切迫早産で100日以上入院、そして帝王切開へ 妊娠中に“保険未加入”だった32歳女性の後悔「しかも今後の保険加入には条件が…」【FPが解説】

「主婦に医療保険は必要ない」このような言葉を聞いたことがある人は多いはずです。たしかに毎月の出費を抑えたい場合、医療保険を削ろうと考える人も少なくありません。しかし保険に加入しなかったことで、逆に出費が増えてしまうケースもあります。

結婚後も保険未加入のまま夫の扶養内で働いていたAさんは、保険未加入のまま妊娠出産を経験しました。これまで大きな病気の経験もなかったため、妊娠出産もスムーズに進むだろうと考えていたAさん。ところが予想外の事態に「保険に加入しておけばよかった」と後悔しているそうです。

■切迫早産で緊急入院!?

Aさん(大阪府在住、32歳、パート勤務)は夫(36歳、会社員)と結婚し、待望の子宝に恵まれました。つわりも落ち着き穏やかに安定期を迎えた妊娠23週頃、Aさんは楽しみにしていた定期妊婦検診に向かいます。

これまでもお腹が張りやすいと傾向がありましたが、とくに問題はなく安心して過ごしていました。しかし検診で先生から「子宮口が開いている」と言われ、切迫早産が必要と診断されました。

通院していた産婦人科では23週の切迫早産を実施していないことから、緊急で受け入れ先を探すことになり、運よく病床が開いている病院へ移ることになりました。

転院先の病院では子宮頚管無力症の可能性があると診断され、そのまま入院が決定。その後、子宮頸管縫縮術という子宮口を結ぶ手術を2回受けて、36週まで100日以上の入院生活を経験しました。

■無事に退院したものの…緊急帝王切開に

退院から1週間ほどたった37週に自宅で破水し病院に向かいました。すぐに子供は生まれるかと思っていたものの、陣痛が予定よりも強くならず陣痛促進剤を打つことに。

そこから6日間様子を見ても陣痛がこないことから、担当医師の判断で緊急帝王切開を実施することになります。さらに出産後も6日間の入院が必要だったので、出産時入院した期間は合計で12日間です。

■健康保険を使っても多額の出費に

入院期間中に健康保険組合へ高額療養費制度の申請ができ、健康保険を活用でき出産一時金も受け取れます。しかしそれを含めても手術や入院費、出産費用で60万円以上の出費が必要でした。

保険適用になれば安く済むかと思っていたけれど、入院中の食事や差額ベッド代は保険適用外。自宅からの距離もあり、交通費や急な入院のための雑費なども含めると合計で90万円ほどかかりました。

■産後に医療保険を検討したが

今回の妊娠出産で医療保険の重要さを認識したAさん。そこで今後の妊娠のために医療保険に入ろうとします。しかし一度「切迫早産」や「帝王切開」などを経験した後に医療保険に入る場合、それらの項目は保障適用外となってしまうことが分かりました。

一度帝王切開しているため今後の出産も必ず帝王切開となることや、次に出産する際にも今回のような出費が必要となること考えると2人目の妊娠になかなか踏み込めないそうです。月々数千円の保険料をケチって後回しにしたばかりに、今後大きな出費が増えると思うと後悔しかないとAさんは語ります。妊娠・出産を控える女性にとって医療保険は重要なのでしょうか?

Aさんの経験談をもとに、医療保険の必要性を保険業界に詳しいFP2級の鳥居佳織さんに、医療保険の必要性を聞きました。

■妊娠予定があるなら保険を検討してみよう

ーーAさんのようなケースは少ないのでしょうか?

いいえ。近年は、保険未加入による金銭的負担に悩む事例も少なくありません。とくにAさんのような扶養内で働く主婦の場合、夫しか保険に加入していないケースも多くなっています。

しかし、厚生労働省の「2020(令和2)年 医療施設(静態・動態)調査(確定数)・病院報告の概況」によると、帝王切開での出産は一般病院で27.4%を占めています。また、切迫早産や妊娠高血圧症候群といった合併症頻度も毎年平均50%代となっています。

このように、4人に1人が帝王切開、半数が妊娠中のトラブルを経験している現状を考えると、妊娠前に医療保険を検討しておくのがおすすめです。

ーー妊娠してからの保険加入では遅いですか?

遅くはありませんが、しっかり備えたいのであれば妊娠前に医療保険へ加入検討しておくのがおすすめです。なぜなら、妊娠中は妊娠していないときに比べて、保険会社が保険金や給付金を支払う可能性が高いため、加入できる医療保険や保障内容が限られてしまうからです。

妊娠中の保険加入は週数が進むほど保障されない内容も多くなるため、妊娠初期を目安に加入を検討しましょう。また、責任開始日前に異常が見つかった場合や、加入後一定期間は保障適用外となる医療保険も多くなっています。そのため、妊娠を希望するのであれば、余裕をもって医療保険を検討しておくのがおすすめです。

自分の医療保険を後回しにしがちな人も多いですが、安心して妊娠・出産できるように、最低限の保障に加入しておくといいでしょう。

◆鳥居佳織(とりいかおり)/2級ファイナンシャル・プランニング技能士

大手生命保険会社にて8年間勤務。保険コンサルティングでは個人、法人、問わず生命保険や損害保険を幅広く販売。金融ジャンルの専業ライターとして活動中。金融全般に関するさまざまな相談に応じてきた経験があり、実体験ベースでの執筆が得意。主に保険、年金、資産運用など幅広く執筆している。

(まいどなニュース特約・八幡 康二)

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