「短い時間でキャラクターの心情や情景の移り変わりを表現」テレビアニメ劇伴制作など手がける椿山さん 原作読み込みイメージ膨らませる
日本を代表するコンテンツとして海外からも注目されるゲームやアニメの第一線で活躍している岡山県倉敷市出身の若手音楽家がいる。椿山日南子さん(26)=埼玉県。多くの作品で作曲や編曲を手がけ、昨年10~12月に放送されたテレビアニメ「SHY(シャイ)」では劇中BGM(劇伴)全般の制作を任された。「短い時間でキャラクターの心情や情景の移り変わりを表現し、視聴者が作品に没入できる曲を作っていきたい」と情熱を燃やす。
岡山城東高音楽学類を出た後、東京音楽大で作曲を専門に学んだ。2019年に卒業した後はアニメやゲームの音楽制作会社「ドリームモンスター」に所属し活動している。
3歳から地元の音楽教室でピアノを習っていたが、「楽器の練習が嫌で逃げるために作曲をしていた」と振り返る。初めて曲を作ったのは小学2年生だったが、この世界を志したのは中学時代。当時好きだったアニメで登場人物が歌う壮大なバラード曲に「アニメにこんなすごい音楽があるなんて」と感動した。自分でも作りたくなり、エレクトーンで作詞作曲をしては、友人に歌ってもらって遊んでいたという。
アニメやゲームなどの楽曲は、エントリーされた音源の中から制作者サイドが曲を選ぶコンペティション形式で決まる事も多い。所属1年目の19年、人気アニメ「マクロスΔ(デルタ)」劇場版のコンペを勝ち抜き、劇中歌「唇の凍傷」を制作。21年の作品公開後はファンからも好評を得て、自信がついたという。
これまでに、アニメ「五等分の花嫁」の映画主題歌やゲーム「アイドルマスター」シリーズの楽曲で編曲をしたり、声優の水瀬いのりさんらにも曲を提供したりしている。実績を重ね、徐々に指名を受けて曲を作る機会も増えてきた。
曲作りでは、事前に原作を読み込み、作品の世界観やアニメ制作側の意図を理解した上でイメージを膨らませる。スケール感のあるオーケストラ楽曲や異国情緒のある民族音楽風の曲が得意だという。
正月などで帰省すると近所の人たちから応援されたり、店で曲を流してくれたりするといい「地元の温かさを感じ、もっと頑張ろうという気持ちになる」と笑顔を見せる。
「自分の曲で作品の世界を表現できるのが魅力。いつかは自分が作りたい音楽を、自分名義で発信する活動もできれば」と夢を膨らませる。
(まいどなニュース/山陽新聞)