お買い得で駅近…1500万円の中古マンションは旧耐震基準 過去には浸水被害 契約書への押印を前に60代夫婦が下した最終決断は
みなさんは、現在数んでいるところの災害マップなど見たことありますか? 賃貸に住んでいる方や戸建て、マンションに関わらず、住まいの災害リスクは契約時に必ず説明されます。しかし、身近なことではないのでついつい聞き流してしまいがちです。しかし、エリアによってはかなり重要な事になるので、一度確認してみる事が大切です。
■老後の不安からマンション探し
Dさん(愛知県在住、60代、専業主婦)は、夫(愛知県在住、60代、郵便局勤務)と子ども2人(いずれも30代社会人)と暮らしていました。子どもが小さい頃に、少し都心から外れた場所に購入した一戸建てに住んでいます。
しかし、子ども二人も社会人になり、結婚もし家を出て行ったので現在の戸建ては、少々二人暮らしにしては広い家になってしまいました。家の設備も古くなってきて、色々と修理にお金がかかるという現状に困っていたところ、息子から都心のマンションに引っ越したらどうか、という提案を受けました。
中古マンションなら値段も安いし、リノベーション済みなら設備も最新のものが入っているのでオススメとのことでした。今の家は駅も遠く、スーパーもないので車で買い物にでかけています。今元気なうちは良いですが、老後、車が運転できなくなったら不安だなとも思っていました。ですので、良い機会だなとも思い、マンション探しをすることにしました。
■かなりお買い得な物件が
後日、名古屋市の不動産屋に相談に行きました。予算は1700万円ほどで、広くなくても良いので駅が出来るだけ近くてリノベーション済みのマンションを探してもらいました。
金額に上限があったので、比較的古いマンションが多かったのですが、リノベーションされていたということもあり、新築といっても過言ではないくらいの内装になっていました。
複数の物件をみさせてもらい、その中でも駅まで徒歩5分で、近くにスーパーもあり、一番リノベーションが素敵だった物件を購入することにしました。
金額は1500万円と、かなりお買い得に感じられたのも購入の決め手でした。
■契約直前で気づいたこと…
売買契約の時に、宅建士からマンションの説明を受けました。修繕の状況や管理の状態、どういったエリアに建っているかなど、さまざまな説明を受けましたが、難しくて聞き流してしまう事も多かったです。
しかし、「ハザードマップ」の説明の時に、マンションの周囲で洪水の危険性がある事や、過去にも浸水歴があることがわかりました。契約前の時には教えてくれてなかったことでした。
さらには、このマンションは古いので「旧耐震基準」によるマンションだということも発覚しました。
ここは、修繕がされているところだから大丈夫だと、フォローの説明をされましたが、さっきのハザードマップの説明の件もあったので、正直不安でいっぱいになっていました。
一通り説明が終わり、宅建士からは「何か質問がなければ、ここにサインと印鑑を押して下さい」と言われました。ハザードマップのことなどについてあらためて質問したところ、「ハザードマップがかかっているエリアで、旧耐震基準のマンションだから、金額がここまで安い」と説明を受けました。それを聞いてDさんは、将来的に困る物件になるのではないかと思い、その場で購入をやめることにしました。
やめるといった後、営業担当者らに説得されましたが、不動産業者に対する信頼はなくなってしまっており、その場からすぐにでも離れたいと思ってしまいました。購入をやめるといった時の、担当者らの嫌そうな顔を今でも覚えています。
実は物件の購入にあわせて、今住んでいる家の売却も同じ業者に頼んでいました。あの時に今の家の売却がすでに決まっていたらと思うと、取り返しのつかないことになるところだったと、Dさんは話していました。なお現在は、違う不動産業者に相談して、別の中古マンションを購入出来たとのことです。
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このようなトラブルはよくある事なのでしょうか? アルファホーム名古屋株式会社でマンションコーディネーターとして、不動産仲介も担当している川本麻登さんに聞きました。
■新耐震のマンションでも、修繕状態を確認して
ーー今回のように、ハザードマップのことなどを知らされないということはあるのでしょうか?
営業担当によっては知らせず進めようとする事もあるようです。しかし、売買契約時には重要事項説明でハザードのことなどは伝える義務がありますので、今回のDさんのようにその場で初めて知らされたことなら、その場の雰囲気にのまれず、一旦持ち帰るかその場で破棄しても問題ないです。契約してからでは、手付金といって前金を払った状態なので何百万円と損をしてしまうので注意しましょう。
ーーハザードマップや旧耐震のマンションは事前に知ることが出来るものなのでしょうか?
ハザードマップは名古屋市ならば、名古屋市のホームページや区役所で知ることができます。今はインターネットで簡単に閲覧できるので、自分が購入する予定のマンションがあれば調べてみると良いでしょう。
マンションの耐震基準は、1981年6月1日に制定された「新耐震基準」と、それ以前の「旧耐震基準」の2つに分けられます。
新耐震基準では、震度6強から7程度の地震で倒壊しないことが基準となっています。また、建物に多少の損傷はあったとしても、倒壊せずに建物内の人を守れるように基準が設けられています。
旧耐震基準では、震度5強程度の地震で倒壊しないことが基準とされていました。そのため、新耐震基準と比べると、耐震性が低いと考えられています。
ただ、マンションの修繕状態にもよりますので新耐震だから絶対に安心と思わず、マンションの修繕状態を購入前に確認しましょう。
◆川本麻登(かわもと・あさと)アルファホーム名古屋株式会社 マンションコーディネーター
(まいどなニュース特約・ヨシダ コウキ)