吠え続ける犬は攻撃的なの? 野犬だった保護犬が人を信頼し懐いてくれた 「心を開かせるのは向き合う人間次第」
2022年の夏の日、岡山県動物愛護センターに1匹の野犬が収容されました。その名はルディ。推定年齢2~3歳のミックス犬ですが、人馴れしておらず、唸ったり吠えたりしていました。
岡山県動物愛護センターは、「特別譲渡」での里親募集を実施しましたが、残念なことに反応はなく、時間だけがただただ過ぎていくだけでした。このまま一定期間を過ぎれば、殺処分対象になってしまいます。ルディの存在を知った地元の保護団体・NPO法人しあわせの種たちのスタッフは、迷わず引き出すことを決意。同団体が主体となり、適切なトレーニングをした後、改めて里親募集をかけることを目指しました。
■終始ルディは人間を前に吠えまくっていた
野犬の多くは、他のワンコとの協調性や連携には長けている一方、人間に対してはダメなことが多いものです。中には例外的なケースもあり、一概に言い切ることはできませんが、「人間が苦手」の傾向は見られるものです。
かくいうルディも人間がからっきしダメで、岡山県動物愛護センター収容時には、とにかく人間を前に「近寄るな」「僕に何をするんだ」と吠えていました。実際、しあわせの種たちのスタッフが引き出す際もルディは大きな声で吠えたて威嚇してきました。しかし、これまでに数多くの元野犬を幸せへと繋いできたスタッフは慌てません。
「大丈夫大丈夫。怖がらせてしまってごめんね。怖い思いはさせないから、どうか安心してね」と声をかけながら、ルディと向き合いました。しかし、その言葉はルディにはとどかず、やはり唸ったり吠えることをやめません。
もし、犬に不慣れな人がルディの威嚇を目にしたら、「とんでもなく攻撃性の高い危険な犬だ」と判断するかもしれません。しかし、往々にしてこういった威嚇をするワンコは、本来臆病だったり繊細な性格であることが多く「とにかく怖いんだから、こっちに来ないでください!」と訴えているだけのことも多いのです。
■信頼を寄せると態度が一変
ルディを引き出してから、スタッフは慎重に接することにしました。急激に密な接触を試みればかえってルディの警戒心を助長するだけなので、少しずつ少しずつおやつを手であげるなどをし続けました。同時に散歩の訓練なども実施し、ルディにとって「楽しいこと」を一緒に取り組むようにしました。
すると、どうでしょう。あれだけ威嚇してきたルディが次第に心を開くようになり、スタッフの家では「遊んでアピール」までするようにもなりました。また、朝起きた際には「おはよう!」と挨拶しに来るようにもなり、すっかりスタッフを信頼してくれるようになったのです。
■笑顔を見せてくれるようになった理由
見知らぬ人に対してはおびえたり、威嚇することがあるルディですが、スタッフを信頼してくれるようになったのは大きな成長でした。また、基本のトイレは「外派」のルディですが、仮に我慢できず室内でトイレをする際も失敗することはなく、賢さも兼ね備えていることがわかりました。
「これなら大丈夫。きっとピッタリの里親さんとのマッチングができる」と見込んだスタッフは、ここでルディの里親募集をかけることにしました。程なくして、ルディの元に「迎え入れたい」という里親希望者さんが現れ、見事幸せを掴むことになりました。新しい里親さんの元で、ルディは「ロイ」という名前をもらい、今日も元気に笑顔で暮らしていると言います。
あれだけ吠えて威嚇していたルディが、笑顔を見せてくれるようになった理由は人間に対する信頼感を得たからだと思います。
全国各地の動物愛護センターに収容される犬の中には「吠える」「噛みついてくる」といった理由から人間から意図的に捨てられたワンコもよくいるものです。しかし、必ずしも吠えまくるワンコが「攻撃的」とは限らないことを、ここでルディが証明してくれたようにも思いました。
ワンコの心を開かせるのは向き合う人間次第。そのワンコと仲良くし、パートナーとして過ごしたいのであれば、まず人間のほうがワンコに歩みより、ワンコが心を開いてくれる努力をすべきです。こんなこともルディの経緯から学ばされました。
認定NPO法人しあわせの種たち
https://shiawasenotanetachi.amebaownd.com/
(まいどなニュース特約・松田 義人)