交通事故から奇跡の生還「ねこんじょう」あふれる猫 下半身不随でも暮らしやすいように…飼い主さんは平屋のお家を新築
「普段は、マイペースでビビり。諦めが悪く、“”ねこんじょう“があります(笑)」
愛猫まつりちゃんのかわいさを、そう語るのは飼い主のマルゲさん(夫)とフォルマッジさん(妻)。
現在3歳のまつりちゃんは子猫の頃、交通事故に遭い、右目を損傷し、下半身不随に。しかし、奇跡の大復活を果たしてくれ、飼い主さん夫婦のもとで幸せなニャン生を謳歌しています。
■交通事故に遭った野良の子猫を保護!
まつりちゃんは野良猫が産んだ子。出会いは、2020年のことでした。当時、飼い主さん夫婦が暮らしていた住居の前には駐車場があり、野良の母猫1匹と子猫2匹が住みついていたそう。
7月中旬、外出先から帰宅した飼い主さんらは子猫のうちの1匹が動けなくなっていることに気づきました。
「交通事故に遭ったようでした。怯えて車の下にいたので、なんとかおびき寄せようと思い、ウェットフードをコンビニで購入。親子共に、勢いよくがっついてくれました」
なんとか車の下から助け出した後、飼い主さんらはタオルで子猫を保温しながら動物病院へ。状態は思わしくなく、医師の口からは「その日を生きられるかどうか…」という厳しい言葉が。
それでも、飼い主さん夫婦は諦めず、病院でもらった高栄養の猫缶を与え、医師のアドバイス通り、保温を心がけ、まつりちゃんを見守り続けました。
「保護時、私たちが住んでいたのはペットNG物件だったので、すぐに物件を探して引っ越しもしました」
ちなみに、「まつり」という明るい名前は、動物病院で決められたもの。当時、旦那さんは語尾に「フェスティバル」をつけるのがマイブーム。
「病院で名前を聞かれた際、フェスティバルとつけようとしていたので、妻の私が『まつりにします』と決めました」
嬉しいことに、まつりちゃんはその後、奇跡の大復活!保護4日目には、おもちゃにじゃれる姿も見られるようになりました。
なお、まつりちゃんの兄弟猫は、まつりちゃんを保護する前に姿を消してしまい、母猫のほうは三毛猫のおばあちゃん猫を連れてベランダまでやってきてくれたことはあったものの、保護は難しかったそう。
飼い主さん夫婦は今でも、まつりちゃんの家族が誰かに保護され、幸せでいてくれることを願っています。
■新築の平屋も建築!大切な愛猫が生きやすい暮らしを最優先
保護から1週間後、飼い主さんらは猫の専門病院でセカンドオピニオンを受けることに。すると、医師から右目と足に障害が残ることを告げられました。
「正直、やっぱりそうか…と。一緒に暮らす中で、下半身が動く気配は一向になかったので、分かっていた部分ではありました。でも、右目のことは、あまり重く受け止めませんでした。瞬膜は出ていても、左目は見えていたからです」
まつりちゃんは自力で排泄ができないため、飼い主さんらは新生児用のオムツを活用。穴を空けて尻尾を通せるよう、工夫しました。
「排泄介助は、1日3~4回。排泄後はドレッシングボトルに水を入れた“手作りウォシュレット”で、お尻を洗い流しています」
また、床に物を置くのを止め、物が落ちている時はすぐに拾い、まつりちゃんが怪我をすることがないように配慮。愛猫の足が引っかかってしまう家具は、全て処分しました。
「ただ、保護後1カ月も経たない頃、自力でソファーに登っていたのには驚きました。上半身の力だけで自重を支えながら登れてしまうことが衝撃的でした。今では飼い主がいると絶対に自分では登らず、抱っこをねだりますが(笑)」
そう話す飼い主さんらは昨年、まつりちゃんが暮らしやすいよう、段差のない新築の平屋を建築し、お引っ越し。夫婦のベッドは、まつりちゃんが問題なく登れる高さにするなど、とことん愛猫ファーストな暮らしをしています。
「可哀想とか頑張って生きているというコメントをいただくこともありますが、我々はそこまで悲観的には思っていません。障害の有無にかかわらず、大事なかわいい家族。撫でられることが好きな普通の猫です」
動く前脚をフル活用して好きなところに移動し、遊ぶ姿や好きなだけ寝て、好きなだけわがままを言う姿など、まつりちゃんらしい日常を目にするたび、飼い主さん夫婦の中では小さな家族への愛情が、より募っていきます。
■自分たちの暮らしを良い方向に変えてもくれた奇跡の猫
「まつりが家族になってくれたおかげで、我々の住まい・仕事・働き方・生活も随分いい方向に変わったなあと感じます。我々にとって、奇跡の猫です」
そう話す飼い主さん夫婦は一緒に暮らす中で、たくさん“愛猫のかわいいところ見つけ“をしてきました。
洗顔やお風呂掃除をしていると、心配して見に来てくれるところ。外出先から呼びかけると、ペットカメラのほうを向いてくれるところ。4足の柄がバラバラで、異なる靴下を履いているように見えるところ。飼い主さんらが得るかわいい発見には、終わりがありません。
「胸からお腹が白いので、正面から見るとジャケットを着ているようでかわいい。夜は夫の布団で寝た後、深夜から早朝にかけて私の布団へ移動。右脇下に入り、右肩に顎を乗せ、右腕に腕を絡めてくるので、寝返りができません(笑)」
また、予期せぬ行動に笑わされたことも。不屈の「ねこんじょう」を持つまつりちゃんは飼い主さんらが何をしていても諦めずに鳴き、構ってアピール。
「インターフォンが鳴って知らない人の声がすると、素早く逃げるのに、なぜかweb会議中は、お喋り。あと、貰っていないフリをして、ご飯をあげてないほうにおねだりしてくるので、確認を怠ると騙されます」
これからも共に病気や怪我に気を付けて、良い相互作用を感じ合いながら長生きしたい。そう語る飼い主さんが描く未来の中心には、いつもまつりちゃんがいます。
(愛玩動物飼養管理士・古川 諭香)