした」
ーーなとみさんのご家族も
「父は魚を獲るのが好きで、生前、獲ってきた魚を捌いて、近所の人に配ってました。そのときいつもこう言っていました。『まいもん(おいしいもの)はみんなでわけな(わけないと)。人に良いことしとったら、きっと人からも良いこと帰ってくるぞ』って。父のような人間でありたいなとずっと思っています」
■おにぎりを渡す避難所のおばあちゃん
避難所を取材した記者に「今作ったし、持ってかし」とおにぎりを渡すおばあちゃん。着の身着のまま避難した母娘に上着、靴下、菓子と次々に渡し「寒ないけ?」と気遣う近所の人、その優しさに触れ「まんであったかい…」と涙を浮かべる母娘。なとみさんが描いた能登の人たちの物語は心もあたためてくれます。
ーー4つの物語すべてが「のとはやさしや」です
「被災地にいる友人から聞いた話や、現地に行っている記者さんから聞いた話、「困った時はお互い様」というお話は、担当さんの知り合いの若岡拓也さんの体験を漫画にしています。若岡さんが書いた「能登人のトリセツ」というコラムがあるのですが、ぜひ読んでほしいです」
ーー描いている途中でさまざまな感情がこみ上げてきたことと思います。漫画を仕上げてあらためて思うことを
「同じ石川県で、同じ日に地震にあったのにこんなにも違うのか…といつも心が苦しいです。自分にできることをしたい。何かしたい!そういう気持ちが毎日湧き上がってきます。被災された方、今も避難所で大変な思いをされている方に、1秒でも早く日常が戻るよう、祈るばかりです」
ーー能登の人たちへ思うことを
「ずっと頑張っていらっしゃるので、二次避難を望む人への対応が進めばと願います。ずっとずっと緊張の連続で、心も体も張りつめていると思います。とにかく一度心身ともに、ゆっくり休んでいただきたいです」
ーー支援について
「たくさんの募金本当にありがとうございます。みなさまが一生懸命働いたお金を、石川県のために寄せてくださり本当ありがとうございます。多くの方が『なにかしたい!』って考えてくださっていると思います。いま私にできることは、募金をして、漫画を描くことです。それを精一杯頑張ろうと思っています。復興にも時間がかかると思います。今以上に、みなさんの力が必要になると思います。どうかどうか、石川県にそして能登に寄り添っていただけたらと思います」
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最大震度7を観測した1日で1カ月になりました。1万4千人以上が避難所に身を寄せており、被害が甚大な奥能登地域では被災状況の把握が十分ではありません。断水や道路の寸断で、復旧・復興の作業が制限される厳しい状況が続いています。能登の人たちに私たちは何ができるのでしょうか、長期的な支援が求められています。
(まいどなニュース・竹内 章)