AT車の「ニュートラル(N)」はいつ使うの? 「信号待ち」や「下り坂」では使うべきではない理由
車のニュートラル(N)とは、ギアが切り離され、タイヤにエンジン動力が伝わらない状態のことです。AT車・MT車どちらにもニュートラルの位置がありますが、AT車の場合はあまり使う機会がありません。パーキング(P)とはどのような違いがあるのでしょうか。また、信号待ちや坂道でニュートラルは使ってもよいのでしょうか。
■AT車でニュートラルを使うタイミングとは
AT車でニュートラル(N)ギアを使うべき/使用を避けるべきタイミングを一覧にしてまとめてみました。運転の参考にしてください。
・牽引してもらう→〇
・人力で車両を押す→〇
・渋滞時→×~△
・信号待ち→×
・下り坂→×
ニュートラルを使うのは、「一般に車が動かない緊急時」です。信号待ちや下り坂で「ニュートラルを使うと良い」と言われることもありますが、こうしたケースでは安全上の理由などから使わないことが望ましいです。
■ニュートラルは何のためにある?
英語でニュートラル(Neutral)は「中立」を意味し、車においては「後退でも前進でもない中立的な状態」を指します。具体的にはギアが切り離され、タイヤにエンジン動力が伝わらない状態です。
ニュートラルは車が自走できない緊急時に使われる他、ミッションの故障防止に役立っています。
▽役割① 緊急時に車を動かす
ニュートラルの役割の一つは、車が故障やトラブルで動かない場合に他車や人力で動かせるようにすることです。
「D(Drive:前進)」や「R(Reverse:後退)」では、ギアがかみ合った状態のためタイヤに抵抗が生じます。そのため他車や人力で車を動かそうと思っても、殆ど動きません。一方ニュートラルではタイヤの回転に抵抗がかからず、牽引や人力によって車を動かすことができます。
▽役割② ミッションの故障防止
ニュートラルのもう一つの役割は、ミッションの故障防止です。
シフトは必ず「P」「R」「N」「D」の順に並んでいます。これは「R」と「D」を隣接させると、ギアチェンジのたびにミッションに大きな負担がかかるからです。前進しようとするギアと後退しようとするギアがかみ合えば、故障しかねません。そのため両者の間にニュートラルが存在し、段階的なシフトチェンジを行うような仕組みになっています。
■信号待ちや下り坂で使うべきでない理由
「信号待ちや下り坂ではニュートラルにすると良い」と言われることがありますが、これは誤りです。ここではその理由を解説します。
▽信号待ち:安全や故障予防のため
信号待ちでは、以下の理由からニュートラルの使用をお勧めしません。
・多用するとミッションの故障に繋がる
・誤操作で慌てる可能性がある
ND(ニュートラル・ドライブ)間とは言え、信号待ちのたびにギアチェンジをすればミッションに負担がかかります。AT車は頻繁なギアチェンジを想定して造られておらず、多用すれば故障しかねません。また「アクセルを踏んだら動かず、慌ててDに入れ直して急発進した」など誤操作が事故に繋がる可能性もあります。
故障や事故を防ぐために、信号では「Dギア+フットブレーキ」で停止しましょう。
▽下り坂:安全のため
下り坂では、ニュートラルでもタイヤが抵抗なく転がるため車が動きます。しかし事故予防の観点から、使うべきではありません。
下り坂でニュートラルを使うと、エンジンブレーキが効きません。そのため減速にはフットブレーキしか使えなくなります。フットブレーキを多用すると、ブレーキが効かなくなる「べーパーロック現象」や「フェード現象」を起こすリスクがあります。
▽ニュートラルで燃費は良くならない
信号待ちや下り坂でのニュートラル使用が推奨される理由の一つに、「ニュートラルを使えば燃費が良くなる」という考え方があるようです。しかし、これは誤りです。
ニュートラルではギアが切り離されているだけで、エンジン自体は稼働しています。そのため燃費が良くなる訳ではありません。むしろ信号待ちで使えばアイドリングストップが機能しなくなります。下り坂でも、燃費はわずかながら悪化します。
■ニュートラルやギアに関するQ&A
▽Q. ニュートラルとパーキングの違いは?
ニュートラルとパーキングはともにギアが切り離され、タイヤにエンジン動力が伝わらない状態です。しかしニュートラルが「ただギアが切り離された状態(中立)」であるのに対し、パーキングではタイヤにロックもかかります。パーキングは「積極的に車を停めること(=動かさないこと)」を目的としています。
▽Q. アクセルを踏まなくても車が動くのはなぜ?
エンジンがかかっており、且つギアが「P」「N」以外に入っている場合、一部のAT車ではアクセルを踏まなくても車が少しずつ動きます。これはクリープ現象という、AT車の仕組み(構造)が原因で起こるものです。
以前は殆どのAT車でクリープ現象が起こっていましたが、最近ではクリープ現象を起こさない構造のAT車が多く開発されています。
▽Q. エンジンブレーキのかけ方は?
エンジンブレーキは「アクセルペダルを離す」「アクセルペダルを離してギアをLや2などに入れる」ことでかかります。特に長い下り坂ではフットブレーキばかりに頼らず、ギアをLや2に入れるのがおすすめです。
(まいどなニュース/norico)