殺処分目前で保護 元野犬は先を読める賢いワンコ 控えめなしぐさが新しい飼い主さんのハートをつかんだ
2022年のはじめのこと。岡山県動物愛護センターへ1頭のメスのワンコが収容されました。名前はつくし。「向上心」という花言葉を持つ「つくし」が由来です。推定3歳ほどの元野犬で、人馴れしておらずフィラリア陽性といいます。
岡山県動物愛護センターでは収容したワンコを「特別譲渡」として飼育知識のある里親希望者に譲渡することがありますが、残念なことにつくしに里親募集をかけても名乗り出る人はいませんでした。こうなると、残された道は殺処分のみ……。
この経緯を知った岡山県の動物保護団体・NPO法人しあわせの種たちのスタッフは、つくしを引き取ることを決意。しばらく世話と人馴れトレーニングを実施した後、適切なタイミングで里親希望者さんとのマッチングを目指すことにしました。
■保護後、京都→愛媛へ
野犬として生まれ野山で生きてきたつくしは、岡山県動物愛護センターに収容された後、鉄格子の犬舎の隅のほうに身を丸めてずっと不安そうに過ごしていたそうです。人間への攻撃性はなく、ボランティアがたくさんなでておやつをあげることで、多少の距離を縮めることができたといいます。
この話を前向きに捉えたしあわせの種たちのスタッフでしたが、同団体の預かりボランティアさんの家は、どこも先住犬でいっぱいです。一時、京都のスタッフの家に身を寄せた後、愛媛県の預かりボランティアさんのところへと引っ越しすることになりました。
■教えていないのに「先を読む」賢いワンコだった
愛媛の預かりボランティアさんのお宅には、元野犬出身の先住犬が暮らしています。この家に来た当初から、お利口さんのつくしでしたが、ここでの生活が長くなるにつれ、さらなるお利口さんぶりを発揮するようになりました。
たとえば、先住犬との散歩から帰って来た際、玄関で足を拭いてから家に上がるようにしていますが、こういった場面でもつくしは「我先に!」ということは決してなく、「まず先住犬の足拭きが終わったところで、自分の番が来る」と理解している様子で、じっと座って待っています。誰が教えたわけではないのに、先を読み取ってくれたのでしょう。なかなか賢いつくしです。
また、スタッフが「そろそろ寝ようかな」と思っていると、その空気を察し、自ら寝床に行くことがあったり、リードやハーネスを装着するときも、「つけやすいような」姿勢を自ら取るという配慮をするワンコでもありました。
「つくしちゃん、あなたは天才なの?」と感心するスタッフですが、一方で過度な甘えんぼうぶりは見せず、ときどきスタッフの顔をじっと見つめたり、控えめに手をペロペロしてきます。その控えな愛情表現もまた、スタッフの心を虜にするつくしなのでした。
■先住犬がいる家に迎え入れられることに
保護時にはフィラリア陽性だったつくしですが、定期的な治療で見事陰転することができました。
2023年7月にはついに待ち望んでいた里親希望者さんが現れました。以前に、しあわせの種たちから保護犬を迎え入れてくれた里親さんで「つくしちゃんもぜひ家族に迎え入れたい」と言ってくれました。つくしは見事幸せな第二の犬生をつかむことができました。
あれだけお利口さんだったつくしなので、新しいお家でもきっとすぐになじんで、さらなるお利口さんぶりに磨きをかけることでしょう。ここに至るまで、ずっとつくしのお世話をしてきたスタッフは、「つくしちゃん、ずっとずっと幸せにね!」と声をかけ送り出してあげました。
NPO法人しあわせの種たち
https://shiawasenotanetachi.amebaownd.com/
(まいどなニュース特約・松田 義人)