ミックス犬ブームの陰で 「あなたはシバーギーなの?」 苦難を経て愛護センターに収容された保護犬
2023年11月、茨城県の動物愛護センターに黒白のワンコが収容されました。穏やかな性格のメスで写真を撮ろうとすると、キョトンとした表情で近寄ってきます。動物愛護センターの職員はここでふと頭をかしげました。
「このワンコ、顔は黒柴っぽいけど、胴が長い。ダックスか、コーギーのミックスか……あまり見かけないタイプのワンコだ」
引き取り手が一定期間現れなかった場合、最悪殺処分されてしまい可能性があります。動物愛護センターの職員も、それだけはなんとか避けたいと考え、日頃から付き合いのある犬保護団体・restartdog LIEN(以下、リアン)に相談しました。
■営利目的でミックスさせる繁殖業者
リアンでは動物愛護センターからの引き取り依頼は、できるだけ断らない方針で、このワンコも当然引き取ることにしました。
ほどなくしてリアンのスタッフが、動物愛護センターに向かいこのワンコと対面したわけですが、ここでやはりビックリ。多くのワンコのお世話をしてきたスタッフでも、首をかしげるほどのミックス具合で「職員が困るのもうなずける」と思いました。
日本では2000年代からミックス犬の人気に火が付きました。
そもそも、今の純血種である犬は様々な犬種をかけ合わせ、狩猟犬や番犬、牧羊犬など目的に合った性質を持つものを作り出してきたため、行為自体は現在のミックス犬の誕生とあまり大差ないと言えるでしょう。しかし、現在のミックス犬の作出はいかに「かわいらしい犬」を誕生させるかが優先され営利目的になっています。
スタッフから見たこのワンコはおそらくは、柴犬とコーギーのミックス犬だと考えられました。一部のペットショップなどで流通する「シバーギー(柴犬×コーギー)」というミックス犬です。
■その体にはいくつもの病気が…
スタッフはこのワンコに「キャンディー」という名前をつけました。
キャンディーがどんな経緯で誕生したのかを知る術はありません。シニア犬の域に達していることはわかりつつも正確な年齢も不明。よく見れば、その体には何度もの出産経験がある様子。ミックス犬は、繁殖に使われることが少なく知識や資格のない、あるいは生体販売業に無登録の一般人が繁殖に使っていたことも考えられるということでした。
やや目が白くなっていたり、歯がほとんどなかったり、足の付根部分には鼠径ヘルニアという病気がありました。大きさによりますが、鼠径ヘルニアはその部分から内蔵が出てきてしまうことがあり、そのままにしておいては危険です。キャンディーがこの歳まで何も起こらなかったのは不幸中の幸いですが、リアンへ引き取られたのを機に避妊手術と共に鼠径ヘルニアも整復してもらうことにしました。
■若いワンコたちを見守る母性あふれる性格
キャンディーがこの世に生を受け、出産を経験した後、動物愛護センターに収容された経緯を思うと、胸が苦しくなるスタッフでしたが、幸い当のキャンディーはいたって性格が良く穏やかな性格でした。リアンに提携する預かりボランティアさんの家では、自分よりも若い先住犬を優しく見守るように見つめており、母性が強いこともうかがえます。遊びや散歩が大好きで、毎日ルンルンと玄関を飛び出し、嬉しそうに近隣を歩き回ります。
現在、キャンディーは新しい里親さんとのマッチングを待ち続けています。困難や不安を乗り越えながらも、持ち前の穏やかさで乗り越えてきたキャンディーに、安心して過ごせる「ずっとのお家」が1日も早く見つかることを願うばかりです。
犬保護団体restartdog LIEN
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(まいどなニュース特約・松田 義人)